(三菱UFJニコス株式会社)
事業を継続していくには、お金の流れをチェックし、事業に必要な資金の過不足を調整する「資金繰り」が重要です。
特に農業は「必要となる初期投資額が大きい」「天候の影響を受けやすい」「収入を得るまでにかかる時間が長い」といった特徴があるため、安定した資金の確保に課題を感じている農家の方も少なくないのではないでしょうか。
シリーズ『キャッシュレス時代のスマート農業経営』。第1回は、農業の資金繰りのポイントとなる、「キャッシュフローの見える化」について解説します。
農家の主な支出
農業を営む上で必要になるお金は、設備資金(初期投資)と運転資金です。
設備資金は、土地や機械、施設の購入費などで、安くても数百万円、高ければ億を超える資金が必要になります。
具体的な金額は営農類型や規模により変わりますが、例えば、畜産では畜舎や搾乳機械の購入などで、億単位の設備資金が必要になるのが一般的です。稲作では、主に土地や耕作機械の購入費で多額の費用が必要となり、施設野菜では、温室を造る費用が大きくなります。
■ 農家で多額の初期投資が必要になる設備の例
運転資金は、種苗や肥料、農薬、トラクターなど農機具燃料の購入費、人件費などの、事業を継続するために必要になる費用です。
その金額は、営農類型や規模、栽培する作物などによって変動するため一概にはいえませんが、一例として、作付面積8万平方メートル程度のキャベツ農家の場合、以下のような費用がかかります。なお、以下の費用以外にも、農機具が壊れた場合にはその修理代なども必要です。
■ キャベツ農家の主な運転資金の金額の例
農家の資金繰りの特徴
農家の資金繰りを考えるには、資材などの発注、支払い、収入が発生するタイミングを抑えておく必要があります。
農業で必要となる設備資金は、金融機関などからの借入金でまかなうのが一般的です。その場合、月払いや収穫期後の年払いなど、融資契約で定められた時期に返済しなければなりません。
一方、運転資金については、播種期前後に資材などを発注することで必要になります。これらの支払いは売上による収入でまかないたいところですが、農家では収入が入る収穫期が1年の中の一定期間のみであるため、一度費用を支払ってから、収穫期に売上が入るまで待たなければならないのが原則です。
もっとも、商習慣的に請求書を送る時期を後ろ倒しにして、収穫期に支払いができるようにしている販売業者も少なくありません。
例えば、以下のように7〜10月が種まき、12〜1月と3〜6月が収穫期のキャベツ農家の場合、播種期に種苗や肥料、燃料、農薬などを発注する流れとなります。
収穫期の前に請求書が届き、収穫期に支払うことができれば売上から運転資金をまかなえますが、そうでない場合はまだ売上の生じない播種期前後に運転資金を捻出しなければなりません。
■ キャベツ農家の収入・支払時期の例
農業でのキャッシュフロー見える化の重要性
農家では、支払いがある時期と収入がある時期にずれが生じる可能性があるため、融資返済と運転資金の支払いがいつ発生するのかを把握した上で、それをどう収入で支払っていくかを考えて、資金計画を立てなければなりません。
このキャッシュの流れ(キャッシュフロー)を見える化して計画を立てておかないと、黒字の見込みでも、支払時期に資金不足で支払いができず、事業が継続できなくなることも起こりえます。もし資金不足が予測される場合は、一時的な融資などの何らかの方法での対処が必要です。
■ 農家で黒字の見込みでも資金不足が起きる場面
事業経費支払い用のクレジットカードを活用して運転資金を管理しよう
運転資金の支出管理を行うには、事業経費支払い用のクレジットカード(ビジネスカード)を利用する方法があります。
種苗や肥料など、運転資金の支払いをビジネスカードに一本化しておけば、カードのご利用明細をチェックするだけで、いつ、何に、どれだけ使ったのかがわかるため、支出についてひと目で把握でき、管理の手間を軽減できます。
また、ビジネスカードを利用することで、支払時期を購入日より後ろ倒しすることも可能です。
ビジネスカードは、多くのクレジットカード会社からさまざまなサービスが提供されていますが、農家向けのカードの1つとして「JAビジネスカード」が挙げられます。ソリマチの農家向け会計ソフト「農業簿記」との連携も可能であり、「BizPay 請求書カード払い」によってカード払いを受け付けていない販売店でもカード払いが利用可能です。ぜひご検討ください。
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当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
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