高知県東部に馬路村という人口約900人の村がある。馬路村は1,000m級の山々に囲まれ、面積の96%が森林に覆われた中山間に位置しており、その険しさから「馬でしかいくことのできない路(みち)の村」が村の由来であると一説では言われている。しかし、その小さな村が農協による6次産業化によって全国的にも有名になっている。今回は馬路村農業協同組合の6次産業化のポイントについて解説する。
マーケットを明確にした商品開発
馬路村の名前が一躍有名になったのは「ごっくん馬路村」というゆずドリンクである。馬路村の特産品である「ゆず」は地元の生産者によって無農薬で栽培されている。その「有機栽培のゆず」と「はちみつ」と「馬路村の水」のみを使用し、自分の子供に飲ませても安心な飲み物として「ごっくん馬路村」は開発された。また、ドリンクの容器についても、子供が飲みやすいように飲み口を大きくし、またラベルのデザインも子供受けをするようなデザインにする等の工夫を凝らしている。そして注目すべきは「ネーミング」である。馬路村農協では、ドリンク以外にも詰め合わせまで含めて100種類以上の商品を開発しているが、「ゆず」の商品を販売するのではなく、「馬路村」という名前を前面に出して地域をブランド化している。
ごっくん馬路村(左)とゆず商品の詰め合わせ(右)
一気通貫型のビジネスモデルを構築
1979年にゆずが大豊作となった際に、値崩れを起こしてゆずが大量に余ってしまったことから、生産者を救うべく農協自身が加工事業に取組み始めた。今では、生産者から全量買い取ったゆずを集荷してから加工・販売までの一貫体制を構築している。生産コストを抑えるために自社の製造工場を建設しており、製造工場だけでなく、受注窓口であるオペレーター室を設置することで注文の受注体制を整え、デザイン室や研究所、配送センター等も同施設内に設置している。そうすることで、商品の開発・検査、そして商品の受注から発送までを一か所で行う等、総合的にプランニングを行うことでスピード感を上げている。また、「ゆずの森」加工場では、視察や見学に訪れた方がゆっくり見学できるように工夫された造りとなっており、見学後には「ごっくん馬路村」をサービスする等、おもてなしをすることで満足度を高めている。
「ゆずの森」加工場の外観(左)と作業風景(右)
ゆずの素材全ての活用に向けた事業の多角化
「ゆず」の新たな用途開発にも取組んでいる。馬路村農協ではゆずの皮や果汁はすでに加工品として活用していたが、種に関しては活用方法が見つからず悩んでいた。そこで、ゆずの種に関しては高知大学医学部・農学部と共同研究し、シードオイルに関してはアロマテラピー協会と連携しながら10年以上の歳月をかけて研究を行い、ゆずの特徴的な香りによるリラックス効果やレモンの約2倍含まれているビタミンCによって皮膚にうるおいを与えたり、水分、脂分を補い保つことが判明した。その結果、農協では初めてとなる化粧品事業を展開し、2010年からは完成した化粧品工場にて、研究から製造、梱包まで一貫して行っている。
馬路村農協が開発した化粧品
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