(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは。農てんきな気象予報士の寺本卓也です。先日仕事場で「秋服買ったんですけど、涼しい期間が短すぎて着る機会が減って困っています。」なんていう話を振られ、はっとしました。普段あまり服を買わない私ですが、記録的な暑さの弊害は多くの方の生活に影響を及ぼしました。
農業では、タマネギ、ジャガイモの生育不良が顕著で、相場の高騰は現在も続いています。そんな今年もいよいよ終わりを迎えようとしていますが、この先は暖冬ではなく「冬らしい寒さ・雪」が急にやってくる予想です。
確かに秋服の出番は終了し冬服への衣替え、そして農家の皆様においては急な冬支度を迫られるかもしれません。今月も、農家の皆様に役立つお天気情報「農てんき」をわかりやすくお伝えしていきます。ぜひ最後までお付き合いください。
日に日に全国的に寒さ増す
ようやく涼しく秋らしく過ごしやすい日が続いているなと感じている方も多いのではないでしょうか。それもつかの間、今月は一気に冬がやってきそうです。では早速、1か月予報(平均気温)を見ていきます。
この先1か月間は西日本で平年より低く、冷え込みが厳しくなるのかなと予想されます。一方、北・東日本は寒くないのかというと、そんな事はなさそうです。

もう少し詳しく見てみると12月6日(土)〜12日(金)にかけては本州全域で平年より気温が低いとなっており全国的に寒くなるのではないかという予想です。日に日に寒さが増していきそうです。
冬の始め 東北大雪注意
続いて、1か月予報の降雪量を見ていきます。東北で平年並みか多い予想となっています。

例年は暖冬傾向が続いていたので、雪不足により農業用水の確保に苦労したという農家さんも多かったのではないでしょうか。今冬はしっかり降ってくれるかなと思っていますが、都合よくいかないのが近年の傾向です。
心配なのは急な大雪、いわゆるドカ雪です。一気に大量の雪が降り、農業ハウスの倒壊が起きたり、果樹の枝が折れたり、生育の遅れ・作物の凍害などが多発しています。これまでの常識が通用しないような雪の降り方が増えてきています。早め早めの雪や寒さの備えが大切です。
12月早々寒波 「不意打ちの雪」に用心
では、雪の降り方はどうなるか、スーパーコンピュータで直近の予想をもう少し詳しくお伝えします。まずこちらは上空の寒気の予想です。

4日(木)には平地で雪を降らせる目安の寒気が福岡あたりまですっぽり覆う見込みです。普段から雪に慣れているような地域であればこの時期らしい雪の量にとどまるかなというレベルの寒気ではあります。
必要以上に恐れる必要はなさそうですが、12月になった途端厳しい冷え込みや、急な雪となるため、冬の備えや作業が追いついていない「不意打ちの雪」の影響が心配されます。
局地的にドカ雪となるおそれ
さらにこちらは5日(金)午前9時のスパコンの雪の計算です。白い表示が雪、ピンク色は大雪のおそれのある所です。

北陸から北日本の日本海側を中心に白色の表示になっていて、広範囲でしっかり雪が降る予想です。また局地的に北陸や東北などでピンク色の表示、いわゆるドカ雪となる可能性も出ています。
このあたりは防災の観点において表現がとても難しい所ですが、広範囲でこの時期らしい雪の降り方をするものの、風や寒気の流れ方次第では雪雲が発達し、ピンポイントでピンク色のどこかしらでドカ雪が発生するかもしれないという計算なのです。
一難去って、また一難
また、10日(水)の上空の寒気の予想を見てみると、再び寒波がやってきそうです。まさに一難去ってまた一難。これも再び平地で雪となる目安の寒波が本州を覆う予想。青森や北海道はもう少し強い雪が降る可能性が高いです。

今月は不意をついた急な雪、寒さが予想されています。また度々、局地的なドカ雪もあるかもしれないと注意をしておいて頂けたらと思います。
今冬は平年並みにしっかり雪は降る
今回は、さらに来年の雪の見通しもみてみましょう。気象庁は1月・2月と全国的におおむね平年並みの雪の量を予想しています。

なんだか年明け後は、雪は落ち着いてくるのかなという感じにも見えますが油断はできません。平年並みといっても、1月の秋田は79センチ、新潟は63センチ、鳥取55センチとしっかりと雪は降ります。また、局所的にはドカ雪となるような所が出てもおかしくありません。
雪の量の傾向としては平年並みでも、強い寒気が予想されるような時は、最新の雪の予想をチェックする必要がありそうです。
今年のキャベツは良好
去年のこの時期は、夏の記録的な暑さの影響でキャベツの高騰が話題となりました。今年はどうかというと、なんと潤沢に入荷されていました。
広印広島青果さんにお話を伺った所、「先月のコラムでもお伝えしたように、農家さんの経営努力のたまものです。熊本八代で線状降水帯による大雨被害があったものの、台風の影響などはなく、記録的な暑さ対策で種をまく時期をずらし順調に仕上がっています。」と話して下さりました。

こちらは、福岡産の早生キャベツ、いわゆる春キャベツです。冬キャベツに比べ巻きが緩やかで柔らかく、みずみずしいのが特徴。広島ではお好み焼きが有名ですが、その多くは冬玉キャベツが使われています。水分量が少なく仕上がりがしっかり保たれるためです。
また、冬の始めなのに春キャベツが出荷されているという事も広島の方にはあまり認知されてない現状です。この素晴らしい出来の春キャベツが今年は沢山あるので、ぜひ皆さんにおすすめして下さいとの事でした。
クリスマス時期のサラダ需要で最高な春キャベツを広島テレビ「テレビ派」でしっかり伝えようと思います。
今年もありがとうございました。
振り返れば史上最速の梅雨明け、記録的な猛暑など今年も非常に予想が難しい一年となりました。「異常気象」がもはや「通常化」している怖さを感じています。
一方で、これまで様々な農家・青果卸の現場の皆様の取材を経験できたことで、天気のどんな事に実際困っているかという生の声を聞く機会が増えました。これは本当にありがたい事です。
農家の皆様に寄り添った天気情報「農てんき予報」は来年も全力でお届けして参ります。今年も私のコラムを読んで下さり皆様本当にありがとうございました。それでは良いお年を。
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