記録はするが活用していない
多くの農業現場では、作業記録は手書きで管理され、原価や収益は経験や感覚で把握されている。「肥料はこのくらい」「農薬はこれぐらい」そうした積み重ねで経営は成り立っているが、実際にどの圃場でどれだけコストがかかり、どれだけ収益が出ているのかを正確に把握できているケースは少ない。
忙しさの中でノートに書かれた記録はデータとしては活用されず、毎年同じ作業が繰り返される。そして気づかないうちに、ロスが積み重なっていく。
データが見せる“見えないロス”
農林業センサスによれば、データを活用した農業経営体は増加しており、全体の約4割に達しているとされている。一方で、その内容を見ると、気象情報や市況を参考にする、あるいは作業履歴を記録するといった段階にとどまるケースも多く、データを分析し、経営判断にまで活かしている経営体はまだ限られているのが実態である。
データを「使う」と、「活かす」は、まったく意味が違う。
出典:2025農林業センサス
では、データを活かすと経営はどう変わるのだろうか。
データの価値は、単なる記録ではなく、“見えないロス”を見つけることにある。例えば、作業の遅れがどの圃場でおきたか、水管理や防除のタイミングのズレがどこで発生しているか。単収が落ちている圃場はどこなのか。
このように情報が可視化されることで、初めて改善の打ち手が見えてくる。スマート農機から得られる収量や食味、土壌成分、作業時間、気象条件等のデータを組み合わせて分析することで、収量をあげるためのヒントや付加価値向上の可能性も見えてくる。
データを活かしたPDCAサイクル
おしの農場では、圃場ごとの単収や作業履歴をデータで管理し、それをもとに翌年の栽培計画や施肥設計を見直している。PDCAの繰り返しは従業員の教育にも有効である。
その結果、規模を拡大しても品質や単収は落ちず、むしろ向上している。ここで重要なのは、スマート農機そのものではない。
スマート農機から得られるデータを活用して、限りある経営資源を効率良く回し、成果をあげている点にある。
下の図は米の収量と食味を圃場毎に示したグラフである。紫色エリアの圃場は収量が目標とする1反当たり600kg以上で、食味は美味しいとされるタンパク質の基準量(5.5〜7.2)を合格している。紫色エリアの中の圃場は収量も食味も合格だが、それより下の水色の丸のタンパク質は合格だが収量が目標より低いことを示している。そのため、翌年は収量を上げるために肥料を追加する。一方、オレンジ色の丸の収量は合格だがタンパク質が基準より多く、肥料が多すぎた可能性があるため減らす必要がある。
米の収量と食味のマッピング図
データがあれば、経営は判断できる
費用対効果とは、単に投資額と収益を比較することではない。
その本質は、自らの経営の状態を把握し、改善するかどうかにある。
データがなければ、経営は勘に頼るしかない。データがあれば、経営は判断できる。スマート農業とは、機械を導入することで得られたデータを活かし、経営を“見える化”し、判断できる状態に変えることである。そのとき初めて、投資の意味が見えてくる。
次回は、データをどのように経営管理に落とし込み、目標管理として活用していくのか、その具体益な考え方について整理する。
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