こんにちは、(株)アグリゲートの長谷川です。
アグリゲートは、都心に9店舗を展開する八百屋「旬八青果店」で小売販売を行っています。自分たちが事業を行う中で、失敗と成功を繰り返したことで得た、「流通」、「販売」に関わる情報をお届けし、直接農業を営む方に活かしてもらえると幸いです。
前回、「東京で販路を拡大する〜短期出店と商談会〜」をお伝えしましたが、今回は、「東京で販路を拡大する〜市場への出荷〜」についてお伝えします。
東京の市場とは
はじめに、「東京の市場への出荷」について話します。ご存知の方も多いかもしれませんが、この機会に市場の仕組みなどを、改めて確認したいと思います。
東京には、11の中央卸売市場と12の地方卸売市場があります。(平成28年9月1日現在)中央卸売市場とは、地方公共団体が農林水産大臣の認可を受けて開設した市場です。一方、民間事業者でも開設できるのが、地方卸売市場です。地方卸売市場は青果、水産、花きの部門に分かれ、専門性の高さが特長となっています。
このように、卸売市場ごとに性格が異なり、提供される「物」や「情報」が異なるため、まずはそれぞれの市場の規模や特色を把握することが重要です。その上で、自社の商品をどこが評価してくれるのか、収穫量などに柔軟に対応してくれるのか、その市場に紐づくお客様はどのような層が多いのか、などをふまえて出荷先を検討します。
※参考 http://www.shijou.metro.tokyo.jp/info/tihou/
青果物が市場から消費者に届くまで
次に、出荷した商品が市場を通して消費者に届くまでの流れを見てみます。
生産者から市場への出荷については、全農・農協さんを通しての出荷、個人での出荷、出荷組合や団体などの出荷の大きく3つの方法があります。(出荷方法は地域によって異なる可能性があります)
出荷された青果は、卸売市場に届くと、セリにかけられて値付けが始まります。そして、卸売業者、仲卸業者、売買参加者、買い出し人などを通して小売業者や消費者に届きます。
- 卸売業者は、市場内の卸売場で、セリや、売買の当事者同士で行う相対取引などを行って仲卸業者や売買参加者に販売します。
- 仲卸業者は、卸売業者から買った品物を、市場内にある仲卸店舗で、小売業者や飲食店など市場に買出しにくる人たちに販売します。
- 売買参加者は、仲卸業者と同様に卸売業者から直接セリや相対取引によって品物を買う業者で、小売業者や食品加工業者、地方卸売市場業者などです。
- 買い出し人は、街の自分の店で扱う品物を仲卸業者から仕入れて、小売店や飲食店などで消費者に提供する人のことです。
これらの人を介して、消費者に青果物は届いていきます。
※参考:http://www.shijou.metro.tokyo.jp/about/people/
市場に出荷することの利点と課題
市場の仕組みに続いて、市場に出荷することの利点と課題も確認しておきます。
利点は、市場の流通は簡素化されていて、供給が安定していることです。生産者にとっては出荷先が確保され、消費者にとっては、流通拠点として、ほしい商品が手に入りやすいということがあげられます。また、昔からある仕入れ場所という安心感もあります。
一方で課題としては、大規模な市場では物が一極集中する傾向があり、市場ごとに商品と価格にばらつきが出ることもあります。
大手スーパーなど、仕入量が多い主要取引先の影響を受けやすく、必要な青果が天候などによって不作になった場合など、一部相場が乱れることもあります。
また、仲卸業者は、多くの商品を扱うため、生産者の商品へのこだわりを必ずしもすべて把握できているとは限りません。市場への出荷と並行して、産地直送やイベントなどでの対面販売で、消費者に直接届ける方法などもあわせて検討していきましょう。
市場に出荷する利点と課題なども把握することが、リスクの少ない出荷につながります。
販路の考え方として
ここまで市場の利点と課題について考えてきましたが、弊社では、「市場」「自社農場」「産地直送」という3つのルートから日々仕入れを行っています。
仕入れが可能な商品の量や種類、決済方法などについても、全体を俯瞰で捉えてバランスを調整していくことで、高い商品力を維持した店舗運営を可能にしています。
もちろん、自社にあった販路を見つけることができれば、そこに注力して拡大していくことが望ましいですが、「市場」に加え複数の販路を検討することも、安定した利益を確保することにつながっていきます。
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されております。
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