和歌山県有田市は紀伊半島の西側に位置しており、南向き・海沿い・急斜面という地形により、日照量の多さと急斜面による水捌けの良さによって、高品質なみかんが栽培でき、「有田みかん」としても有名である。株式会社早和果樹園はその有田みかんの生産、加工、販売の6次産業化に取組んでいる。今回は(株)早和果樹園の6次産業化の成功のポイントにについて解説する。
「味・品質」へのこだわり
当社では、高品質なみかんを安定して栽培するために様々な取組みを行っている。一つ目は「マルドリ方式」によるみかん栽培である。正式には「周年マルチ点滴潅水同時施肥法」と呼ばれ、マルチ栽培とドリップ潅水を組み合わせたものであり、樹体の水分と栄養のバランスを自動コントロールすることにより、みかん本来の味を引き出したのが特徴である。もう一つは、ICT農業システムの導入である。富士通(株)と共同でICTを活用した高品質みかん栽培の実証実験を実施しており、センサーで収集した栽培データや、従業員の作業記録をクラウドで管理・共有しながら、適切な時期に適切な作業を実施する事を狙いとしたシステムを構築している。どちらも気候の影響を最小限にとどめ、「できた『みかん』ではなく、作った『みかん』」を目指すが故の取組みである。
「マルドリ方式と農業クラウド」
「有田みかん」に付加価値を!
当社は、原料をすでに美味しいみかんの特産品として知名度のある「有田みかん」に特化したうえで、さらに付加価値を高めるために加工しており、搾汁ではみかんの皮を剥き、薄皮ごと裏ごしをするように搾る「チョッパー・パルパー方式」を導入している。数ある加工商品の代表商品が糖度12度以上のみかんを厳選して搾った「味一しぼり」であり、2016年12月には「骨を健康に保つ効果」が期待される成分、β-クリプトキサンチンが多く含まれるとして消費者庁の機能性表示食品に受理されている。また、加工品の中でも特徴的な商品が「味一ジュレてまりIN」である。当社のみかん果汁を91%使用したゼリーの中に、3Sサイズのみかんがまるごと1個入ったゼリーであり、これが女性に大ヒットしており、ある女性は「自分へのご褒美として『味一ジュレてまりIN』」を購入すると言っていた。まさに、みかんの特性やサイズを知っている生産者ならではの商品開発であると言える。
有田みかんを活かした加工品
社員全員で試飲・試食販売
当社の最大の強みは、その販売体制と言っても過言ではない。一般的に言えば、生産は「生産部」、販売は「販売部」と組織体制が分かれていることが多い。しかし、当社は全国の百貨店や高級スーパー、商談会、観光土産店等の催事に社員全員が交代で店頭に立っている。一見すると効率が悪いように見えるが、当社では社員全員が「どのように販売すればお客様が興味を持ってくれるのか」を話し合い、みかんの美味しさを最大限に活かしたセールストークを磨き上げることによって、社員が自信を持ってお客様に直接説明できるようになっている。その結果、年間試飲カップ65万個、つまり65万人のお客様にアプローチしており、今では日本国内だけではなく、香港、シンガポール、オーストラリア、欧州、米国へも販路を拡大している。
積極的な販路開拓の風景
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されております。
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