本稿では、前回紹介した戦国武将戦略の2つ目のポイントとして、「陣営をつくる」ということを提唱したい。
今は食の戦国時代
前回も述べたが、現在、多くの地域の自治体や生産者が大消費地への販路拡大を目指している。その結果、東京や大阪、名古屋などの大都市圏の百貨店や高級スーパーでは、棚の取り合い合戦となっている。戦国時代に例えれば、こうした大消費地は関ヶ原と化しており、名のある戦国武将(=名産品や農産物)が陣地(=売場の陳列棚)を取り合うべく、凌ぎを削っているのである。これは農産物も6次産業化商品である加工品も同じである。
戦国武将(大名)は、陣営を組んだ
筆者は歴史の専門家ではないので、個々の戦国大名の戦略や戦い方については論じないが、一般的に戦国武将たちは、地元を平定し、足場固めをしてから天下を取りに行った。そして、状況によっては、遠方の戦国武将と連合を組み、陣営を構築して天下を目指したのである。その集大成が天下分け目の戦いである、関ヶ原の合戦であろう。関ヶ原では、大きな陣営として、東軍と西軍に分かれて戦った。
戦国武将に学ぶ農産物と6次産業化商品の販路拡大戦略=戦国武将戦略
農産物やそれらの加工品の販路拡大を考えていくにあたり、こうした戦国武将の戦い方に学ぶところは大きい。
前回は、地元を平定してから、外に出る、という視点で考えたが、今回は陣営の視点で考えてみよう。戦国武将はなぜ、陣営を組んだのか、その理由は「小国であっても、陣営を組むことで強力な軍隊を持つ敵に対抗できるから」である。これは、「小規模な農業生産法人であっても、大ロットに対応することができる」と応用することができる。つまり、自社だけでは顧客の要求するロットに対応できない場合でも、連携する農業法人を複数持っておけば、連携先から調達することで対応できる、ということである。実際に小規模農家が農事組合法人などを作り、大手企業を相手に契約栽培に取り組んでいる事例などは、「陣営を組んでいる」事例であると言える。
この陣営であるが、比較的自分の営農地域に近いところで連携するだけではなく、もっと広域で連携することで、より強力なものとなる。例えば、東北の農業生産法人と、九州の農業生産法人が陣営を組めば、産地リレーによって、周年栽培に対応できる可能性がある。また、こうした広域連携は、台風などの災害に対してのリスクヘッジにもつながるだろう。規模の大きい生産者などでは、すでにこうした動きも始まっている。
まとめ
ここまでの内容を踏まえ、戦国武将戦略の第二のポイントとして、「地域内外で陣営を組むこと」をあげる。販路拡大を進めていく上で、特に農産物など環境や季節に収穫量が影響を受ける商品を展開する場合、こうして陣営を組んで置くことは顧客に対する供給量を安定化させる意味でも重要である。
なお、6次産業化商品においても、陣営を組むこと(=他地域等との連携すること)は重要である。それは、加工原材料の安定調達というだけではなく、直売所等における販売商品のバリエーション強化といった部分にもつながっていくのだ。
ぜひ、研修会や各種会合などで、他産地の農業生産者と交流する機会があれば、積極的に親交を深めて欲しい。彼らは非常に強いライバルかもしれないが、もしかすると非常に頼れるチームメイトになるかもしれないのである。
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
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