(農林水産省小島 拓磨)
こんにちは。農林水産省 大臣官房 政策課 技術政策室の小島です。スマート農業の推進を担当しております。今回は、今、私が最も力を入れているIPCSA(イプサ)についてご紹介したいと思います。
IPCSA設立の背景
農業者A「スマート農業について興味があるけど誰に聞けばよいかわからない」
開発者B「異分野の経験を活かして研究したいけど農業現場に伝手がない」
自治体C「同じ課題に悩む他産地での取組の状況を知りたい」
など、これまで多方面からスマート農業に関する要望をいただくことがありました。
スマート農業を広く普及させるためには、技術の活用主体である農業者や研究開発を担う開発者のための直接的な支援を行うだけでなく、農業現場と開発現場の歩み寄りを推進する環境づくりこそが重要であると考えました。
そこで、多様なプレーヤーがコミュニティ形成を促進する「場」としてスマート農業イノベーション推進会議(IPCSA)を立ち上げました。
IPCSAに求められる機能とは
「多様なプレーヤーがコミュニティ形成を促進する場」をつくります!とカッコよく言うことは簡単ですが、そのような場をどのようにして作っていけばよいのでしょうか。
IPCSAの立ち上げを任されたとき、何から手を付ければよいのか悩みましたが、まずは、IPCSAのホームページを作って、スマート農業のあらゆる情報が誰でも簡単に手に入れることができる環境をつくることから始めました。
このホームページで最初に取り組んだことは、スマート農業に関する全国各地の展示会、マッチングイベント、研修がいつどこで誰を対象にどのような形態で行われるかをカレンダーで整理して公開することでした。
利用者からは、「スマート農業に興味を持っていても、どこで見られるかわからなかったので助かる」とのお声をいただいております。自分の家の近くでどんなイベントをやっているのか、気になる方は是非チェックしていただきたいと思います。
(イベント情報)
イベント情報はこちら:イベント情報 | スマート農業イノベーション推進会議(IPCSA)
IPCSA会員のプロフィールを検索可能に
続いて取り組んだことは、IPCSA会員のプロフィールをホームページで検索できるようにすることでした。IPCSAには、農業者、事業者、自治体、大学、研究機関など様々な業種の方が参画しております。さらに、事業者といっても、大手の農機メーカー、食品事業者をはじめ、スマート農業技術活用サービス事業者、異分野のスタートアップなど、多岐にわたります。
スマート農業について、どのような興味や課題を持っているのか、どのような技術やサービスを求めているのか、または提供することができるのかなど、皆さんそれぞれのお立場で、スマート農業への関わりがわかるようなプロフィールを作成していただきました。また、このプロフィールを活用して、スマート農業技術や関連サービスをカタログのように検索できるようにもしています。
さらに、ホームページでは、私たち事務局を介さず、会員自らが、他の会員に直接情報発信できる機能も用意しました。この機能を使えば、例えば、皆さんがお持ちのアイデアや企画の具現化に向けて、協力者を求めたり、関連情報やアドバイスをもらうこともできると思います。
(会員専用サイトの機能)
会員専用サイトの紹介はこちら:1月のスマ農トピック①―新IPCSA会員限定ページについてご紹介!― | コラム・関連情報 | スマート農業イノベーション推進会議(IPCSA)
農業者同士のリアルな交流・議論の場も
そして、農業者が中心となってにスマート農業技術の共通課題について議論を促進するための場(プラットフォーム)も設けました。ここでは、水田作、畑作、露地野菜・花き作、施設野菜・花き作、果樹・茶作、畜産・酪農の6つの営農類型に分かれて、スマート農業技術の活用における課題やその対応策等について、農業者同士のリアルな意見交換を行っています。
先進農業者の取組や技術導入にあたっての考え方を共有したり、技術活用の経験が豊富な大規模地域の農業者が小規模ほ場を視察しながら技術の有効活用に向けた検討を行ったり、異業種を巻き込んで農業分野での生成AIやロボットなど先端技術の活用に向けた課題や将来展望を意見交換したりなど、各プラットフォームで多様な活動が展開されています。
皆様に新たな気づきや成長のきっかけを提供できるように取り組んでおりますので、今後の活動にご期待いただきたいと思います。
この他にもスマート農業技術の操作体験ができるマッチングイベントや経営改善につながる技術導入を学べるセミナーなど、これまで世間では十分に実施されていなかったイベント・研修を開催してきました。
