1.「オーガニック」の先駆者、ホールフーズの対応
(上)で記載したような、一般的なスーパーでのオーガニック商品の取り扱いの動きが広まるなか、ホールフーズマーケットと競合他社の差異が縮小し、「オーガニック」を売りとする同社の優位性が低下している。ホールフーズマーケットではこのような状況に対し、「ローフード」の惣菜など、より先鋭的な商品を取り揃えて差別化を図っている。
また、プライベートブランドの「365 Everyday Value」や「Whole Catch」を積極的に導入し、価格の高さを理由として店舗利用を忌避していた顧客の取り込みを図っている。カリフォルニア州では、「365 Everyday Value」の専用店舗も開店したとのことである。
その他、「お得さ」や「便利さ」をアピールして、店舗の日常使いを促す施策も実施している。スマートホン・アプリによるデジタルクーポンや、店頭での紙クーポン配布の他、インスタカート(※1)により買物時間を短縮し、多忙な顧客や若年層の取り込みを図っている。料理教室などのイベント開催、店頭での販売商品を使った健康によい料理レシピ提供なども行っている。
(※1)インスタカート(Instacart https://www.instacart.com/)はスマートホンアプリによる買い物代行サービスであり、アメリカで急成長している
ホールフーズマーケットのオーガニック「ローフード」惣菜
ホールフーズマーケット店頭での「デジタルクーポン」ポスター
ホールフーズマーケット店頭の「インスタカート」サービス・コーナー
2. 米国「オーガニック」トレンドの今後
このように、米国では主要スーパーマーケットが「オーガニック」カテゴリーをめぐって競合することで、店頭における消費者の選択肢がバラエティ豊かなものとなっている。オーガニック商品が定着しづらいと言われる日本から見ると羨ましい限りであるが、米国は遺伝子組み換え作物や農薬分野で世界をリードしている国でもある。消費者の不安や健康志向がこのようなトレンドに結びつき、店頭での拡大を支えている一面もあるだろう。
素性の明らかな「顔」の見える食べ物をおいしく食べたい、という消費者の素朴かつ根源的な願いを大規模小売業のビジネスにつなげ、選べる「楽しさ」として大きく育てつつある米国スーパーマーケットの「オーガニック」トレンド。日本とは、国土の広さや商慣習、消費者の食生活や嗜好性が異なるとは言え、注目に値する動向ではなかろうか。
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