イノチオグループでは1990年より農業生産者の支援として病害虫診断を行っております。現在は年間1200件前後の診断を実施させて頂いております。
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本シリーズでは、実際に寄せられた病害虫診断の事例を交えながら、近年の気象状況や栽培環境・栽培方式の変化などの中で注意すべき病害虫やその対策についてお話させて頂きます。
今回は、多くの農作物に被害を与える【チョウ目害虫】について生態と防除におけるポイントなどを解説いたします。
チョウ目害虫とは?
チョウ目とはりん翅目とも呼ばれ、一般的にはチョウ、ガと呼ばれる昆虫の仲間の総称で、農業現場で問題となる種の多くはガ類です。これらの幼虫(いわゆるイモムシ・ケムシ)が農作物を食害して被害を与える種が「チョウ目害虫」と呼ばれます。
害虫のなかでも発生種数が多く、被害も大きいグループであり、野菜・花き・果樹・飼料作物など多くの作物で問題となります。

主な種類と生態的特徴
ハスモンヨトウ(Spodoptera litura、ヤガ科)
- 広食性で多く作物の葉・莢・蕾・花などを加害する。
- 日本各地に発生し特に夏~秋に多発する。
- 雌成虫は卵塊で産卵する為、多発すると短期間で甚大な被害となる。
シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua、ヤガ科)
- 広食性で多く作物の葉を加害する。
- 露地作物だけでなく、施設作物(ネギ、カーネーション、キクなど)でも問題になる。
- 日本各地に発生し特に夏~秋に多発する。ハスモンヨトウよりもやや気温の高い時期を好む。
オオタバコガ(Helicoverpa armigera、ヤガ科)
- 多くの野菜や花きの果実・蕾・茎などを加害する。
- 中齢幼虫になると果実や蕾の中に食入していき、商品価値を大きく低下させる。
- 植物体内に潜ってしまうと殺虫剤などでの防除が困難となる。
ハイマダラノメイガ(Hellulla undalis、メイガ科)
- アブラナ科野菜の生長点付近に食入する。(別名ダイコンシンクイムシとも呼ばれる)
- 生育初期の若い芽や新芽を加害し、芯止まりや枯死など生育に影響を与える。
コナガ(Plutella xylostella、コナガ科)
- 秋と翌年の春~夏にかけて発生する。
- 休眠はしないので、温暖な地域や施設栽培などでは通年発生する可能性もある。
- アブラナ科の葉を食害する。
- 葉の表皮を残して食べる為、食害部は白い斑点状になる。
- 生育が極めて早く、年間に何度も世代交代を行う為、農薬抵抗性獲得が懸念される。
アワノメイガ(Ostrinia furnacalis、ツトガ科)
- トウモロコシ、アワなどのイネ科作物の茎や穂を食害する。
- トウモロコシでは倒伏や穂の充実不良、アワ・ヒエでは穂の出方が悪くなり収量や品質が低下する。
ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda、ヤガ科)
- 南北アメリカ原産のガの1種で、2019年に鹿児島で国内初確認された外来生物。
- 飼料用トウモロコシなど多くの作物を加害する重要害虫。
- トウモロコシの生長点の葉を食害し生育を阻害する。
トマトキバガ(Tuta absoluta、キバガ科)
- 南米原産で、2021年に国内初確認された侵略的外来生物。
- 施設・露地トマトなどのナス科作物にて被害が大きい。
- 幼虫が葉・果実に食入する為、収量や品質が低下する。
防除のポイント|化学農薬散布以外の防除方法
物理的防除
防虫ネットの展張
- チョウ目害虫対策のみであれば、目合いの粗いネットでも効果あり。
- チョウ目害虫の被害は「幼虫の食害」のため、圃場内で成虫の産卵を防ぐことがとても有効。
ハウスの開口部へ防虫ネットを展張することで、チョウ目害虫を圃場へいれない。
光を活用した防除(防蛾灯など)
- 夜間活発になるヤガ類の仲間に対して、夜間に圃場へライトを照射して成虫の飛来や産卵を抑制する。
フェロモンを利用した防除
- フェロモン剤:性フェロモンを製剤化し、オス成虫を誘殺したり雌雄の交信かく乱を行わせ、次世代の発生を抑制する。
生物的防除
生物農薬の散布
- BT剤(バチルス・チューリンゲンシス)という昆虫病原性細菌を有効成分とした微生物農薬で、チョウ目の消化管内で毒素が活性化し効果を発揮。
- 人畜に対する安全性が高い。
気候変動がもたらす害虫発生の変化
近年、地球温暖化をはじめとする気候変動の影響により、害虫の発生の仕方が変化しています。
- 過去発生が見られなかった地域への分布拡大。
- 越冬できなかった種類の害虫が越冬可能となり、春以降に大発生するリスクが高まる。
- 気温の上昇により世代交代が早まり、年間発生回数が増加することで被害の拡大・長期化。
- 海外からの害虫の侵入と温暖化により定着が可能になった。(外来生物)
このような環境変化に対応するには、発生予察に基づく早期防除や圃場の定期観察がこれまで以上に重要になります。
また化学農薬に依存せず、天敵生物や耕種的防除、物理的防除も組み合わせたIPM(総合防除)の意識・実践が求められます。
※病害虫の発生予察は農林水産省HP「病害虫発生予察情報」にて確認ができます。
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次回は『近年増加シリーズ 病害編 アブラナ科野菜 黒すす病、黒腐病』についてご紹介したいと思います。
ぜひ、ご覧ください!
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