(三菱UFJニコス株式会社)
農家が収穫物を売って利益を得ると、基本的には確定申告が必要になります。確定申告をするには、1年間の取引を記帳した上で、確定申告書を作成・提出しなければなりません。煩雑な作業が発生するため、面倒だと感じたことのある方も少なくないのではないでしょうか。
その手間は、会計ソフトと事業経費支払い用のクレジットカード(ビジネスカード)を導入することで、かなり軽減することが可能です。
ここでは、ビジネスカードを導入して会計ソフトと連携することで、個人事業主の農家の確定申告がどう変わるかを解説します。
農家が収入を得たら確定申告が必要
就農1年目でも、青色申告の場合や白色申告でも農業所得のみで所得税額が出る場合は確定申告が必要になります。白色申告で農業所得以外に給与所得があり、勤務先で年末調整を受けていた場合は、農業の年間所得が20万円を超えている場合に確定申告が必要です。
所得とは、収入から必要経費を差し引いた金額のことです。必要経費とは、収入を得るために支出した費用のことで、農業であれば電気・ガス代や肥料・農薬・種苗の購入費、出荷手数料などが該当します。
確定申告では、年間の収入と必要経費を取りまとめて確定申告書に記入し、所得の金額を明らかにして、税務署に提出しなければなりません。所得税は、この所得の金額をもとに、納税者の状況に応じて一定額を所得から差し引ける所得控除を適用した上で、税率を掛けて算出されます。
なお、場合によっては、税率を掛けて算出した所得税額から、一定の金額を差し引ける税額控除を適用できることもあります。
■ 所得税の計算方法
事業として農業を行っている場合は、確定申告を行うために、一定の会計ルールに従って日々の取引を記帳しなければなりません。注意したいのは、この会計ルールは「白色申告」を行う場合と、「青色申告」を行う場合で異なることです。白色申告と青色申告の違いは、以下のとおりです。
白色申告とは、簡易な方式で記帳できるものの税制上の特典がない申告方式
白色申告とは、簡易な方式での記帳が許されている代わりに、税制上の特典がない申告方式です。
取引は、お小遣い帳のように現金の出納のみを記載する「単式簿記」と呼ばれる方式で記録すればよいとされています。確定申告の際は、記録にもとづいて、青色申告で作成する「貸借対照表」と「損益計算書」よりも記載内容が簡易な「収支内訳書」を作成します。
ただし、白色申告では、青色申告特別控除などの税制上の特典はありません。
■ 白色申告の主なメリットとデメリット
青色申告とは、厳しいルールの記帳方式を採用すると税制上の特典がある申告方式
青色申告とは、白色申告よりも厳しいルールにもとづいた記帳方式を採用し、確定申告で所定の書類を提出することで、税制上の特典を利用できる申告方式です。
青色申告を行うには、所得が事業所得(農業所得を含む)などに該当することや、原則として、青色申告書による申告をしようとする年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出しておくことが必要です。
青色申告を行う場合、1つの取引について複数の勘定科目で仕訳を行う複式簿記で記帳し、帳簿にもとづいて「貸借対照表」と「損益計算書」を作成・提出すると、55万円または65万円の青色申告特別控除を適用できます。
そのほかにも、赤字の繰り越しや繰り戻し、機械等を取得した場合の特別償却・税額控除、農業経営基盤強化準備金が利用できるようになるなど、さまざまな税制上のメリットがあります。
なお、簡易帳簿など単式簿記で帳簿を作成しても、最大10万円の青色申告特別控除を適用することは可能です。
■ 青色申告の主なメリットとデメリット
農家の確定申告は会計ソフトとビジネスカードで効率化できる
農家が青色申告を行う場合、会計ソフトとビジネスカードを導入すると、確定申告の作業を効率化できます。
青色申告で最大限の税制優遇を利用するのに必要な複式簿記とは、取引について「どれだけお金が動いたか」と「お金が動いた結果、資産や負債がどれだけ増減したのか」の両方を記録する記帳方式です。
この方式で記帳するには簿記の知識が必要ですが、一般的な会計ソフトには、簿記の知識がなくても取引内容を入力するだけで、青色申告に必要な帳簿を作成してくれる機能が備わっています。
また会計ソフトでは、ビジネスカードの情報を取り込んで仕訳する機能も備わっている場合があります。ビジネスカードと連携すれば、確定申告の書類作成をさらに効率化できます。そのため、確定申告を効率化したいなら、会計ソフトを導入するとともに、ビジネスカードを作っておくのがおすすめです。
ビジネスカードの情報を会計ソフトに取り込む手順
