(イノチオ中央農業研究所 診断分析チーム)
イノチオグループでは1990年より農業生産者さまの支援として病害虫診断を行っており、現在は年間約1,200件の診断を実施しています。
近年、消費者の安全・安心志向の高まりや環境負荷低減の観点から、有機肥料を活用した水稲栽培への注目が高まっています。しかし、有機肥料を中心とした栽培体系は、化成肥料に比べ、肥効コントロールが難しく、有機栽培特有の課題も存在します。
本稿では、有機肥料の特徴、水稲栽培で生じやすい課題、そして有機資材を活用した改善事例をご紹介します。
有機肥料活用の第一歩は「土づくり」
有機肥料は、微生物が肥料中の成分を分解することで初めて肥効を発揮します。そのため、土壌中の微生物が効率的に働けるよう、物理性・化学性・生物性が整った“土づくり”が欠かせません。土壌環境を整えることで有機肥料が効果的に働き、作物の収量・品質の安定に繋がります。
水稲栽培では、水田土壌から供給される「地力窒素」が生育を支える重要な要素です。地力窒素とは肥料をまかなくても土壌中の有機物や微生物の働きによって供給される窒素を示します。
一般に水稲が吸収する窒素の60〜70%がこの地力窒素とされており、地力窒素に関与する土壌中の有機物量や微生物叢の健全性は、水稲栽培の成否に大きく影響します。有機肥料は、微生物のエサとなる有機物を補給し、土の中でゆっくり窒素を生み出す仕組みを育てるため、地力窒素を高める有効な手段のひとつです。
【土づくりの三要素】
【水稲が吸収する窒素形態】
水稲栽培改善事例①:栽培後半の肥料切れ
現場での改善事例
土づくりを行わず、化成肥料を長年使用していたところ、近年の高温等の異常気象の影響もあり、栽培後半に肥料が切れて、収量減、ごま葉枯病なども発生していました。
ボカシ肥料を中心とした有機肥料の施肥に変更した圃場では、年々、地力の向上がみられました。3年後には、登熟後半まで葉色が維持されました。また、胴割れ米やくず米の減少、食味値の向上などの効果も見られました。
有機肥料に変更しただけでなく、土壌分析結果を基にした土壌改良との適切な組み合わせにより、気候変動下でも安定した水稲栽培が可能になりました。
【ボカシ肥料と化成肥料の窒素成分の違い】
有機肥料にはアミノ酸態窒素・ペプチド態窒素など多様な窒素形態が含まれており、無機化のスピードが緩やかなため、後半の肥料切れの抑制効果が期待できます。
水稲栽培改善事例②:地力の地域差
現場での改善事例
地力窒素測定をしたところ地力窒素は3〜4kg/10aの低地力圃場でした。肥料を施肥基準通りにやっても、毎年目標収量が取れていませんでした。
秋の収穫後に堆肥やボカシ肥料をしっかりと施用し、田植時の基肥も、ボカシ肥料を3年間継続したところ、地力窒素量が約1.5倍に改善しました。そして目標終了の達成につながりました。
【地力窒素の違いによる栽培提案例】
地力窒素は地域や圃場により大きく異なります。地力の低い圃場では、有機肥料による土づくりを継続することで、収量と品質の安定化が期待できます。春期の基肥についても、ボカシ肥料などの有機肥料を使用する事で品質向上につながります。
有機肥料は「土を育てる肥料」です
化成肥料と比較すると有機肥料は即効性こそ低いものの、以下の多面的なメリットがあります。
- 土壌微生物活性化
- 団粒構造形成
- 肥効持続性
- 環境負荷低減
特にボカシ肥料は、植物が吸収しやすいアミノ酸・ペプチドなどを含んでおり、肥効と土壌改良の両面で優れた効果があります。
有機肥料を活用した水稲栽培を実践している方や検討している方へ
有機肥料での栽培は難しいと感じられることもありますが、土壌分析・地力窒素分析に基づいた土づくりや施肥設計と、適切な有機資材の活用によって、収量・品質を安定させることが可能です。
イノチオグループでは、水稲土壌分析、有機資材・ボカシ肥料の製造・販売、水稲有機栽培に関するご相談も承っております。
有機肥料やボカシ肥料について
川合肥料ブランド/イノチオプラントケア株式会社
水稲土壌分析や地力窒素分析・病害虫診断について
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