株式会社ハレックスの酒井紀子です。今回のテーマは、4月・5月に農業関係の方に最も注意をしていただきたい「遅霜」についてです。
「八十八夜の別れ霜」。
立春から数えて88日目を八十八夜といい(5月2日頃)、この頃ようやく霜の季節が終わりを告げます。とはいえ、この時期は北日本と西日本の気温差が大きい時期で、日本全国一律に霜の季節が終了するわけではありません。
最後に霜がおりた日を終霜日(しゅうそうび)といいます。一般的に沿岸部や南部では早く、内陸部や北部で遅い傾向があります。平年の終霜日をいくつか見てみると
福岡 3月10日
広島 3月13日
静岡 3月23日
仙台 4月9日
長野 4月21日
札幌 4月24日
盛岡 5月3日
帯広 5月15日
となっており、福岡と帯広では2か月も幅があることがわかりますね。もちろん、これは平年の値ですので、これよりもっと早い年も、遅い年もあります。
霜のおりやすい気象条件は
- 移動性高気圧に覆われる
- 上空に寒気が流れ込む
- 放射冷却がおきる
簡単にいうと、晴れて気温が低く、風が弱いときです。
ご存じのとおり夜間に気温は下がり、朝方に最低気温がでることが多いです。そのため、夜間に上記の条件が揃うと霜がおりやすくなります。
放射冷却がどのようにして起こるのか。
- 夜間は太陽からの熱が無くなる
⇒地面付近が冷える - 晴れていると雲が無いため熱がどんどん空へ逃げていく
(雲があると熱が逃げにくい)
⇒気温が下がる - 風が弱いと冷えた空気がまわりの空気と混ざりにくい
⇒周囲の暖かい空気と混ざらないからどんどん冷えていく
放射冷却が起きやすい気圧配置があります。放射冷却が強く効いたときの天気図をいくつか見てみましょう。
放射冷却が起きやすい気圧配置①
西日本から東日本にかけて移動性高気圧に覆われています。西日本から東日本にかけては晴れたところが多くなりました。上空にはこの時期としては強い寒気が入っていたこともあり、北日本〜東日本にかけて放射冷却が起こり朝の冷え込みが強まりました。
最低気温の低いほうから
- 菅平(長野) 氷点下1.9度
- 六厩(岐阜) 氷点下1.6度
- 野辺山(長野) 氷点下1.4度
内陸部を中心に6月としては記録的な冷え込みとなったのです。
放射冷却が起きやすい気圧配置②
寒気を伴った動きの遅い低気圧が北海道の東に抜けつつあります。西から高気圧に覆われてきました。寒気が残ったうえ、晴れて放射冷却が起こったことで東北から西日本にかけての多くで氷点下の冷え込みとなりました。アメダスで氷点下は全国172地点。5度未満は500地点を超えました。
最低気温の低いほうから
- 三石(日高) 氷点下4.8度
- 奈川(長野) 氷点下4.5度
- 開田高原(長野) 氷点下4.5度
5月としては記録的な冷え込みとなったところが多くなりました。
2013年度の4月以降の低温(主に霜)による農業関係の被害額は、全国でなんと69億円にも上っています。(農水省調べ)
二つの天気図(放射冷却が起きやすい気圧配置①・②)をよく見てください。
どちらも本州付近に中心を持つ高気圧に広く覆われていることがわかります。高気圧の中心が北に偏ると、本州付近には湿った東風が入りやすくなるため、雲が広がりやすくなります。しかし、本州付近に高気圧の中心があると晴れるところが多くなります。
このパターンを覚えておくといいと思います。
また、わかりやすい目安としては遅霜、早霜の時期に霜の恐れがあるときは、各気象台から「霜注意報」が発表されます。そのほか、最低気温がおおむね2度〜3度を下回るときは霜のおりる可能性が高まります。
大切な作物を霜の害から守るための参考になれば幸いです。
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
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