(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは。農てんきな気象予報士の寺本卓也です。気象庁は先月27日、西日本の各地で記録的な早さとなる梅雨明けを発表しました。皆さんも早すぎると驚かれたのではないでしょうか。
恵みの雨はどこへやら、こんなにも早く夏が来てしまい、今後の作業にとても困っているのではないでしょうか。そんな、異常な天候に振り回され続けている皆さんに、このコラムはおすすめです。
農てんき気象予報士の私が、現代の難しい天気をわかりやすく、農業目線の役立つ最新情報をお届けします。初めての方でも読みやすいので、安心してぜひ最後までご覧ください。では、早速今月も農てんきスタートです。
異例の梅雨明け
6月27日西日本では一斉に梅雨明けが発表されました。九州北部、中国、四国、近畿は統計開始以来最も早い梅雨明けとなり、さらに九州北部・中国・四国は過去最も短い梅雨日数となりました。
ただし、これは速報値です。気象庁は毎年9月に梅雨の確定値を発表しており、今後の天候次第では速報値が変更される場合があります。実は、2022年にも同じようなケースがありました。
その年も6月下旬に関東〜九州にかけて異例の梅雨明けの発表がされましたが、実際は7月に入り各地で大雨が降り、結局、梅雨明けの時期が7月下旬に訂正され観測史上最も早い梅雨明けは幻となりました。
では今年も梅雨の戻りは来るのでしょうか。まずは梅雨明けが早いとどんな影響があるか考えていきましょう。
梅雨明けが早いと農業は大ダメージ
こちらは2013年の例です。この年も各地で平年よりも10日くらい早い梅雨明けの発表となり、厳しい暑さの夏となった年でした。
広島県の八田原ダムの貯水率は40%と取水制限が発生、また農業用水も滞る事態になりました。トマトは日焼けによる高騰、さらに多くの野菜で生育不良が発生し相場の高騰は長く続きました。お米は暑さにより白未熟粒が多くなり、品質の低下が顕著となりました。
また暑さは家畜にも影響し、牛の繁殖能力も低下、牛乳も取れなくなるなど農業全体で大きなダメージを受けました。
記録的な梅雨明けの原因は
記録的な梅雨明けとなったのはなぜでしょうか。いくつか要因はありますが、ポイントは太平洋高気圧の強まりです。
通常、7月中旬頃から太平洋高気圧の張り出しが本格的に強まり日本列島がすっぽり覆われるタイミングで梅雨明けが発表されます。それが今年は早いのです。

日本の南の海面水温が今年も早くからすでに暖まっていて、積乱雲が沢山発生しています。そこでは強い上昇流が起き、日本付近で下降していきます。その下降流が太平洋高気圧を強めます。またインドの方でも海面水温が高く、チベット高気圧も同じく強まっています。高気圧は晴れと暑さをもたらします。
二つのダブル高気圧が強まり、記録的な梅雨明けとなり、そして今年の夏も猛烈な暑さが予想される訳です。
7月、酷暑列島に
では、1か月予報(平均気温)でこの先の予想を見ていきます。今月も全国的に平年に比べて気温が高く暑い日が続く予想です。昨年、一昨年の夏は、各地で観測史上最高の暑さを2年連続で更新する異常な事態となりました。
さて、では気になる今年の暑さのイメージはと言うと、「昨年・一昨年に比べると少しだけマシ。」になると言うのが気象庁の見解です。

理由は、昨年・一昨年に比べると上空の空気の温度がほんの少しだけ低いのです。35℃以上の猛暑日日数が更新されるような事はないと思うけど、近年同様の危険な暑さの日は各地でそれなりにあるだろうと言うのが本音だと思います。
今年は戻り梅雨なしか
続いて1か月予報(降水量)を見ていきます。各地平年並みか少ない、そして少ない所が多くなっています。

毎年梅雨明けが発表された後に、戻り梅雨と言って各地で大雨となる事は結構あるのですが、今年はかなり可能性が低いようです。それだけ、先ほどお話した太平洋高気圧やチベット高気圧の勢力の強い状況が続くだろうという事なのでしょう。
この先の畑や田んぼの水不足が心配です。夜間や早朝の灌水で日中の蒸発量を減らす、必要な時だけ行うなどの計画を立てておくとよさそうです。
台風の動きには注意
ただ、そうは言っても天気がごろっと急に変わる可能性はまだ残っています。その原因の1つは台風です。
皆さんも数日前に見た週間予報の内容が、まるっきり変わっているという経験はありませんか。今の時期は台風が急に発生しやすく、日本に向かって北上してくるものも多いです。
今月8日頃も日本に台風らしき雨雲が向かってきそうな予想が出ています。その後も台風が急に発生してないかチェックしておきましょう。

夏は急な雷雨に注意
さらに、広い範囲での雨はなくても、夏に起きやすいのが局地的な雷雨。いわゆるゲリラ雷雨というものです。

夏の強い日差しが照りつけると、地上の空気が暖められ上昇流が起き、局地的に激しい雷雨となる事があります。ぜひお天気マークに注目して下さい。
午後は天気の急変がありそうな時は、ただの晴れマークだけではなく、隣に雲がついています。そんな日の午後は急な雷雨となる可能性があると思っておきましょう。
16日予報
ウェザーマップ独自の16日予想で見ていきます。東日本の梅雨明けはまだされていませんが、5日以降に発表される可能性がありそうです。全体的には晴れる日が続き、戻り梅雨がなさそうな雰囲気ですが、念のため油断はできません。
さらに晴れても雲マークがついているため、やはり雷雨には注意です。そして台風の動きなども用心です。雨雲レーダーや、気象アプリなどを登録するのもおすすめです。

地元密着 紫色のジャガイモ栽培
以前、このコラムで紹介した地元の中学・高校生の園芸部の皆さんとコラボした企画の続きです。

今年の3月に、学生さん達と一緒に、シャドークイーンという紫色のジャガイモを植えました。といってもほとんどその後は、学生さんが土作り、水やり、草むしりなど日々の管理をしていました。
今年は5月に平年に比べ降水量が多く、日照時間が少なかった事から、若干生育が遅れてしまったとの事でした。
地元有名サッカークラブとコラボ
そして驚きなのは、なんと地元の有名サッカークラブ、サンフレッチェ広島とのスタジアムグルメコラボが決定しました。このサプライズに学生達は大喜び。農業の楽しさやりがいがこの企画を通して感じてもらえるように、私も全力でサポートしていきます。

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