先回のコラムでは、「個人情報とは何か」について解説しました。今回は、「個人情報」から派生する概念として、「個人データ」、「保有個人データ」という概念を紹介します。
1 個人データ、保有個人データとは
(1) 個人データ
「個人データ」とは、個人情報のデータベースに入れられた個人情報のことです(個人情報保護法2条6項参照)。
個人情報のデータベースについては、初回のコラムでも触れましたね。ここでいう「データベース」とは、個人情報を簡単に検索できるようにまとめたもののことで、具体的には、五十音順に見出しラベル付きで整理された名刺の束、個人情報がまとめられたパソコンの表(名簿)、個人情報が登録された携帯電話の電話帳などのことです。もっとも、市販の電話帳、住宅地図、職員録、カーナビなどは、この「データベース」には含まれないとされています(以上について、個人情報保護法2条4項、個人情報保護法施行令3条、個人情報保護法ガイドライン(通則編)16-17頁)。
個人情報保護法は、この個人情報のデータベースを事業のために使う事業者(「個人情報取扱事業者」といいます。個人情報保護法2条5項参照)に適用されます。
(2) 保有個人データ
「保有個人データ」とは、6か月以内に消す予定のない個人データのことをいいます。言い換えれば、6か月を超えて持っている予定の個人データのことです。
「保有個人データ」について、法令(個人情報保護法2条7項、個人情報保護法施行令4条、5条)では、もっと細かく定義がされていて、しかも例外などもあるのですが、法律どおりに説明すると、とても細かく複雑になってしまいますので、ひとまず、6か月以内に消す予定のない個人データが「保有個人データ」だと理解してください。
2 個人情報、個人データ、保有個人データの関係
以上に述べたように、「個人データ」とは、個人情報のデータベースに入れられた個人情報のことであり、「保有個人データ」とは、6か月以内に消す予定のない個人データのことですが、これらのことから、「個人データ」は「個人情報」の一部であり、「保有個人データ」とは「個人データ」の一部であるということがわかると思います。図にすると、下の図のような関係になります。
「個人情報」、「個人データ」、「保有個人データ」は、結局のところ、個人情報がどのような状態・性質であるかによって分かれている概念です。個人情報をデータベース化したら個人データになりますし、それが6か月以内に消す予定のないものであれば保有個人データになります。
これらの区別をなぜ理解する必要があるのかというと、個人情報、個人データ、保有個人データのどれを取り扱うのかによって、個人情報取扱事業者が守らなければならない義務が変わってくるからです。
個人情報が個人データになるということは、個人情報が検索しやすくなって利用しやすくなるということですし、個人データが保有個人データになるということは、ある程度長く個人データを持ち続けて利用することが見込まれるということですが、いずれもその反面、個人の権利や利益を侵害するおそれも大きくなると考えられます。そのため、個人情報保護法では、個人情報、個人データ、保有個人データと状態・性質が変わるに従って、個人情報取扱事業者に課せられる義務が重くなっていきます。
次回以降のコラムでは、個人情報取扱事業者に対して具体的にどのような義務が課せられるのかについて解説します。
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されております。
公開日