(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは。農てんきな気象予報士の寺本卓也です。今年も早いもので6月。もう1年の半分です。
この時期、農家の皆さんが気になるのは、今年の梅雨はどうなるか?という事だと思います。梅雨時期の雨は農作物の生育に必要な恵みですが、近年は行きすぎた大雨が頻発、また異常な暑さから病虫害も毎年のように発生しています。
今年の梅雨がどうなるか、最新の天気情報を知ることが、農作物の生育を左右するといって間違いないでしょう。
農家の皆さんにわかりやすく、役に立つお天気情報が今月も満載です。ぜひ最後までお付き合い下さい。では、農てんきスタートです。
梅雨入りはどうなる?
先月16日、気象庁から「九州南部で梅雨入りしたと見られる」という速報が出ました。沖縄・奄美よりも早いこの出来事は気象業界ではかなり驚きのトピックとなりましたが、その後、本州各地の梅雨入りは続きませんでした。
最新の予報を見る限り、おおむね今年の梅雨入りは平年通りか、少し遅くなるような所が多いのかなと個人的には見込んでいます。
焦って大雨への備えをする事はありませんが、梅雨入り、そして長雨・大雨は今年も間違いなくやってきます。少しずつ準備をしていく必要がありそうです。
梅雨前半 西日本と北海道で大雨注意
気象庁の1か月予報(降水量)を見ていきます。こちらはどれだけ1か月間で雨が降るかを表していますが、今月は西日本太平洋側と北海道で並か多い予想となっています。また、そのほかの地域は、並の予想となっています。
元々6月は雨量が年間で多い時期となるため、並の予想でも雨はいつも通りしっかり降りますよと言っているのと同じ事です。西日本や北海道の方は大雨に勿論注意ですが、その他の地域の方も油断はできません。
低気圧は本州通過 北海道で大雨も
では、もう少し詳しくみていきましょう。6月1〜6日頃までは低気圧や前線の影響で全国的に曇りや雨の日が多い予想です。
スーパーコンピュータの計算では、本州に活発な雨雲がかかり、その後、普段雨のない少ない北海道でも低気圧の北上により大雨となる可能性が出ています。雨雲の動きに注意が必要です。
中旬以降 梅雨の大雨本格スタート
その後、気象庁は7〜13日頃までは東・西日本で一旦晴れ間の出る所が多くなると見込んでいますが、梅雨前線は九州や日本の南岸に停滞。14日以降は梅雨前線が北上し、全国的に平年同様曇りや雨の日が多くなる予想です。
まとめると、今月14日以降がいよいよ今年の「梅雨の大雨シーズン本格スタート」と思って頂いてよいのかなと思います。
今月後半は厳しい蒸し暑さに
続いて、平均気温の予想を見ていきます。今月14〜27日は全国的に平年より高い予想となっています。
今月も各地で平年より気温が高い日が多くなる見込みで、さらに後半になると湿度も増して厳しい蒸し暑さが予想されます。
後ほど詳しくお話しますが、気象庁の見解では今年は昨年程の暑さにはならないとされています。それでも、やはり今年も近年同様6月とは思えない暑さになりそうです。35℃までいかないにしても、30℃前後の厳しい蒸し暑さが各地で予想されています。
今年の夏も暑い
さて、ここでもう少し先の予想を見ていきます。同じ画像が誤って貼られている訳ではありません。
梅雨の次は夏。こちらは気象庁から発表された3か月予報の平均気温です。6〜8月も全国的に平年より高い予想となっています。もはや、やっぱりかという感じでしょうか。
同期間の去年の東京の猛暑日日数は19日、一昨年は22日と記録的な暑さとなりました。気象庁は、今年の夏はこれ程ではないものの、暑い日が続くだろうと見込んでいます。
ちなみに、2000年以降(6〜8月)の猛暑日日数の平均は、札幌0.3日、仙台1.4日、東京7日、新潟3日、名古屋17日、大阪16日、広島9日、松山7日、福岡10日、那覇0.5日となっています。
今年の夏も平年以上に猛烈な暑さが来るという予想ですから、農作物の高温対策もしっかりすすめていきましょう。
今年も梅雨前線で大雨の可能性
そして、同じく気象庁による3か月予報(降水量)です。東・西日本で平年並みか多い予想です。先ほどの6月の予想に比べて雨量の多くなる予想のエリアが増えています。また気象庁は、「梅雨前線の活動が活発となる時期がありそうだ。」とコメントしています。
話が前後してしまいますが、今年は6月中旬以降がいよいよ梅雨の本格シーズンという見込みです。平年7月中下旬頃まで梅雨に注意警戒が必要な期間となります。6月下旬から7月上旬は例年、線状降水帯が各地で発生する特に大雨の危険な時期です。
梅雨への備え
本格的な大雨の前に、梅雨への備えをすすめていきましょう。排水溝や圃場の排水性をチェック。ビニルハウスの点検・修理・補強。この時期はいつ大雨になってもおかしくないため、気象会社のスマートフォン防災アプリの登録もおすすめです。
大雨時はプッシュ通知で危険を知らせてくれる機能、2週間先の天気予報が見られる物もあり、とても便利です。大雨予想から、収穫作業を早める、道具の整備に変更するなどスケジュールの見直しもよいでしょう。
カメムシ越冬数が少なくても
また、今後心配なのは病虫害です。
私は広島テレビの農てんきというコーナーで、毎週農業と天気の話題について取り上げています。先日は今年の害虫の傾向について果樹カメムシ類の話をしました。
広島では、昨年末から今年の2月の終わり頃までしっかり寒い日が長く続いたため、果樹カメムシ類の越冬数が例年に比べ少なく、被害に遭う確率も減りそうです。などと、序盤はそんな希望を持った話をしましたが、やはり懸念されるのは今年の梅雨の傾向です。
害虫大量発生に今後油断できない
先ほどお話した通り、この先3か月の予報は全国的に高温、雨量も並みか多い予想でした。
カメムシは高温が好きで、繁殖サイクルが早くなります。さらに多雨多湿となれば、外的から身が守られ、卵が乾燥して死ぬ事もないと大量発生の好条件が重なります。
元々の越冬数が多いか少ないかが、その年の発生数を予想する最も重要な要因ではありますが、気候条件次第ではこの先発生数が増える可能性は十分考えられます。
今年の梅雨と夏も、暑く多雨多湿の傾向が出ていますので、病虫害対策も検討する必要がありそうです。もしものために備え対策をすすめていきましょう。
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