訪日ムスリムへの対応として、上智大学がムスリム学生のためにハラル食の提供を開始したり、カラオケ本舗まねきねこがハラル食を提供するカラオケ店を始めたり、ホテルスプリングス幕張がハラル対応に取組む等、新たな動きが見られる。ムスリムマーケット向けのビジネスはどこまで拡大するのか。
訪日外国人の受入により経済成長を目指す日本
日本政府は2016年3月に「明日の日本を支える観光ビジョン」において2020年に4,000万人、2030年に6,000万人の目標に掲げている。2015年の訪日外国人数は前年比47.1%増の1,973万7千人になり、過去最高であった2014年の1,341万3千人を600万人余り上回った。そして2016年においては、9月末時点で訪日外客数はすでに約1,800万人となっており、過去最高を更新中である。
※訪日外国人旅行者数の推移
増加し続ける訪日ムスリム
成長が著しい東南アジアにおいてムスリムの人口は7億5,000万人に上っている。日本政府観光局(JNTO)の調査によると、マレーシアからの訪日外国人観光客数は、2015年には305,500人と2014年の249,521人から22.4%と大幅に増加し過去最高を更新した。またインドネシアからの訪日外国人観光客数は、2015年には205,100人と、2014年の158,739人を29.2%上回り、こちらも過去最高を更新している。両国ともビザの免除による影響が大きく、今後さらなる増加が見込まれる。
マレーシア・インドネシアの訪日客数の推移
訪日ムスリムの最大の楽しみであり悩みでもあるのが「日本食」
ムスリムの訪日観光客の増加が見込まれる一方で、ムスリムにとって悩みの種となっているのが「食事」である。ムスリムは、宗派によっては豚肉のみならず、豚から派生した商品も食することが禁じられており、また、アルコールも禁じられている。日本に旅行に訪れたムスリムは「日本食」を食べるのが目的の1つにも関わらず、原料が何であるのかわからないが故に安心して食べられるものが極端に少ないのである。
大切なのは受入環境を整えること
大切なことはイスラム教について理解し、「トレーサビリティ」をしっかりと証明することである。そして何より、「ハラル認証」ありきではなく、「美味しい」ことが大前提であり、そうでなければいくら「ハラル」をアピールしようがムスリムは来客しない。つまり、ムスリムが求めるものを美味しくかつ安心して食べることができる環境を整えることが、訪日ムスリムへのビジネスチャンスに繋がるのではないだろうか。
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