後継者は真面目に仕事に取組み、頑張っている方が多い印象ですが、ただ、果たして仕事を頑張るだけで経営者になれるでしょうか・・・
事業承継の事例
農家の後継ぎ息子、Aさん、35歳。Aさんは、いずれは尊敬する父の跡を継ぎ、自分も父のような農家になりたいと思い、農業高校を卒業後、少し地元の企業で働いた後、就農しました。
Aさんは、頑張って生産技術を父から学び、少しづつ自分のものにしてきました。
今ではほとんどの作物を生産できるノウハウは持っていると自信を持っています。
そんなあるとき、父が突然心臓発作で倒れたのです。
以前から、代表である父は跡を継ぐのはAさんだと言っており、Aさんも自分が跡をつぐのだと認識していたので、自然とAさんが、「代わりに自分がやる!」と言って、突如、代表を交代し事業を承継することになりました。
しかし、Aさんは生産技術のノウハウは磨いてきましたが、経営のことは父に任せっきりにしており、お金のこともよくわからないし、従業員を管理することもよくわからなかったのです。
なんとかなる!と、自分自身を奮い立たせて頑張りましたが、
結果的に、従業員の気持ちは離れ、借金が増える結果になってしまいました。
解説
こうした事例は、よくある事例です。
突然、代表である父が倒れ、後継者が経営しなければならなくなった事例です。
私は実際に、農業だけでなく中小企業も含めて多くの後継者とお会いしますが、後継者の方々は、みなさん真面目に仕事に取組み、たくさんのことを学んでいる、頑張っている方が多いという印象を持っています。
でも、仕事のことは頑張っているのですが、会社のこと、経営のことをわかっていない方も、一方で多いなと感じています。
例えば、
- いま会社に借入金がどれだけあるのか?
- お金がどれだけあるのか?
- 事業はこのままでも将来安定するのか?
- 従業員が前向きに働ける環境が作れているのか?
などの、会社の現状や経営に関する質問に具体的に答えられなかったりします。
そんな時、父が倒れるなどして、初めて自分が経営をすることになり、多くのことを知るのです。
しかし、それまで経営を学んでいないし、経験してこなかったことなので、すべてのことが初めてのことばかり・・・。
わからないながらも、考えて、決めて、経営をしていきますが、
わからないことだらけなので、たくさん苦労をしてしまいます。
その結果、最悪の場合、会社にとっても個人にとっても不幸になってしまうこともあります。
Aさんの事例もまさにそんな状態ですね。
では、Aさんはどうすればよかったのでしょうか?
1.自分自身と向き合う
まずは、後継者自分自身が経営者として何が足りないのか?自分自身と向き合って、知識や能力や覚悟など足りないところを把握することが必要です。
2.会社と向き合う
そして、会社の現状と向き合います。
財務の状態や、事業の状態、経営上のリスクの状態、組織の状態など、自身が経営する前提で徹底的に向き合って、把握します。
3.いつでも経営できる準備をする
その上で、自身が経営する準備をします。
いつ親が倒れても、自身が代わりに経営できるように準備をしておくのです。
そのためには、自身が経営者として成長しはじめなければならないし、会社を成長させはじめなければならないのです。
大事なことは、”いつ事業承継が起きても、問題ないように準備しておく”、ということです。
準備しておくことにおいては、
経営者は準備を補佐し、後継者が自ら準備を進める。
というそれぞれの立ち位置を明確にすることが未来につながる事業承継のポイントとなります。
Aさんもしっかりと自身が経営をする準備をしていたら、事業承継に苦労はせず、未来に向けた経営に力を入れられていかもしれません。
後継者のみなさんには、これを機に経営を学び始めていただくことを強くお勧めいたします。
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されております
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