1.水田の土づくりのポイント
土づくりの効果は土が本来もつ養分供給力を高めるだけでなく、水稲の根の活力を高めて養分の吸収力を向上させたり、また急激な環境変化に対する抵抗力を持たせることです。
高品質・良食味米の安定生産のためには、冷害や夏期の異常高温など最近急増する変動気象に対抗する強いイネをつくることが重要で、適量施肥により環境に配慮したイネづくりをするためにも土づくりは有効です。
土づくりは、1回ぐらい怠っても水稲の生育や収量、コメの品質にすぐに影響が表れない反面、何年か経ったあとに影響が出るため水田を元の良い状態に戻すのに時間がかかるといわれており、継続してケアすることが重要です。また水田の状態に合った有機物や土づくり肥料を施用するだけでなくしっかり耕うんすることも必要です。
2.土づくりのための資材
有機物の施用は土づくりの基本です。もっとも手近にある有機物として堆肥がよく施用されます。土壌の3つ性質といわれる化学性(肥料養分やpHなど)、物理性(硬さや水はけ程度など)、生物性(微生物の量など)のいずれにおいても改善させるはたらきがあります。
施用する量は、たとえば植物残渣からつくられる稲わら堆肥(完熟品)であれば、毎年1トン/10aほどが適量ですが、牛ふんや豚ふんなど家畜糞尿が含まれているきゅう肥の場合は、窒素、りん酸、加里などの肥料成分が含まれているため、その分だけ施肥量を少なくするなど、考慮して施用する必要があります。またコンバインで収穫する際に発生する稲わらをすき込んだり、緑肥植物を植えてすき込むなど水稲作付け後に実施して水田を改善することもあります。
水稲では、リン酸資材、ケイ酸資材、塩基(石灰・苦土・加里)資材などが重要な土づくり資材とされています。
りん酸資材はようりんや重焼りん、過石などで、欠乏しやすいりん酸成分の補給のために施用します。収穫後や春の耕起前に全面に散布しますが、特に黒ボク土やそれ近い土壌は多めに施用する必要があります。
ケイ酸資材はケイカルなどケイ酸を含む資材を指し、作物の中でも水稲では特に吸収量が多いため欠かせない資材です。水稲の茎の硬さを保ったり籾殻に多く含まれる成分で、収量増や倒伏軽減に非常に重要です。収穫後に土壌分析をして、秋か春の粗起こし前に必要な量を施用します。
塩基資材は石灰分、苦土分、加里分を含む資材であり、炭カルなどの石灰資材、苦土入り肥料、加里入り肥料を指します。これらの3塩基のバランスが重要であり、一部の成分が過不足になると欠乏や過剰障害が出やすくなります。施用時期の限定はありませんが、毎年土壌分析を実施してチェックします。
3.水田土壌の改善
水稲への肥料成分の供給能力を高めるためには、土の機能アップが必要となります。そのためには、今の状態を詳細にチェックし改善目標値から外れる項目をひとつずつ改善させてバランスの良い水田に変えていきます(別表参照)。
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