GAP注目のなぜ?
GAPなど国際認証を巡る動きが活発になってきました。農林水産省では去年GAP戦略協議会を立ち上げましたし、政府の日本再興戦略でも農業の成長戦略としてGAP取得の推進を掲げています。
GAPとは衛生的で環境的に持続可能な生産活動を行うために、決められた生産工程を点検し実践していく活動で、第三者機関が認証する仕組みです。もともと環境汚染に苦しむヨーロッパで、持続可能な社会を実現するために取り組まれ始めましたが、その後、土壌管理から育苗、栽培、出荷までの各工程で、気を付けるべき工程を特定し、改善していく工業的な手法が、衛生管理や品質の向上、それに経営の効率化にも役立つとして、農業の世界でも広がっていきました。平成26年時点で、取り組んでいる産地は国内で2700と、日本でもその数を年々増やしています。
輸出と訪日外国人が日本農業を変える
こうした動きが加速してきた背景には、輸出と訪日外国人が増えてきたことがあります。
欧米では農産物取引の条件としてグローバルGAPの取得を求めるスーパーは多く、最近ではアジア各国でもその動きが広がってきました。TPPやEUとの経済連携で関税削減が進むことから、政府は輸出拡大を掲げていますが、関税撤廃はあくまで国と国との約束です。民間取引では第三者認証が不可欠で、認証無しでは商談さえ出来ないケースもあると言います。
また訪日外国人が年間2000万人を超え、2020年には東京でオリンピック、パラリンピックでさらに多くの外国人が来日してきます。宗教や育った環境により、食べ物に様々な要件を求める外国人も増えてくるでしょう。しかもロンドン以降のオリンピックでは、IOCは持続可能性を大きく掲げており、会場で提供する料理にはGAPなどの国際認証をとった農産物を優先的に使うことを求めてくるようになりました。美味しさや安全性以上に、持続可能な農業か、つまり環境に優しい農法かどうかが問われることになった訳です。
オリンピックで国産野菜が使えない?
東京オリンピック準備事務局では今、食材調達のコード作りを進めていますが、海外並に国際認証を求めてくれば、国内産地にはその対応が求められます。JA全中や中央畜産会などが1月に「持続可能な日本産農林水産物の活用推進協議会」を作ったのは、そうしたオリンピック事務局の動きに対応するためでもあります。
こうした欧米主導の動きに反発する人たちがいることも事実です。そもそもこうした認証の取り組みが欧米で主流となったのは、食材が国を超えて流通し、誰がどこで、どういうやり方で作ったのか、明らかにする必要があったからです。安全性や環境の持続可能性、それに家畜の福祉など、第三者が認証するGAPは、食にこだわりを持つ人たちに極めて都合が良かったわけです。それは日本とは違うということでしょう。
安全性にも説明責任が求められている
一方で日本ではそもそも国産農産物の流通は、ほぼ国内に限られてきましたから、そうした取り組みは遅れてきました。残留農薬などに対する安全性は、農林水産省や地方自治体がスーパーなどで抜き打ち検査などを行ったり、例えば農産物に包装に作った人の写真をつけるなどしたりして、消費者に信用してもらうことで済んできました。しかし農産物を輸出したり、海外から訪日外国人が増えたりしてくると、そうした仕組みも変えざるを得ません。国産農産物が安全で環境にも優しいやり方で生産されていることを知ってもらうためには、「俺を信用してくれ」では通らず、第三者に認証してもらうことが世界標準になりつつあるからです。
日本政府ではいま、農業も世界各地で様々なこともあり、欧米で主流となっているグローバルGAPではなく、日本仕様のGAPを作り、それを国際的に認めてもらおうという動きもあります。ただ判断をするのはあくまでも、取引相手であり外国の消費者です。相手が納得してくれなければ、いくらすばらしい日本版GAPを作っても、それこそガラパゴスです。
輸出と訪日外国人の増加は日本農業を大きく変える可能性があります。そうした流れにうまく乗っていかなくてはなりません。オリンピックまであと4年。みなさんの準備は進んでいますか?
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
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