昨今、日本産ワインがブームになっている。日本ワインと言うと、山梨県を中心とした甲州ぶどうから醸造したワインをイメージしている人も多いのではないか。その一方で、大阪府は元々デラウェアの産地であり、大阪府柏原市にワイン作りを始めてから100年以上続いているカタシモワインフード株式会社がある。今回はカタシモワインフード株式会社の6次産業化のポイントについて解説する。
技術革新を生み出した「デラウェア」へのこだわり
デラウェアは大阪府内のぶどう栽培420haの約80%を占めていたが、ぶどう狩りがサンシャインマスカット等に移る中で衰退していき、ついにデラウェアは「くず葡萄」とまで呼ばれるようになった。当社はワインも製造していたが、デラウェアはワインに不向きと言われていた。しかし、あきらめることなく、デラウェアで美味しいワインを作ろうと10数年にわたり蒸留装置を徹底的に研究・自社開発した結果、ブドウの皮を発酵させて蒸留した「グラッパ」がモンドセレクション銅賞や農林水産大臣賞を受賞するようになった。また、20年以上の歳月を費やして開発したスパークリングワイン「たこシャン」は大阪ならではの「たこ焼きに合う」をコンセプトに大ヒットした。まさにデラウェアにこだわり続けたからこその結果である。
技術革新により生み出したグラッパ(左)とたこシャン(右)
ボランティアを巻き込んだストーリー戦略
当社は1914年にワイン作りを開始した100年以上続く西日本最古のワイナリーであり、当社のテイスティングコーナーは登録有形文化財にも指定されている。「100年以上続く西日本最古のワイナリーと次の100年に繋げ、地域の伝統や文化を受け継いで活用しながら、地域が生き残れることを目指す」を理念として、地域の耕作放棄地を購入したり、借り受けたりしているが、昨今の少子高齢化と担い手不足によって、生産人員が足りない状態だった。そこで、ワイナリーに訪れたお客様に対し、当社の歴史や大阪の特産品であるデラウェアを守ろうと訴えたところ、同調するボランティアが集まり始めた。今では「大阪の宝であるワインを後世に繋げよう!」と約50企業、約460名のボランティアがブドウ栽培にも参加しており、「デラウェア」を軸としたストーリー戦略を構築している。
登録有形文化財のテイスティングコーナー(左)とボランティア農場(右)
連携によるマーケットの拡大と日本ワイン全体の底上げ
当社は100年以上かけてブランド構築をしてきた。しかし、大阪にはまだ300ha以上のデラウェア産地があるが、どの生産者も経営も苦しく後継者がいないのが実情である。そこでまず大阪府内6つのワイナリーで大阪ワイナリー協会を設立し、「大阪ワイン」ブランドの全国への発信と、協会会員のスキルアップ、ぶどう生産者のバックアップ体制の構築に取り組んだ。さらに2016年には関西地区13社が集まり関西ワイナリー協会を発足(現在14社)。関西地方に適した新品種の開発や関西ワインの認知度を上げることにより関西のワイナリーの振興を図っている。そうすることで、山梨県の甲州ワインを筆頭に東日本と切磋琢磨することで、日本ワイン全体の底上げに取組もうとしているのである。
関西ワイナリー協会発足会の様子
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