沖縄県の読谷村にある株式会社御菓子御殿は読谷村の特産品である「紅いも」を使用したお菓子を主力商品としており、沖縄土産の定番となっている「紅いもタルト」の開発企業である。また、沖縄県の歴史遺産である首里城をモチーフにした施設「御菓子御殿」でも有名である。今回は株式会社御菓子御殿の6次産業化のポイントについて解説する。
沖縄の定番土産に成長した「元祖紅いもタルト」
当社は1986年に読谷村商工会からの依頼で「村おこし事業」に参加し、地元の特産物である紅いもを使用した「元祖紅いもタルト」を開発した。開発当時、紅いもは読谷村の特産品ではあったものの、生産者は自家消費程度にしか栽培しておらず、生産者を1軒1軒訪問して何とか約10戸の生産者との取引が始まった。また、今でこそ御菓子御殿のイメージカラーとなっている紫であるが、「元祖紅いもタルト」販売当初は、「芋にまで着色料を使用するのか」と言われ、いくら説明しても紅いもの素材の色だと信じてもらえず苦労の連続であった。しかし、紅いもの味を最大限生かすために「無添加・無着色」にこだわり続けた結果、「美味しい」と口コミで評判が広がり、今では「元祖紅いもタルト」だけで1年間に3,250万個、1日あたり平均10万個を製造している。
「元祖紅いもタルト」(左)と新商品の「いもいもタルト(右)」
生産者と連携した一気通貫型のビジネスモデル
「元祖紅いもタルト」を開発した当初は10戸だった生産農家も、今では140戸以上(生産グループも含む)にまで拡大しており、紅いもの消費量は年間1,200tに及んでいる。生産者が栽培した紅いもは、グループ会社である(株)御菓子御殿フーズにて紅いもペーストに一次加工し、「御菓子御殿」9店舗、洋菓子専門店「菓子工房 樹々(きき)」2店舗の計11店舗でお菓子に加工して販売している。生産農家からは紅いもを市場価格よりも高い価格(150円/kg)で全量を買取ることで、生産者の所得向上にも貢献している。このように当社の取り組みは第2次産業が中心となり、「紅いも」を主軸として「一気通貫型のビジネスモデル」を構築することで、沖縄県内の生産者を巻き込んでいる6次産業化モデルである。
紅いも(左)と「元祖紅いもタルト」の製造(右)
「6次産業化+α」による新たな付加価値の創出
2001年にオープンした「御菓子御殿 恩納店」では、当時は珍しかった工場見学やお菓子作り体験ができ、修学旅行や観光客等の団体客が観光バスで訪れるようになった。また、「御菓子御殿 名護店」に隣接する「やんばる亜熱帯の森」には、約1億年前にも生息されていたとされるヒカゲヘゴの原生林が広がっており、その自然を活用して恐竜時代を楽しめる「DINO恐竜PARK」を2016年にオープンした。パーク内には約80体の太古の恐竜が待ち構えており、沖縄北部の新たな観光名所として人気を集めている。地域資源の活用という視点で「6次産業化」の一つの形である。このように、観光や体験を組み合わせた「6次産業化+α」によって新しい付加価値を創出し続けている。
お菓子作り体験(左)と「DINO恐竜PARK」(右)
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