(株式会社インテージ マーケティング企画推進部 早津風馬)
こんにちは。インテージの早津です。
2024年もようやく秋を迎え、厳しい夏の暑さから一転、涼しさを感じるようになってきました。今度は台風シーズンと大自然の驚異を感じつつも、目下の悩みは物価高です。生活に欠かせない食料品でも値上がりが続いていますが、健康のためになるべくいろんな食材を食べるようにしています。
物価高でも好調を続けているのが冷凍野菜。その人気の理由を探るため、生鮮野菜と冷凍野菜の使われ方に違いがあるのかを見ていきたいと思います。
直近5年で1.4倍となった冷凍野菜の市場規模
まずは、冷凍野菜の市場規模の推移を見てみましょう。全国約6,000店舗の小売店データを集めたインテージ小売店パネル「SRI+」で確認します。
▼冷凍野菜の市場規模の推移(億円)
(出所:インテージSRI+)
冷凍野菜の市場規模は増加傾向にあり、2023年度には2019年度と比べて約1.4倍の754億円に伸長していました。
売れ筋の冷凍野菜は?
それでは、どういった冷凍野菜が売れているのでしょうか。種類別に冷凍野菜の市場規模を確認します。2023年度の市場規模上位5品目を抜粋しました。
▼冷凍野菜の種類別・市場規模の推移(億円)
(出所:インテージSRI+)
市場規模1位の枝豆では伸び悩みが見られるものの、2位〜5位の野菜では販売金額が増加していました。特に伸長したのが冷凍ブロッコリーで、2019年度からの5年間で2倍近い138億円となっています。
生鮮野菜・冷凍野菜の使われ方の違いとは?
冷凍野菜と生鮮野菜とでは、食卓での使われ方に違いがあるのでしょうか。伸長が確認できた4品目のうち、生鮮野菜としても人気である「ブロッコリー」と「ほうれん草」に焦点をあてたいと思います。
ここでは、2人以上家族の主家事担当女性に聴取した1,260世帯の食卓データである「インテージキッチンダイアリー」より、2023年度のメニューの出現率を確認しました。出現率とは、各メニューの出現回数の総計を100とした時の各メニューの構成比です。
▼ブロッコリー(生鮮・冷凍)のメニュー出現率・上位10位
(出所:インテージキッチンダイアリー)
ブロッコリーのメニュー出現率は、生鮮・冷凍ともに「生野菜・野菜サラダ」「温野菜サラダ」「蒸し・ゆで野菜」がトップ3を占めていました。生野菜・野菜サラダの出現率が生鮮ブロッコリーで44.8%と突出しているものの、よく使われるメニューの顔ぶれに生鮮野菜と冷凍野菜で大きな違いはないようです。
▼ほうれん草(生鮮・冷凍)のメニュー出現率・上位10位
(出所:インテージキッチンダイアリー)
ほうれん草のメニュー出現率は、生鮮と冷凍で違いが見られました。生鮮ほうれん草は「おひたし」にされることが最も多く、次いで「胡麻和え」となっています。ほうれん草そのものの素材を活かした、加工度の低いメニューに使われていました。
一方で、冷凍ほうれん草は「味噌汁」のメニュー出現率が最も高く、次いで「ソテー、炒めもの(副菜)」となっています。冷凍ほうれん草はほかの食材と一緒に使われ、加工度の高いメニューが多く見られました。野菜の種類によっては、生鮮と冷凍を使い分けていることがうかがえます。
冷凍ほうれん草を使う理由は?
続いて、冷凍ほうれん草の使用者がどんなこだわりをもっているか、「インテージキッチンダイアリー」の「メニューのこだわり理由」から確認します。今回は「冷凍ほうれん草」というキーワードが登場するコメントの中から、冷凍ほうれん草を使用した理由が読み取れたものを抜粋しました。
▼冷凍ほうれん草に関するメニューのこだわり理由
(出所:インテージキッチンダイアリー)
「葉が粉々になってしまう」「べちゃっとなる」といった点には留意しつつも、「時短になること」や「簡便さ」に魅力を感じていることが分かります。その手軽さから、ほかの食材とも組み合わせてさまざまなメニューに活用されているようです。
おわりに
市場の拡大が続いている冷凍野菜。人気の野菜の1つであるほうれん草では、生鮮野菜とは異なるメニューで冷凍野菜が使われています。生鮮だから味わえる素材感を生かしたメニューがある一方で、冷凍の持つ簡便さを生かしたメニューもありました。
売り場で生鮮野菜ならではの調理方法を訴求することが、需要の拡大につながるかもしれません。
私も食卓を豊かにするために、生鮮と冷凍の両方の野菜を食卓に活用していきたいです。今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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