研修についてはアーカイブ動画にてご覧いただけます。資料もあわせて公開しておりますので、ぜひご活用ください。
(実演・体験会の様子)
(研修資料(抜粋))
各活動の詳細はこちら:活動報告 | スマート農業イノベーション推進会議(IPCSA)
このような活動を通じて、会員の皆さん同士の自発的なコミュニティ形成を促し、抱えている課題の解決につながる人材、または技術に出会えるきっかけが生み出されることを期待しています。
理想と現実のギャップを埋めるために
一方、IPSCA設立から一年が経ちましたが、これまで取り組んでみて既に多くの課題を感じています。
このような交流の場を提供してきましたが、それを皆さんに積極的に活用していただける状況にはまだ至っておらず、理想と現実の大きなギャップを痛感しています。
これまでも国は、農業に限らず、あらゆる分野で関係者の交流の場を作ってきましたが、国が関与せず、会員が自発的に交流し、持続的に活動する組織となっているものは少ないと思います。
今回立ち上げたIPCSAが、数年後、自主性も自律性もない形だけの組織にならないように、今のうちからしっかりとした土台を作りたいと強く思っています。
農業者からの期待
このため、IPCSAの運営は、スマート農業を実践するなど、先進技術に知見をお持ちの複数の農業者から助言をいただきながら進めています。立ち上げ前の数か月、多くの農業者お一人お一人とIPCSAについて様々な観点で議論させていただきました。
皆さんからは、
- 農業者が本当に求めている情報(例えば、経営に直結するような情報)を発信してほしい。正確性を追求し過ぎるあまり、面白みのない一般的な情報発信にならないように。成功事例だけでなく、失敗事例も必要。
- やる気のある農業者が伸びていくような活動をやることが基本ではないか。やる気のない農業者を無理に巻き込む必要はない。ただし、どのような方にもきっかけや気づきを与えられるように。
- この組織は今までとは違うぞ、何かやってくれるかもなど、IPCSAにワクワク感が出てほしい。今までにやったことがない企画をやってみたり、毎日ホームページをのぞきたくなるような仕掛けができるかがポイント。
- 国の取組であっても、カッコよくとりまとめようとしないこと。うまくいかなかった点は素直に反省し、改善して次に繋げるという前向きな姿勢が重要。
など、私たちにはない発想で、貴重なアドバイスをいただいています。
IPCSAだからこそできること
上司からは、常にIPCSAの成果を求められます。活動を通して見えてきた農業現場の課題があるだろうから、早急に解決の方向性を見出して対応せよと強く言われております。
待ったなしの課題を多く抱える中、国としても迅速に施策を推進することは最も重要であり、必ずやるべきことです。
しかし、先進的な農業者からのアドバイスを踏まえると、早急なとりまとめに捉われ過ぎた結果、農業現場の真の課題やニーズを見誤ってしまうのではないかとも感じています。
私は、今のIPCSAの運営は、前向きな皆さんから現場のリアルな声、ひらめき溢れるアイデア、挑戦的な提案をいただき、それを先入観を持たずに受け止めて、さまざまなアプローチを試し、繰り返し検証しながら企画を深化させていく段階と考えています。
現在の農業を取り巻く状況は、これまでの私たちの政策の結果です。そうであれば、IPCSAで同じことをやっては意味がない、IPCSAだからこそできることがあるはず、そのように考えて運営しています。
現在、IPCSAホームページでは、毎週、1本、スマート農業に関するトピックやコラムを発信しています。皆さんに、少しでも最新の情報をお届けできるようにという思いから始めた取組ですが、少しでも私たちのやる気が伝われば嬉しいです。これからも、皆さんに気づきを提供できる活動を実施していきますので、スマート農業に少しでもご興味があれば、是非IPCSAにご参加ください。
IPCSA総会(2026年7月29日)への参加もお待ちしております。
【IPCSA主催】令和8年度(第2回)スマート農業イノベーション推進会議(IPCSA)総会 | イベント情報 | スマート農業イノベーション推進会議(IPCSA)
皆さんと一緒にIPSCAを盛り上げ、農業経営の収益向上に向けて、スマート農業技術を有効活用した取組やそこに至る工夫を発信していけることを楽しみにしております。
シリーズ『等身大の農林水産省。スマート農業への挑戦』のその他のコラムはこちら
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
公開日
