(株式会社Agriee)
本シリーズでは、実際に寄せられた相談の事例を交えながら、栽培管理や土づくりのポイントを解説して参ります。
ここ数年、資材類の高騰が止まらず農業経営を圧迫しているというお話を本当によく伺います。そのような中で、収量・品質は維持したい、でも、施肥量は出来るだけ減らしたい、というニーズが増えてくるのは必然です。では実際に、どのくらいまで施肥量を減らすことが出来るのでしょうか?
ロジカル思考で施肥量を減らす3つのステップ
そもそも皆さんは、施肥量をどのようにして決めていますか?「なんとなく…」「肥料会社さん、種苗会社さんからのアドバイスで」「ベテラン農家のマネをして」などで決めている方も多いのではないでしょうか?これで目的の収量・品質が得られているのであればそれはそれでよいと思います。
一方で、収量・品質を維持しながらもう少し施肥量を減らしたい…、というのであれば、少しロジカルに考える必要が出てきます。
施肥量を減らすためのステップは、①現状を知る、②削減率を決める、③削減した結果を確認する、の3つのステップで進めます。
① 畑の現状を知るための方法
まず、「現状を知る」ためにやるべきことは、畑の状況を出来るだけ詳しく確認することです。
圃場の場所、土の種類、土壌分析結果、栽培歴、収量・品質に関する情報などを集めますが、同じ作物を作っているいくつかの圃場の情報を見比べられるとさらに良いです。土壌分析は作付け1ヶ月前くらいに実施するのが理想的ですが、傾向を把握できればよいので収穫後など、いつ実施したものであっても大丈夫です。
これらの情報をもとに、どのくらいの施肥をしてどんな管理をしたら、どのくらいの収量・品質のものが収穫出来ているのかを確認します。
② 削減率を決めるための方法
続いて、削減率を決めるステップでは、まず、理想とする収量・品質をもう一度確認します。今得られている収量・品質が本当に理想とする目的値なのかを再確認するのです。
「理想とする目的値」については、皆さん意外と普段意識なさっていない(明文化していない)部分でもあるので、この段階で一度整理しておくことをお勧めします。
目的値に対して現状がどうなのかを判断し、どのくらいまで施肥を削減するかを検討するのですが、このあたりについては、判断が難しい部分も多々あるので、専門的な知識を持った人に相談しましょう。
ご自身で行う際には、いきなり「50%削減!」などとするのはさすがにリスクが高いので、20%減くらいから始めてみるのが良いと思います。
③ 削減した結果を確認するための方法
最後に、結果を確認するステップですが、これについては、出来るだけ客観的に結果を取りまとめておくことが重要です。
結果の情報を客観的に整理
よく耳にするのが、「なんとなく、大丈夫そうな感じがする」という曖昧な結果で取りまとめしてしまい、後々「本当にそうだったっけ?」「心配だからやっぱりもう一回試してみようか?」などと何度も同じことを繰り返してしまう事例です。これは時間的にも、コスト的にもとてももったいないと思います。
せっかく試すのであれば、後々誰が見ても納得できるような、出来るだけ客観的な情報として取りまとめて、次作に活かしていきましょう。ちなみに、客観的な情報として入手出来る結果の情報は、「反収(10aあたりの収量)」「1個当たりの重量」「糖度」等が分かりやすいです。
途中途中の状況も確認
これらの結果は、作が終わった後の総合的な結果になりますが、途中途中の状況を確認しておくことも忘れずに行っておきましょう。これをしておくことで、ダメだった場合(減らしすぎた場合)の原因を見出しやすくなるからです。
例えば、肥料を削減した畑で反収が20%減ってしまったとします。その原因がどこにあったのか?を考える時、栽培中の作物の状況がこれまでとどう違ってしまったのかを確認する必要が出てきます。
例えば、基肥と追肥それぞれを10%づつ削減して栽培した時に、追肥の前後で作物の生育の仕方が変わっていた、ということを確認することが出来れば、基肥の量は削減しつつ、追肥の量は今まで通りにもどせば良さそうだ、という判断をすることが出来るようになります。
客観的、定量的な情報として記録する
途中の状況を客観的、定量的な情報として取っておくことは意外と大変なのでこれを省いてしまう方もいますが、スマートフォンや携帯で写真を撮るというような簡単にできる方法でも良いので、出来るだけ情報として取っておきましょう。
ちなみに、私どもで提供しているGrowthWatcherを活用頂くと簡単に作の途中の状況を確認していただくことが出来るようになります。GrowthWatcherは、衛星を使って圃場の状況を可視化することが出来るシステムなので、客観的かつ定量的な情報として手間をかけることなく状況を確認することが出来るようになります。
肥料を削減するための方法として簡略化してご紹介させて頂きましたが、実際に取り組んでみると迷うところも多々出てくると思います。その際には、地域の指導員・普及員の方など、専門的な知識をお持ちの方にもご相談ください。もちろん、私どもにもご相談頂くことも出来ますので、お気軽にご相談頂けましたらと思います。
シリーズ『相談事例に学ぶ!栽培管理と土づくり』のコラムはこちら
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
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