山口県の瀬戸内海に浮かんでいる周防大島(屋代島)にお洒落なカフェを併設しているジャム屋がある。株式会社瀬戸内ジャムズガーデンは、地域の農産物を使用した高付加価値のジャムを製造している。今回は株式会社瀬戸内ジャムズガーデンの6次産業化のポイントについて解説する。
地域の生産者との連携
当社は2003年に周防大島にてジャム専門店をオープンし、2007年に農業部門を設立した。社長の松嶋匡史は奥様が周防大島出身という縁もあり、Iターンで周防大島へ移住し、ジャムを製造する一方で農業へも参入した。農業参入にあたり、地域で生産されているものは地域生産者(58戸)から仕入れ、地域内にないものを自社で栽培するなどきちんと役割分担をすることで、地域の農業との共生を図っている。また、6次産業化で一般的に言われている規格外品をジャムに加工するだけではなく、「ジャム加工専用栽培」というジャム加工専用に最適な果実栽培をしてもらうことで市場価格よりも高く買い取ることで地元生産者の所得の向上にも貢献している。
地域の生産者との役割分担
「島でしかできないジャム」によるジャム作りの物語を楽しんでもらう
当社は小規模であることを逆手にとって、「定番商品は作らない」ジャム屋として大手企業とは一線を画している。地元の生産者から栽培した無農薬もしくは減農薬で栽培された農産物をあえて糖度を40度に抑え、その特徴を最大限に活かすことで、1本700〜1,000円にまで付加価値を高めて、当社のオリジナルジャムとして販売している。年間170種類以上、季節に合わせて常時20〜40種類を揃え、年間約15万本製造し、年間を通したリピート客を獲得している。
また、「ジャム作りの物語を楽しんでもらう!」ことをコンセプトに、パンにジャムを塗ってから焼く「焼きジャム」を使用した「ジャムピザ」、「カクテルジャム」をソーダで割る「マーマレードソーダ」を始め、島の事業者とコラボレーションをした「ジャム大福」や「豆腐プリンのジャムソースがけ」等を創作し、併設された瀬戸内海を一望できるカフェでそうした新しいジャムの食べ方を楽しんでもらうことで、来店者の消費マインドをアップさせる工夫をしている。
オリジナルジャム(左)とジャムピザ(右)
人と人のつながりが地域資源
地方にいくとよく「うちには自慢できるような地域資源はない」という言葉を耳にするが、当社は人と人のつながりを地域資源と考えており、地域を巻き込む様々なイベントを開催している。一例を上げると、年に1度、当社の取引先であるパン屋を周防大島に招聘して「瀬戸内パンフェスタ」を開催している。当社のオリジナルジャムを扱うこだわりのパン屋が一堂に周防大島に集まることで、島内のみならず島外からも多くの消費者がイベントに参加し、生産者、パン屋、消費者の交流の場となっている。また、Iターン経験者である松嶋社長自ら周防大島へのUIターンを応援する会「島くらす」を立ち上げ、移住者の起業や定住に向けた地域との融和を支援する取組みを推進している。その結果、UIターン者の増加によって社会減が少ない島となっており、農業の活性化のみならず周防大島全体の活性化に貢献している。
年に1度開催される瀬戸内パンフェスタ
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