こんにちは!フィデスの久保京子です。
私は消費生活アドバイザーとして、消費者目線で考えるこれからの食ビジネスのヒントをお届けします。
皆さんも既にご存じかと思いますが、葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分とした機能性表示食品販売事業者16社に対して、11月7日に景表法措置命令の処分が下りました。
機能性表示食品で初の景表法措置命令であり、食品分野で過去最多の16社一斉措置という点でも、業界にとって大きなインパクトを与えています。
2015年4月に制度が始まった機能性表示食品ですが、順調に届出件数は伸び、約2年半後の2017年11月30日時点での届け出件数は1185件(届出撤回含む)となっています。
日本政策金融公庫が、平成 28 年7月に実施した「平成28年上半期食品産業動向調査(特別設問)」では、食品関係企業(製造業、卸売業、小売業、飲食業)の66.9%が機能性表示食品の取扱いに関心を持っている回答しました。
また、関心の高い機能性として「中性脂肪・体脂肪」、「血糖値」、「コレステロール」、「血圧」の効果を狙いとする傾向が高くなっています。
【機能性表示食品の取扱い状況】
【機能性表示食品において狙いとしている効果】
そんな事業者が熱い視線を寄せる中での、今回の「葛の花」の措置命令。機能性に関する届出表示は、機能性関与成分に関する研究レビューによる「内臓脂肪と皮下脂肪やウエスト周囲径を減らすのを助ける機能」となっていました。
本事案の処分のポイントと、健康食品の機能性を広告表示する上での留意点を確認します。
違反となった広告表示内容
痩身効果にについて、あたかも、対象商品を摂取するだけで、誰でも容易に、内臓脂肪(及び皮下脂肪)の減少による、外見上、身体の変化を認識できるまでの腹部の痩身効果が得られるかのように示す表示をしていた。
実際
16社に対し、それぞれ当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、16社から資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。
根拠がないとされたポイント
- データではBMIが25〜30という軽度の肥満の被験者が対象であるにもかかわらず、それに準ずる広告表示がなされておらず、あたかも誰にでも効果があるような表現が用いられていたこと。
- 根拠データでは、運動と食事制限によって、摂取エネルギーよりも消費エネルギーが上回る状態を維持することが条件。(運動では、12週間平均で約8000〜9000歩/日で、これは通常より2000歩/日多い)
- 実験結果の約1kg減少、ウエストで約マイナス1cmは通常1日の変動範囲と考えられる。
本事案は、痩身効果に対する優良誤認は不実証広告規制(※)を用いた処分となっています。
「機能性評価の内容」と「表示」の不整合が問題となりました。
(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。
消費者庁では、葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分とする機能性表示食品45商品のうち、違反していた(痩身効果までうたっている)今回の16社(19商品)についてのみ処分したとしています。
消費者庁の大元慎二表示対策課長との会見で、「本制度は中小企業の活用を促すことも目的としているところ、今回の処分は制度を活用する上で萎縮を招かないか。」との記者の質問に、「(届出の)データをしっかり見ておけば(今回違反となったような)表示は当然できない。中小といえどもデータを読み解けないということはない」と、バッサリ切りました。
冒頭の、日本政策金融公庫の調査では、機能性表示食品を取り扱ううえでの事業者の課題
ついて、製造業では「研究開発スタッフの充実」が46.5%と最も多くなっている一方で、小売業では「消費者ニーズ把握のためのマーケティング」47.8%、「訴求したい機能性をうまく消費者に伝えること」46.2%が多い結果となっています。
【機能性表示食品の課題】
今後、機能性表示制度を発展させ、有効活用していくうえで、研究開発、マーケティング、広告表示を連携して強化していくことが求められると言えそうです。制度の趣旨をよく理解したうえで、広告が届出の内容を逸脱しないよう、充分に注意が必要です。
--------------------------------------------------------------------------------
機能性表示食品に関する調査結果
(日本政策金融公庫 平成28年7月調査)
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/topics_161003a.pdf
調査時点: 2016年7月1日
調査方法:郵送により調査票を配布し郵送により回収
有効回収数: 全体で2,705 社 (回収率38.4%)
《内訳》 製造業:1,731 社、卸売業:665 社、小売業:237 社、飲食業:72 社
--------------------------------------------------------------------------------
----------
葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分とする機能性表示食品の
販売事業者16社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 平成29年11月7日)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0001.pdf
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0021.pdf
---------
◆機能性表示食品で初の景品表示法違反に基づく措置命令! 葛の花由来イソフラボンを関与成分とする機能性表示食品販売事業者16社!
[斬新な視点から健康・食・運動スポーツに関する情報を発信するWebマガジン
「HealthBrain」2017年11月7日より転載]
http://www.agingstyle.com/2017/11/10002282.html
◆「葛の花」機能性表示食品で16社に措置命令(後)facebooktwitteryoutube
一般2017年11月09日 09:24一般「葛の花」機能性表示食品で16社に措置命令(後)
(NETIB-NEWS 2017年11月9日)
http://www.data-max.co.jp/291109_dm1248_02/
◆消費者庁 「葛の花」に措置命令、機能性で初、16社一斉処分
(通販新聞 平成29年11月9日)
http://www.tsuhanshinbun.com/archive/2017/11/post-3018.html
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
公開日