2016年4月に改正農協法が施行され、農協のあり方が問われている。その中で、本来的な役割を実践している農協の一つが北海道帯広市にある帯広市川西農業協同組合である。北海道というと、土地も広大であり農業界では特別視されがちであるが、彼らは農協として6次産業化を実践することで地域の農業の活性化に取組んでいる。今回は帯広市川西農業協同組合の6次産業化のポイントについて解説する。
近隣の農協との連携による「長いも」の産地形成
1971年、当地域の基幹作物であった小麦、甜菜、馬鈴薯、豆類の価格が低迷する中で、農業経営収支の改善を進めるべく、「長いも」の栽培に取組んだ。また、1985年には、帯広かわにし、めむろ、中札内村の3農協で「十勝川西長いも運営協議会」を結成し、「十勝川西長いも」の統一ブランド化に取組み始めた。その後、あしょろ、浦幌町、新得町、十勝清水町、十勝高島、鹿追町の6農協も加わり、9農協による広域のネットワークを構築することによって、北海道の地理を最大限に活かした産地形成を行っており、2014年の長いもの生産量は20,000tを越えている。また、産地を取りまとめる当農協が、大型選別施設や貯蔵庫を整備することによって安定供給を可能にしている。
9農協が連携することで長いもの一大産地を形成
統一ブランド化の取組による地理的表示保護制度(GI)の取得
今では9農協の連携による長いもの一大産地となっているが、各農協がそれぞれの基準で栽培してしまうと「十勝川西長いも」のブランド価値が毀損する可能性があった。そこで長いもの優良種子の厳格な管理からはじまり、栽培方法を高位平準化することで、トレーサビリティを確保し、品質の統一化にも取組んでいる。また、ブランド保護という視点では、2006年に特許庁の「地域団体商標制度」にて「十勝川西長いも」が認定。さらに、その地域で長年培われた伝統的な生産方法や気候・風土・土壌等が品質に結び付いた産品を知的財産として登録する「地理的表示保護制度(GI)」に2016年1月に認定されている。
「十勝川西長いも」と地理的表示保護制度(GI)
国内外のマーケットニーズに合わせた販売戦略
「十勝川西長いも」は海外へも販路を拡大しており、当農協では1999年から台湾へ輸出を開始している。当時、帯広地域の長芋は豊作であり、需要に対して供給量が大幅に上回ってしまい、特に太物(4Lサイズ以上)は規格外でもあり価格が下落傾向にあった。そこで、国外も含めて販路を模索したところ、台湾では薬膳用としての太物サイズの需要があり、国内よりも高値が付いており、輸出にも取組み始めたのである。台湾を機にアジア地域へ輸出も広がっており、2007年頃から米国への輸出も開始している。このように、国内のみならず海外のマーケットも視野に入れることで、規格外商品への対策も行えるようになり販路が拡大し、現在では年間2,000〜3,000t の輸出を行っている。
輸出向け太物サイズの「十勝帯広長いも」
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