(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは。農てんきな気象予報士の寺本卓也です。
各地で梅雨が明けて、一気にとてつもない暑さとなっています。皆さんお体大丈夫でしょうか?この先もまだまだ危険な暑さが連日続きそうです。一方で、東北地方の梅雨明けは遅れ、先月25日山形では大雨特別警報や線状降水帯が発生するなど記録的な豪雨に見舞われました。近年は季節の移り変わりに風情はなく、天災が容赦なく我々に襲いかかってきています。
このコラムでは、最新の気象データをもとに農業に役立つ「農てんき」な情報をわかりやすくお届けしています。迫り来る天災から、自身と畑を一緒に守っていきましょう。それでは今月も農てんきスタートです。
灼熱列島、記録的高温の夏に
8月1日気象庁発表の1か月予報(平均気温)を見ると、8月3日〜9月2日にかけて全国的に高いとなっています。強い勢力の太平洋高気圧に覆われ、日本には暖かい空気の流れ込みやすい状況が続くと見込んでいるためです。今年も連日35℃以上の猛暑日となって、記録的に暑い夏となるおそれがあります。

東・西日本の日本海側で水不足注意
一方で、1か月予報の降水量を見るとやはり晴れて暑くなる訳ですから、東・西日本の日本海側を中心に平年並みか少ない予想となっています。夏特有の局地的な大雨、いわゆる夕立はあっても、広い範囲で雨が降る機会は少ないというイメージです。これからイネは出穂時期を迎えますが、一番大切な時期に水が足りないおそれがあります。強烈な日差しが降り注ぎ、野菜や果樹への日焼けやとろけなども多発する可能性が非常に高いといえます。

16日予報でみる異常な暑さ
ウェザーマップ独自の16日予報です。名古屋では晴れる日が続き、この先も35℃以上の猛暑日が連続で続く見込みです。名古屋の平年8月の最高気温の平均値は33℃ですから、温暖化の影響が如実に出ているなと感じます。農作物における温度管理は勿論ですが、農作業における熱中症にも一層の注意が必要です。また東京以外の地点をご覧になりたい方はhttps://forecast.weathermap.jp/をぜひご確認ください。

なぜ台風が今年は少ない?
さて、ここからは話が変わります。台風についてです。ことしは、これまでに台風の発生が4個となっています(7月31日現在)。この数字は平年のこの時期(1月〜7月まで)よりも約半分とかなり少ない発生数です。なぜでしょうか。これには遠く離れた海の現象がめぐりめぐって日本に関係しています。

台風が少なかった理由
これまで台風が少なかった理由としては、エルニーニョ現象が続いていた事など様々な要因がありますが、ポイントはインド洋にあります。今年はこのインド洋がとにかくいつもの年より暖かく、上昇流が起きて発達した雲がこのあたりで出来ました。上昇した空気は、どこかで必ず下降します。それが日本の南のフィリピン付近だった訳です。するとこのあたりで高気圧(下降流)が強まり、台風の発生が抑制されていました。

これから台風シーズン本格化
しかしながら、ここにきて、海に動きが出始めています。今度はフィリピン付近で海の温度が暖かく、さらに高気圧も弱まる傾向が予測されているのです。海が暖かいフィリピン付近で上昇流がどんどん起きて、発達する雲が多くなると見込んでいます。台風が発生しやすい環境が整いつつあります。

この先は台風の卵が生まれやすい
実際に衛星画像を見ると、「台風の卵」となりそうな雲のまとまりができ始めています。ただ結果を言うと、この雲のまとまりは台風にはなりませんでした。台風になるには、発達した雲(積乱雲)を回転させる必要があります。それを担うのは上空の風です。風の動きはなかなか予想が難しいですが、海面水温が高く上昇流が起きやすい訳ですから、台風の卵が今後増えやすいのは間違いありません。これまで大人しかった日本の南の雲の動きが、急に慌ただしくなりそうです。

東広島のブルーベリー農園
私は先日、広島県東広島市にある「とよさかブルーベリーガーデン」を取材してきました。こちらでは50品種700本のバリエーション豊富なブルーベリーを栽培しており、食べ放題を楽しむ事ができます。山に囲まれており、周りには遮る建物もないので、晴れた日は強い日差しが照りつけます。果実が甘くなるには十分な環境ですね。

寒暖差で甘さたっぷり
標高400メートルで作られるブルーベリーは、日中と夜の寒暖差があるのでやはり甘みがしっかりあります。また実もなかなか市販で見る事ができないくらい大粒でした。またブルーベリーは甘酸っぱいイメージでしたが、100%甘さにこだわった品種、逆に酸味を強くしてる物などがあったりとそれぞれの味の違いを存分に楽しむ事ができます。

管理が楽ちんな液肥
こちらは、ブルーベリーの肥料です。このタンクからチューブで1本1本に栄養を送っています。水やりと同時に肥料も送っているので、効率的で栽培の手間が省けます。またブルーベリーは作物としては珍しい部類の酸性の土壌が好きな植物です。この機械を使って上手に液体肥料の成分を調整することで、実はとても甘く育つわけです。

大雨による実が割れる被害
ただ、中にはブルーベリーが裂けている物もありました。裂果という現象で、トマトなどでもよく起きる被害です。大雨が降ると根から沢山の水分を吸収することで一気に実が膨らみ、皮がその大きくなるスピードに耐えきれず破れてしまう訳です。取材の5日前、東広島市は24時間で110ミリの大雨となり、ブルーベリーでも裂果被害が発生しました。園主の徳永さんは、梅雨でもシトシト雨ならブルーベリーは耐えられるけど、一気に大雨が降ると被害が大きくなってしまうとお話下さいました。

6次化でスイーツも豊富
休憩スペースでは、園内のブルーベリーをたっぷり使った特性スムージーやソーダ、ジェラート、またケーキなどスイーツを頂く事もできます。さらに使用されるブルーベリーは、その時の旬に合わせて品種を変えているため訪れるたびに毎回違う味を楽しめます。今シーズンは今月18日までの営業を予定しており、大雨などによる大きな被害はなく終えられそうです。とはいえ、この先の全国的に予想される危険な暑さが、これから旬を迎える農作物に大きな影響を与えそうなのが心配なところです。

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