印刷物は、農産物と同じように手で触れることができるメディアです。また、TPOに合わせて、大きさや形、用紙の種類、伝えるメッセージなどを工夫することができます。QRコードなどを使えば、Webとも簡単に連携できます。
こうした特徴を活かすことで、印刷物は、農家の皆さんの思いや熱意、農産物の特徴や魅力を市場(消費者や流通に関わる人たち)にスムーズに伝えることに大いに役立ちます。このコラムでは、市場に伝わる印刷物のつくり方や使い方を身に付けるためのさまざまなヒントを紹介していきます。
農産物のPOP広告をつくる
JA直売所や道の駅で使うPOP広告をつくるところから始めましょう。
POP広告(ポップこうこく、ピーオーピーこうこく)とは、「主に商店などに用いられる販売促進のための広告媒体」のことです。例えば、ドラッグストアやスーパーマーケット、書店などの棚に置かれたり貼られたりしている小さな広告で、皆さんも見たことがあると思います。
写真は書店で使われているPOP広告の例です。書籍コーナーで使われていることから、シンプルなものが中心となっています。
POP広告には通常、商品名、価格、キャッチコピーあるいは説明文などが書かれています。中には、写真やイラストが使われているものもあります。今回は、この定番形式に沿いながら手書きでPOP広告をつくります。手書きにすることで、皆さんの思いや熱意、農作物の魅力が伝わりやすいものがつくれるからです。
では、早速取り掛かりましょう。まず、白いA4サイズ(210mm x 297mm)のコピー用紙を1枚用意して、それを4つに折りたたんでください。4分割された用紙に4つのPOP広告案を書きます。ちなみに、A4の4分の1は、年賀状とほぼ同じサイズになります。
次に、POP広告に書くキャッチコピーあるいは説明文を考えてください。POP広告は、直売所や道の駅に来た消費者の興味関心を引き、実際に買ってもらうよう背中を押すという大切な役目を担います。そのため、シンプルで分かりやすいキャッチコピーや説明文であることが大事です。
POP広告の文面を考える際には、「誰に向けてアピールするか」をイメージすることも役立ちます。地元の人たちか観光客か、あるいは若い人か中高年かなど、アピールする対象によって刺さるメッセージが異なるからです。POP広告を使う予定のJA直売所や道の駅を具体的に想定できるようでしたら、その販売所の主な利用者を思い浮かべるのも有効です。
文面でアピールするポイントとしては、例えば以下のようなものが挙げられます:
- その土地の名産品であること(特に旅行者向けに効果的)
- 美容や健康への効果・効能
- 季節性:「初物」「今が旬」など
- 調理法:寒い時期なら「温かい鍋物に」など
- 話題性:「XXで紹介されました」など
アピールポイントが決まったら、「商品名」とアピールポイントを含む「キャッチコピーあるいは説明文」を用意した紙に書いてください。その際、文字の色を変えたり、キーワードに下線を引いたり、イラストや写真を使ったりして、アピール力を高めるよう工夫することも効果的です。
今回はA4を4分割した用紙を使うので、4つの異なる種類のPOP広告案作成に挑戦してください。1枚で足りない方は、何枚使っても構いません。そして、その中からご自身の思いや熱意、農産物の魅力が伝わると思われるものを数点選んでください
POP広告をテストする
納得のいく手書きPOP広告は準備できましたでしょうか?続いて、実際に手書きのPOP広告を厚紙に貼ってJA直売所や道の駅で使ってみましょう。ただ、いきなり本格的に展開するのではなく、まずは限られた販売所でのテストから始めます。このテストでは、POP広告をより伝わりやすく改善するヒントをできるだけたくさん集めることを目的とします。
テストに当たっては、複数パターンのPOP広告を並行して使います。こうすることで、それぞれのキャッチコピーや説明文の良いところ・改善の余地が見えてきます。また、用紙の色を変える、POP広告の設置場所をいろいろ変える、といった取り組みを通じても良いヒントが得られます。
この際、手書きのPOP広告をそのまま使うことをオススメします。複数枚必要な場合には、手書き原稿をそのままカラーコピーしたものを使いましょう。自宅のプリンターやコンビニエンスストアなどに設置されているコピー機を使えば、簡単につくることができます。テストしている販売所の数が多くない場合には枚数もカラーコピーで間に合いますし、何よりPOP広告は手書きの方が効果的だと言われていますから。
では、まずはPOP広告のテストを通じて、市場に伝わる印刷物のつくり方や使い方を身に付けるための第一歩を踏み出しましょう!
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