ビジネスカードの情報を会計ソフトに取り込むには、最初に設定が必要です。例えば、ソリマチの農業向け会計ソフト「農業簿記」にビジネスカードの明細を取り込む場合は、以下のような手順で設定します。
1.農業簿記に連携するビジネスカードを登録する
農業簿記にビジネスカードの明細を取り込む場合、最初に、農業簿記と連携するビジネスカードを、アプリ「MoneyLink」に登録しなければなりません。MoneyLinkをダウンロードして起動すると、アプリのログイン画面が表示されます。
(1)利用者情報を登録する
アプリのログイン画面が表示されたら、「利用者IDを登録」を選びます。氏名やパスワードなど、利用者情報を登録しましょう。
■ 利用者情報登録画面
※出典:ソリマチ「Q.初期設定方法(初めてご利用いただく方)」
(2)MoneyLinkにログインして「Web明細一覧」から「新規追加」を選ぶ
利用者情報を登録したら、設定したIDとパスワードでMoneyLinkにログインします。ログイン後、連携するビジネスカードを登録するために、「Web明細一覧」を選んで「新規追加」をクリックしてください。
■ 「Web明細帳一覧」画面
※出典:ソリマチ「Q.初期設定方法(初めてご利用いただく方)」
(3)金融機関の種類を選ぶ
「新規追加」をクリックして表示された画面では、金融機関の種類を選ぶ必要があります。金融機関の種類の中から「クレジットカード」を選択します。
■ 金融機関の種類の選択画面
※出典:ソリマチ「Q.初期設定方法(初めてご利用いただく方)」
(4)金融機関の認証情報を入力する
「クレジットカード」を選択したら、連携する金融機関とサービスを選んで、金融機関の認証情報を入力すれば、連携するカードの登録は完了です。
■ 金融機関の認証情報入力画面
※出典:ソリマチ「Q.初期設定方法(初めてご利用いただく方)」
2.農業簿記にビジネスカードの明細を取り込む
連携するクレジットカードの登録が済んだら、農業簿記にビジネスカードの明細を取り込みます。その際は、先にMoneyLinkを立ち上げ、メイン画面上の「Web明細取込」をクリックしましょう。
■ MoneyLinkのメイン画面
※ソリマチ「Q.MoneyLinkを利用して入出金明細を取り込むには」
(1)MoneyLinkで取り込み対象の明細を選択する
「Web明細取込」をクリックして表示された画面では、取り込み対象の明細をクリックしてチェックをつけます。
■ 取り込み対象の明細選択画面
※ソリマチ「Q.MoneyLinkを利用して入出金明細を取り込むには」
チェックを付けたら、照会期間を選択して「実行」をクリックし、明細を取り込みましょう。
■ 照会期間の選択画面
※ソリマチ「Q.MoneyLinkを利用して入出金明細を取り込むには」
(2)農業簿記を起動して、MoneyLinkにログインする
取引内容が画面に表示されたら、農業簿記を起動し、「帳簿」から「MoneyLink明細取込」を開いて「明細取込」をクリックしてください。
■ 「MoneyLink明細取込」画面
※ソリマチ「Q.MoneyLinkを利用して入出金明細を取り込むには」
すると、MoneyLinkのログイン情報入力画面が表示されるため、IDとパスワードを入力してログインします。
(3)取り込む明細を選択して、農業簿記に取り込む
農業簿記でMoneyLinkにログインしたら、以下の画面が表示されるため、取り込む明細にチェックが付いていることを確認して「設定」をクリックします。
■ 取り込む明細の選択画面
※ソリマチ「Q.MoneyLinkを利用して入出金明細を取り込むには」
取り込む内容を確認し、明細を取り込んだら、すべての入出金明細に対して「摘要」「勘定科目」「補助科目」「部門」を設定して登録してください。
このようにして、会計ソフトに明細の情報を取り込むことが可能です。なお、ソリマチの農業簿記は、農業経営に特化した会計ソフトです。農業でよくある取引例を選ぶだけで帳簿に転記できるなど、簿記の知識がなくても使いやすい仕様になっています。
ビジネスカードと会計ソフトを活用して確定申告を効率化しよう
農家の確定申告は、経費の支払いをビジネスカードに一本化し、会計ソフトと連携させることで効率化が可能です。
ビジネスカードは、さまざまなクレジットカード会社からサービスが提供されていますが、農家向けのカードの1つとして「JAビジネスカード」があります。ソリマチの農業簿記との連携も可能な、農家向けの特典が充実したカードで、「BizPay 請求書カード払い」によってカード払いを受け付けていない販売店でもカード払いが利用可能です。ぜひご検討ください。
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