先日、アムステルダムで行われたGreenTech 2018 に参加しました。オランダの最新技術を見ることができとても有意義な場になりました。Greentechnの紹介や、参加して感じたオランダと日本の農業の違いについて僕なりの意見を述べていきます。
GreenTech2018とは?
GreenTech2018は、6月12日から14日までの3日間、アムステルダムで行なわれた施設栽培の最新技術の展示会です。LED照明や、環境制御、ハウスや天敵昆虫、肥料や収穫用の車など、477の出展があり、3日間で112カ国から10,465人の来場者があり非常に大規模なものでした。来場者は、オランダ人を除くと、中国人やベルギー人、日本人が多かったようです。
オランダの農業を支える企業たち
このGreenTech2018では、Innovation、Sustainability、Impact、Conceptから成る4つの領域で、優れたサービスや製品を決めるAwardがありました。Awardをとったものを簡単に説明します。Innovation Award は、Visser Horti System社のAutoSTix(https://www.visser.eu/plug-transplanters/autostix/)がえらばれました。これは、高速で苗を植え替えするもので、均一で同じ深さに1時間に10000回植え替えることが出来ます。Sustainability AwardはVan der Ende Groep社のPoseido(https://www.vanderendegroep.nl/en/products/water-treatment/poseidon)というナトリウム抽出機です。塩害を招く様な土壌中に溜まったナトリウムを水の消費を抑えて、他の栄養素を損なうことなく、抽出することができる製品となっています。Impact Award は、PRIVA Horticulture社のPRIVA Academyという世界中の施設栽培の農家を対象にした無料のオンライントレーニングサービスです。これにより、ユーザーは、園芸および屋内の環境で、灌漑、気候、エネルギー、労働および生産プロセスの詳細を知ることができます。Concept Award(https://www.priva.com/us/discover-priva/priva-academy)は、Metazet-FormFlex社のScoutrobot(http://www.metazet.com/)が選出されました。これは、AIを搭載した施設栽培用のロボットで、作物の状態、数、病気などの発達障害の検出や環境状態を検知することができます。これらの賞を獲った企業以外にも、天敵昆虫を扱っているKOPPERT(https://www.koppert.com/)社、オランダのグラスハウスの会社VAN DER HOEVEN(http://www.vanderhoeven.nl/en/)社など、世界最先端と言われているオランダの施設栽培にとって欠かせない企業です。また、欧州の企業で最も研究開発する上位企業25社のうち、オランダの園芸企業であるRIJK ZWAAN社(https://www.rijkzwaan.com/)、Nuhems(http://www.nunhems.com/)、Enza Zaden(http://www.enzazaden.nl/)、KeyGene(http://www.keygene.com/)の4社が、ランクインしています。こういった優れた民間の企業がオランダの農業の基盤となっています。
データをどう活かすか?
また、GreenTechでは、展示だけでなく、オランダで行われている農業の最新技術や考え方がわかる大学の教授や企業の社長や幹部等によるパネルディスカッションやプレゼンもありました。印象に残っているのは、ハウスの環境制御のソフトウェアのサービスを提供しているPRIVA社Andre de Raadt氏の「情報とは、データに意味付けしたもの」という言葉です。PRIVA社の環境制御サービスはオランダの施設栽培には非常に大切な役割を果たしており、これによって、ハウスの内の環境や野菜の生育や発病リスク、水分摂取、労働者の時間当たりの労働率など、農場内のあらゆる情報が可視化され、スマホ一つでどこにいても管理できるようになりました。さらに、得たデータは利用者間で、シェアされ、大量のデータから、得られた数字が、より強固な意味づけがされていきます。
さて、昨今はIoT(Internet of Things)やAIの技術の農業への利用は、日本でも盛り上がってきています。東京大学大学院能楽生命科学研究科付属生態調和能楽機構副機構長の二宮正士教授は、日本初「ロボットAIの凄い未来 2020年激変する激変する国土・GDP・生活(窪田新之介著 講談社+α新書)のなかで、ビックデータを用いた農業では、環境情報と管理情報、生態情報の3つの情報を集めることの大切さを指摘していました。PRIVA社のサービスはこれら3つの要件をきちんとデータとして集め、蓄積したタータを解析し、意味づけすることにより、オランダの農業の生産効率をアップささせています。
注目されるSustainability (持続可能性)
僕が、展示物で目を引いたものは、ココピートです。ココナツの実の皮を加工し発酵したもので、ロックルールに代わるものとして注目されています。現在は、まだオランダの施設栽培では、ロックウールを使用した養液栽培が主流です(僕の研修先もロックウールを使用しています)が、ロックウールは主原料が岩石なので、その処理が問題となってきており、より環境に配慮して、ロックウールからココピートを使用する農家が増えてきているようです。また、ココピートを使うことで有機栽培といえるのも大きな利点です。オランダを含めヨーロッパの農業では、「sustainability(持続可能性)」に注目が集まり、政府も多くの規制をかけています。今回のGreenTechは有機栽培の特設ブースもありました。ヨーロッパの農業では、日本の有機栽培の様に安心や美味しさではなくて、環境への配慮ということで注目度が高まってきている様です。
実際に参加してみて、個人的な感想を述べると、LEDライトを使った製品が多かったことや中国からの出展が多かったことに驚きました。様々な場所で中国の話を聞きますが、農業分野でも中国の勢いを感じました。
少ない面積で、最新技術を積極的に使い、世界で2番目に農作物輸出額をあげているオランダの農業。実際に現地に行くと、評判通り高い技術で効率的に農作物を生産していました。しかし、それは農家一人一人が高い技術を身につけて頑張っている訳ではなく、自分の専門性に特化して、協力し合い、得意分野を活かしてビジネスを行うというものでした。西洋と日本では、気候や地理的条件、政策など違いは多く、他の国で成功した事例が必ずしも自国で成功するとは限りません。しかし、できないところは他人に任せて、自分が得意なところを精一杯頑張りみんなで良くなって行くというオランダ人の農業に対する姿勢は、独立意識が強く、どうしても知識や技術が個人に集約しやすい我々日本人にとって学ぶべきところが大いにあるのではないかと思われます。
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