(イノチオ中央農業研究所 診断分析チーム)
イノチオグループでは1990年より農業生産者の支援として病害虫診断を行っております。現在は年間1,200件前後の診断を実施させて頂いております。
今回は、植物の生育や病害の発生に大きく影響し、農業生産に欠かせない「肥料」についてお話しします。肥料にはさまざまな種類がありますが、特に皆さんから質問の多い「化成肥料」と「有機肥料」の違いを、土づくりや科学的な視点から解説します。
化成肥料・有機肥料とは
化成肥料
化成肥料とは、窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)など複数の成分を、化学的な加工や造粒によって製造した複合肥料のことです。
主な窒素の原料として、硫安(窒素含有率21%)やリン安(17.5%)、尿素(46%)などが挙げられます。特徴として、速効的で施用直後から作物吸収可能であり、窒素含有量が高く有機肥料に比べ安価に入手することができます。
一方で、デメリットとしては、過剰施用や成分の流亡による環境負荷があります。
有機肥料
有機肥料とは、動植物などの生物由来の有機物を原料として作られた肥料のことです。
動植物由来の原料を乾燥、発酵・分解して製造するため、炭素分を多く含み、これが土壌微生物のエサとなる事で微生物活性を促進します。そのため土壌の化学性の改善だけでなく、土壌物理性・土壌生物性の改善も期待できます。
一方で、土壌施用後に作物へ吸収されるまで、有機物の分解工程を経るため、肥効は緩やかであり、速効的な効果はあまり期待できません。

有機肥料の種類と概要
有機肥料にはさまざまな種類があります。

魚粕や菜種粕
代表的なものとして魚粕や菜種粕が挙げられます。これらは有機肥料の中では窒素含有量が比較的高いものの、最大でも8%程度と化成肥料に比べると低い値です。
含まれる窒素は、原料である魚や菜種のタンパク質由来であり、土壌中で微生物による分解を経て植物に吸収されます。
植物は窒素をおもに硝酸態窒素の形で吸収するため、有機肥料に含まれる窒素が作物に吸収されるには、タンパク質→低分子ペプチド→アミノ酸→アンモニア態窒素 → 亜硝酸態窒素 → 硝酸態窒素へと変化しなければなりません。そのため有機肥料は緩効的な肥効を示します。
堆肥
堆肥は有機を原料とした肥料で、肥料区分では「特殊肥料」に分類されます。牛ふん堆肥やバーク堆肥などが一般的です。これらの窒素含量は2%未満と低く、その多くは微生物菌体として含まれています。そのため、肥料効果よりも土壌の物理性改善に優れています。
ボカシ肥料
一方で有機肥料の中でも肥料効果と土壌改良効果を兼ね備えたものが発酵肥料です。発酵肥料は「ボカシ肥料」とも呼ばれます。ボカシ肥料は動植物由来の原料を中熟発酵させることで、タンパク質をあらかじめ分解し、水溶性タンパク質へと変化させています。
これにより土壌中での分解が容易で、作物が吸収しやすく、比較的早い肥効を示します。

ボカシ肥料の特徴
魚粕や菜種粕をご飯に例えれば、ボカシ肥料は食べやすく栄養が吸収されやすいお粥の状態です。その特徴として「速効性と緩効性を併せ持った肥効」、「土壌の物理性・生物性の改善効果」、「生産物の品質向上効果」が挙げられます。
ボカシ肥料は発酵によりタンパク質の分子量が小さくなり、水溶性成分が増加しています。そのため、菜種粕などの一般的な有機肥料に比べ、施用後すぐに作物に吸収されます。
一方で、さまざまな分解過程の窒素形態を含んでいるため、化成肥料のように施肥後に全ての窒素成分が一度に効果を発揮するわけではありません。土壌中での窒素成分の分解に併せて、段階的に効果を発揮します。
また、ボカシ肥料は他の有機肥料と同じく、多くの炭素分を含んでおり、土壌微生物のエサとして働きます。その結果、微生物による土壌の団粒化を促進することで、土壌の保水性・通気性の改善が期待できます。
下の図は、ボカシ肥料で栽培した際の野菜の硝酸イオン・ビタミンC量を調査した結果です(社内試験)。ボカシ肥料栽培区では全国平均と比較して、硝酸イオン量は減少し、ビタミンC量は増加するといった、品質向上効果が見られています。

土壌の三要素と肥料の役割
良い土壌に改善するには「化学性」「物理性」「生物性」の3要素を良くすることが重要です。
このうち、化成肥料は窒素・リン酸・カリなどの肥料成分を補給することで、土壌の化学性の改善に寄与します。有機肥料やボカシ肥料は化成肥料に比べると肥料成分が少なく施用量が多くなるなど使いにくい点もありますが、炭素分を含む有機肥料やボカシ肥料は化学性の改善だけでなく、炭素分が土壌微生物の餌として働くことで、物理性や生物性の改善効果も期待できます。
是非、土づくりの一環として有機肥料やボカシ肥料をご活用ください。
イノチオグループでは、有機肥料やボカシ肥料の製造・販売を行っております。製品について詳しく知りたい方は下記のHPをご覧ください。
川合肥料(イノチオプラントケア株式会社)
最後に化成肥料と有機肥料はどちらも重要ですが、役割と効果は異なります。即効性を求めるなら化成肥料、土づくりや環境配慮を重視するなら有機肥料の活用が有効です。また有機肥料の中でもボカシ肥料には肥料効果・土づくり効果・品質向上効果が期待出来ます。
是非、両者の特性を理解し、作物や土壌に合わせた肥料選びをしてください。
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次回は【「有機肥料の水稲での実証事例」】についてご紹介したいと思います。ぜひ、ご覧ください!
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