岐阜県の恵那・中津川地域は昔から和菓子「栗きんとん」が有名であった。株式会社恵那川上屋は地元では後発でありながら地元のJAや生産者と連携し、地元産の栗を使用した「栗きんとん」を製造することによって、菓子屋だけが儲けて喜ぶのではなく、生産者、お客様と一緒に喜べる仕組みづくりを目指している。今回は株式会社恵那川上屋の6次産業化のポイントについて解説する。
高品質な栗「超特選栗」の安定生産の実現
岐阜県の恵那・中津川地区は和菓子「栗きんとん」が特産品として有名であったが、和菓子屋は調達面の問題から鮮度の低い他の産地の栗を使用しており、栗の産地として衰退の危機に瀕していた。そこで、当社と生産者とJAひがしみのが連携し、栗の栽培技術としては日本一と言われる塚本實氏の「低樹高・超低樹高栽培」を導入・普及することで、高品質な栗「超特選栗」の安定生産が可能になった。今ではJAひがしみのが窓口となり東美濃栗振興協議会内に「超特選栗部会」を組織し、厳格な品質基準に基づく選果や剪定講習会の実施等、「超特選栗」の高品質化の維持に向けた取組みを行うことで、栗そのものの付加価値を最大限に高めることに成功しており、栗産地としても見事に復活している。
「超特選栗」と「低樹高・超低樹高栽培」
「超特選恵那栗」を使用した高級菓子
当社は超特選栗部会が生産した「超特選栗」を市場価格の2倍近い値段で全量買い取ることで、生産者の安定的な所得向上に貢献している。しかし、2倍近く値段で買い取るということは当然原価率が高くなってしまう。そこで当社は、高品質な栗の付加価値をさらに高める取組みを行っている。「栗は鮮度が命」と言われるほど、新鮮であると味も風味も良いということで、収穫後24時間以内に当社に納入してペースト状に加工し、当社がリスクを負って設備投資をしたCAS冷凍システムによって急速冷凍することで、鮮度を落とさずに長期保存することに成功している。また、美味しさをアピールするだけではなく、買い取った「超特選栗」を「超特選“恵那”栗」と名付け、地域素材としてのストーリー性を前面に出すことで「地域のブランド化」に取組んでいる。
「超特選恵那栗」を使用した高級菓子
「地域のブランド化」の横展開
当社の取り組みは恵那・中津川地域の「産地のブランド化」だけにとどまらず、他の地域にも広がり始めている。「超特選恵那栗」は“恵那”と入っているように、恵那・中津川地域で生産した栗でなければならない。しかし、「超特選恵那栗」の成功事例を目指して、他の産地でも「低樹高・超低樹高栽培」の取り組みが拡がっており、その一つが長野県の飯島町である。飯島町で生産された栗は「信州伊那栗」と名付け、さらに、地産地消という視点から、岐阜県が本拠地である当社としてではなく、(株)信州里の菓工房を設立することで「地域のブランド化」に取組んでいる。「地域のブランド化」の横展開が拡がることによって、産地の振興にも繋がり、その結果、生産者の所得の向上・安定化に繋がっているのである。
「信州伊那栗」のロゴマークと商品
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