こんにちは!フィデスの久保京子です。
私は消費生活アドバイザーとして、消費者目線で考えるこれからの食ビジネスのヒントをお届けします。
平成29年4月より検討が始まった遺伝子組換え表示制度改正(※1)ですが、その検討に向けた消費者調査(※2)より、前回は遺伝子組換え食品に対する意識を取り上げました。
その結果、遺伝子組換え食品に対して消費者が不安を感じ、購入を避ける傾向があることがデータで明らかとなりました。
制度としての不安要素には、以下のようなものがあります。
- 表示義務の対象は大豆、トウモロコシ、菜種など8農作物と、豆腐、納豆、コーンスナック菓子など33の加工食品群に限られている
- DNA等が検出できない品目を表示不要としている
- 「遺伝子組換え農産物」の混入は原材料の重量の5%以下まで許容されている
※ EUでは、食品(加工食品においては、個々の原材料)について、遺伝子組換え農産物を0.9%以上含むものに表示を義務付け。
今回は、同調査より、上記を中心とした具体的な遺伝子組換え表示制度の内容についての消費者の理解度や受容度について確認します。
《調査のポイント》
- 「表示義務対象品目」及び「DNA等が検出できない品目は表示不要」に関する認知度は3割
- 「DNA等が検出できない品目」「重量に占める割合が低い原材料」についても、「表示すべき」とする意見は3割、「分からない」が35%〜40%
- 「遺伝子組換えでない」旨の表示に関する認知度は6割、 「不分別」である旨の表示に関する認知度は3割
- 意図せざる混入率5%を認めることについての認知度は3割弱、「引き下げるべき」が17%
「表示義務対象品目」及び「DNA等が検出できない品目を表示不要としていること」に関する認知度は、「半分程度は知っている」、「聞いたことがある」を含めても3割にとどまり、遺伝子組換え表示対象となる食品についての理解は未だ浸透していないことが読み取れます。
現制度では表示不要となっている、DNA等が検出できない品目や重量に占める割合が低い原材料についても、表示の扱いについては、「表示すべき」とする意見が3割となっている一方で、「適切」とする意見も15%程度あり、「分からない」が35%〜40%となっています。
表示義務対象品目の認識度
遺伝子組換えに関する表示が義務となる農産物及び加工食品を「知っている」は(2.4%)、「全ては知らないが、ほとんど知っている」は(6.7%)、「半分程度は知っている」は(21.1%)、合計割合は(30.2%)であった。
DNA等が検出できない品目の表示不要の認知度・妥当性
加工後には組み換えられたDNA 及びそれにより生じたタンパク質が検出できない加工食品は、表示の確認ができないため、表示義務の対象となっていないことを「知っている」は(5.4%)、「聞いたことがある」は(23.2%)、合計割合は(28.6%)であった。
DNA等が検出できない品目について、原材料に「遺伝子組換え食品」を使用していても表示が不要であることについて、「組み換えられた DNA 等が残らない場合、表示は必要ない」は(12.7%)、「根拠を科学的に示すことができない場合は仕方がない」は(19.4%)、「遺伝子組換え食品の使用を分かるように表示してほしい」は(27.2%)、「分からない」は(40.5%)となった。
遺伝子組換え表示制度のこれから(2)-2 〜不十分な制度理解、消費者ニーズに応じた商品選択のための情報提供を〜に続きます。
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