(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは。気象予報士の寺本卓也です。
台風10号の被害に遭われた皆様、心よりお見舞い申し上げます。台風10号はのろのろと複雑な移動を続け、迷走台風として報道で取り上げられました。農業においても鹿児島など九州を中心に大きな被害を出した台風10号ですが、いよいよこれからが本格的な台風シーズンとなります。
また先月は各地で猛暑日記録を更新するなど、今年は暑さも異常です。ますます今後の天気の傾向を早めに知る事が、農業において重要になってくるでしょう。農業に役立つ「農てんき」な情報を今月もわかりやすく楽しくお伝えしますので、ぜひ最後までお付き合いください。

暑さしぶとく
台風10号が去った後は、再び日本に暑さが戻ります。気象庁発表の1か月予報(平均気温)を見ると、全国的に平年に比べると気温が高い予想です。太平洋高気圧から暖かい空気の流れ込みが続きます。そもそも地球温暖化の影響で日本をとりまく海も空気もまだまだ全体的に暖かく、今月も暑い日が続くのは間違いなさそうです。

9月は「真夏」の時代か
私の住んでいる広島の天気をウェザーマップ独自の予報で見てみます。すると9月に入っても35℃前後、中旬にむかって少し下がるものの30℃以上の真夏日予想です。また農作物にとって大切な夜温(最低気温)は、しばらく25℃を下回らない予想です。秋冬野菜の種を植えても暑すぎてなかなか発芽しない事も考えられます。広島以外の地点をご覧になりたい方はhttps://forecast.weathermap.jp/をぜひご確認ください。

「10月も夏」の時代へ突入か
さらに続けて10月の傾向も見ていきましょう。気象庁発表の3か月予報を見ると、10月も、平年に比べると東北から沖縄にかけてかなり高い予想となっています。さすがに夜の温度は下がってくるとは思いますが、10月に入っても日中は30℃以上の真夏日という日がどこかであってもおかしくなさそうです。野菜の生育が進みすぎて、収穫が前倒しになってしまう心配はあります。

11月「短い秋」か
そして、11月に入りようやく西日本は平年並みの気温に落ち着きそうですが、東日本や東北を中心に平年並みか高い予想です。近年は季節の変わり目が本当に分かりづらく、今年も秋らしい期間はとても短くなる見込みです。そして、12月に入ると一気に冬の寒さがやってくるような極端な季節変化になっていくのではないかなと個人的に予想しています。

台風発生しやすい状況続く
また台風はというと、今後もボコボコ発生しやすい状況がしばらく続きそうです。ではなぜ台風や暑さが続きそうなのかイラストで見ていきます。そもそも、台風が先月から急に増えだしたのは、日本の南の海面水温がどんどん高くなり台風ができやすい環境が整い始めたからです。また同じくこの暖かい海で雲が発生し、太平洋高気圧や、チベット高気圧に向かって空気の流れ込みが続くため、これらの高気圧も秋まで居座りそうです。
平年なら夏の終わりに勢力が弱まるこれらの高気圧が今年はしつこく残る事で、偏西風は平年より北側を通り、秋の空気である寒気が流れ込みづらく、日本は暑い空気に覆われやすいという訳です。それは同時に台風も日本に接近しやすい状況でもあります。

台風や秋雨前線に注意
また、3か月予報の降水量を見ていきます。東日本や西日本の太平洋側などを中心に降水量が並みか多い予想となっている訳ですが、これは台風の影響というよりは秋雨前線の要素が含まれていると考えられます。高気圧の勢力が強い傾向だとお伝えしましたが、9月後半〜10月頃になると徐々に秋雨前線も現れてきます。2019年10月の台風19号では、秋雨前線が日本付近にかかっている所に、台風本体が上陸したため東日本や東北を中心に大荒れの天気となりました。今年もそうなる可能性は十分考えられます。

こんな天気図に注意
2018年9月30日の天気図です。台風と秋雨前線が日本付近に一緒にあります。この時も各地で大雨・暴風と大荒れの天気となりました。また台風からの暴風が吹いた千葉県や神奈川県の沿岸部では塩害も発生。今月もし、このような前線と台風が日本に同時にあるような時は、大荒れの天気になるんだと認識して頂けたらと思います。

台風接近時は「今後の雨」で確認
台風があすにも接近するというような予測が出ている時は、気象庁HPの「今後の雨(降水短時間予報)」を見るのもおすすめです。15時間先までの大雨の動向が確認できるため、夜間に大雨警報が発表される可能性が高い場合など、暗くなる前から畑にいつから雨が降りそうかなど予想するのが可能です。さらに、3時間、24時間降水量などのボタンがあるので、これからどれだけの雨が畑に降るかを確認することもできます。

「キキクル」で台風の影響を確認
さらに、台風が今まさに襲いかかっているような時は、気象庁HPの「キキクル(危険度分布)」で確認するとよいでしょう。こちらは、土砂災害や浸水被害、洪水の発生などの危険性がどの程度高まっているのかどうかを色別に教えてくれるサービスです。今後の雨、キキクルどちらも登録などもいらず無料で見られますのでぜひご活用頂けたらと思います。

農てんきファームin広島
ついに広島でも、農てんきファームをする事になりました。と言ってもプランターを使っての家庭菜園ですが。広島テレビの番組内で、野菜を育てる事になり、その過程を放送していく予定です。先月は全国的に高気圧に覆われ晴れる日が多くとてつもない暑さとなりましたが、広島でも38.7℃と過去最高の気温や、猛暑日日数が過去最多を更新するなど灼熱地獄となっていました。夜も熱帯夜の日が続きあまりの暑さで、1週間程全く芽がでませんでした。

あまりの暑さで部屋に移動
あまりにも暑い日が続き、このままでは発芽する前に種がダメになると思い、日に当たらない所と比較的暑さをしのぎやすい場所に移動させました。たっぷり水を与え、ようやく芽が出てきた事には本当に嬉しく感じました。種から発芽させることだけでもこんなに大変なのかと、改めて農家の皆さんの大変さを感じられる経験となりました。各地で異常気象が続いていますが、広島の天気と向き合いながら、私自身野菜を育てる事でさらに農業の良さを伝えていきます。

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