(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは、気象予報士の寺本卓也です。先月は、台風25号により再び千葉県で記録的な大雨となりました。県北部の印旛沼は決壊し、農地の冠水、施設の損壊など、被害を受けた方々の記事を読むと胸が苦しくなります。
台風の平年発生数は25個ですが、今年はすでに26個です。平年を超える発生数の要因の一つに海面水温の高さがありますが、今月もまだまだ新たな台風発生に油断できない状況が続いています。
この農てんきコラムでは、農家の皆さんに役立つ最新の天気の情報をわかりやすくお届けしています。私は天気を変える事はできませんが、このコラムが皆さんの日々の農作業の判断や、作物を守る備えに少しでも役立てて頂けたらという想いでおります。
今月も注目したい天気の内容が盛り沢山です。ぜひ最後までお付き合い下さい。
9月は予想以上の大雨に
下図は先月の雨量の予想と結果です。

秋雨前線が本州で停滞した他、台風の影響も重なり、東北〜西日本にかけて予想以上に雨量が多くなりました。特に関東の一部では平年の3倍を超える降水量です。
一方で北海道の雨量は平年9月の半分程度の少雨と対照的でした。広印広島青果の小山さんにお話を伺うと、
「今年は北海道の天候が安定していたからジャガイモやタマネギは、今のところ出荷が順調だよ。一方で、関東では大雨の影響が心配されている。千葉や茨城などは野菜の主要産地だけに、これからキャベツをはじめとした葉菜類の生育や出荷への影響が出てくる可能性がある。関東産の不足を補うため、他産地への引き合いが強まることも考えられ、野菜の相場にも影響が出てくるかもしれないね。」
と話して下さいました。
10月もまだ暑いか
では、気になる今月の天気の傾向を見てみましょう。

気象庁発表の1か月予報(平均気温)は、全国的に高い予想です。以前のコラムで秋は涼しくなるとお伝えしていたのは何だったのかと、本当に皆さんに申し訳ない気持ちでいっぱいです。
とはいえ、さすがに日中35℃以上の猛暑になるという事はなく、昼間はおおよそ各地で25〜29℃と初夏のようなカラッとした暑さの所が多くなりそうです。
また最低気温は北海道・東北あたりは10〜15℃、東・西日本は20℃を下回るような日が増えて1日の寒暖差も大きくなりそうです。
今月は本当に少雨になるのか
続いて1か月降水量を見てみましょう。

気象庁は北海道から東日本にかけて平年並みの雨量、近畿、中四国・九州南部で平年並みか少ない予想としています。言い換えると、おおむね各地とも晴れる日が多くなりそうという事ですが、本当に今月は雨が降らないのでしょうか。
独自予報でも秋晴れ多い
ウェザーマップ独自の16日予報(東京)も見てみましょう。

9月は雨の日が多かったという事が話題に上がりましたが、今月は晴れる日が多い予想。日中の最高気温は25℃前後、朝晩は15℃前後と昼間はまだ暑さが残り朝晩は肌寒いといった比較的秋らしい日が多くなりそうです。
その他の地点を確認されたい方はこちらをご覧下さい。今のところ、全国的に今月はようやく晴れる日が増えてきそうな傾向ですが、このような長期予報は今月もガラッと変わる可能性も考えておく必要があります。
先月もそうでしたが、まだまだ今月も台風が発生しそうな状況にあるからです。
10月も台風発生しやすく
日本の南の海面水温を見てみましょう。日本の南東(図の右下)方向に向かって赤くなっており、海の温度が平年よりかなり高い状況が続いています。

台風発生の要因の一つは海面の水蒸気の多さです。海の温度が高い状況が今月も続き、新たな台風発生に油断できません。このコラムでも何度か取り上げていますが、これはエルニーニョ現象というものです。
10月も新たな台風に注意
こちらはスーパーコンピュータによる雨雲のシミュレーションのひとつです。

台風のような活発な雨雲が計算で出ています。今月も新たな台風が発生する可能性があり、今後の情報をこまめに確認する必要がありそうです。
非常に強いエルニーニョ現象ってなに
エルニーニョ現象は数年おきに発生する比較的珍しくない現象ですが、世界気象機関は2026年後半に「非常に強い」レベルとなるとし、「これまでにない規模の準備と対応が必要。」と各国に呼びかけています。
日本の影響はどうでしょうか。下図は、気象庁が発表している今冬の日本の天候のイラスト図です。

でも、なんだか難しいですね。
大ざっぱにお伝えすると、冬になっても日本の南の海は異常に暖かく、普段ならあまり発生しない場所で活発な雲がどんどんできて、巡り巡って日本の偏西風の流れまで変えてしまい、この冬は雪を降らせるパワーが弱まりそうだぞと言っています。いわゆる暖冬です。
今冬暖冬傾向で野菜の影響は
気象庁は毎年9月に寒候期予報というものを発表しています。初めて聞いたという方も多いと思いますが、これは今冬の天候がどうなりそうかをざっくりと予想しています。
すると12月〜来年2月にかけては、全国的に平年より気温が高い「暖冬」になるとしています。

冬なので、めちゃめちゃ暖かいという事ではないですが、最低気温が北海道では氷点下を下回らない日が多くなり、畑が凍らず野良イモが増加したりだとか、各地で日中の気温が春先にかけて高いとなると野菜の生育の前倒しなどが発生。産地リレーなどがうまくいかず、端境期が長くなるなど農家にとって嬉しくない状況になるかもしれません。
多雨・少雪の冬になるか
また今冬の降水量予想を見てみると、全国的に「多い」です。冬に雪が多いのではなくて雨が多い予想。

例年であれば日本海側で雪が多くなる時期ですが、今冬は雪が少ない予想となっています。冬に全国的に雨量が多くなるという異常な状況、これもエルニーニョ現象の影響と言えそうです。
JA広島果実連の河村さんは「この時期雨が多いと柑橘類などの味がぼけてしまったり、暖冬も重なると虫がまだ飛んでいない時期に果樹の花が早く咲いてしまい受粉がうまくいかないかも。」と影響を危惧していました。
「過去の経験や常識が通用しづらくなっている。」気象の世界では、そんな言葉を耳にする機会が増えてきました。
だからこそ、過去の経験を大切にしながらも、今年は今月はどうなるかを、その都度確認することがより一層大切になってきていると感じます。変わりゆく時代に合わせた、農家の皆様に役立つ天気予報をこれからも心がけていこうと思います。
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