会社を継ぐ以外の人生を歩みたかった後継者が、事業承継後に抱えたモヤモヤを爆発させてしまった事例を紹介し、そうならないために何をしておかなければならなかったのかを解説します。
事業承継の事例
A社の後継者Z氏は40歳。3年前に事業承継し、代表取締役となりました
Z氏は、他にやりたいことがあったのですが、親を喜ばせたいのと、ほかに継ぐ人がいないため、納得して後継者として事業を継いだのでした。
事業承継をするにあたっては、親である先代社長が経営者になるためのレールをしっかりと準備してくれていたため、スムーズに事業承継できたと思いましたが、一方で、どこか漠然とした不安を持っていました。
事業承継をして経営者になると、それまでの環境とは一変しました。経営者としては当たり前のことですが、すべてを自分で決めなければならなく、経営者になって初めて指示されることが全く無くなることに気付いたのです。
経営者になったのはいいけど、どうすればいいのかわからないという状態の中、周囲から期待されつつ、経営者として評価の目を向けられ、八方ふさがりで、心のモヤモヤが大きくなっていきました。
なにもかもがうまく行かず心が壊れそうでしたが、だれにも相談することはできませんでした。親には相談しづらいし、従業員には相談できないし、顧問税理士に相談しても状況をわかってくれませんでした。
そんな状態でも経営しなければならなかったので、なんとなく会社の方針を変えてみたり、人事制度を変えてみたり、投資をしてみたりしましたが、うまく行きませんでした。うまく行かないどころか従業員からの反発が大きくなってしまったのです。
そして、結果として、業績は下がり、負債も返せなくなり、優秀な人材が辞めていき、事業が立ち行かなくなってしまったのです。そして、Z氏は「他にやりたいことがあったのに・・・」と、継いだことを後悔してしまったのです。
解説
この事例は、後継者が受け身で事業承継をした結果、事業が立ち行かなくなり、後継者が人生を後悔してしまった事例です。よく聞く事例ですが、この事例のポイントは、後継者が受け身だったことだけではなく、周りの人間が事業承継や後継者の立場を理解していなかったことにあります。少しでも後継者の立場をわかってくれるブレーン的存在がいれば、状況は違っていたかもしれません。
どうすればよかったのか。ポイントを整理して解説していきます。
1.後継者特有の立場
まず、後継者には、後継者以外は感じることができない特有の複雑な立場があります。
後継者として周囲に認識されているので、”従業員”として見られないですし、まだ事業承継をしていないので”経営者”としても見られない、中途半端な立場です。また、周囲からは、期待をされたり、邪魔もの扱いされたり、いろいろな感情を持って後継者と接してきます。後継者はそれを受け止めながらも、前向きに仕事をしなければなりません。
こういった後継者特有の立場を周囲の方はわからず、後継者は相談もできずモヤモヤが大きくなってしまいます。
2.後継者には後継者の人生がある
後継者の経営者人生は、経営者(親)に与えられた人生となりがちですが、本来は後継者には後継者の人生があり、後継者の人生の選択として事業を継ぐことを選ぶというプロセスが大事です。
与えられた事業承継の中、後継者の特有の立場にいると、後継者は事業承継や経営に対して受け身になりがちです。
3.受け身の経営者は失敗する
そして、親に言われるがまま、受け身の状態で経営者になってしまう失敗する可能性が高くなるのです。
経営をしていくことは、不確実なことの意思決定の連続ですので、受け身の状態で経営にのぞむと、経営者として多くのことを決めることができずに、結果として経営が前に進まずに失敗してしまうのです。
4.後継者が自らの人生を描き、自ら経営する力を身につける
では、この後継者はどうすればよかったのでしょうか?
1 自らの人生をゼロベースで見直す
まずは、事業承継前にいったんゼロベースで自身の人生を見直し、経営者となるための意識・覚悟を芽生えさせます。
2 経営者になるための“心技体”を鍛える
その上で、経営者となっていくための、“心技体”をバランスよく鍛え、自分自身を高めて準備をします。
心:経営者となる覚悟・意識
技:経営者が持つべきビジネス知識
体:経営を推進するための思考・行動力
3 会社の現状を徹底的に把握する。
そして、継ぐべき会社の現状を継ぐ前に徹底的に把握して、自身が経営する会社がどのような状態なのか見つめ直します。その上で、自身が経営するイメージを固めていきます。
4 自らの手で人生と会社を動かしだす。
事業承継をして自身が経営者になる前から、自らの手で、自分自身の経営者人生と会社の成長を動かします。
つまり、後継者が主体的な意識をもって、人生を考え、事業承継し経営を推進し、
そして、周囲は後継者のことを理解してサポートすることで、事業承継後の未来が明るいものになるのです。
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されております。
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