G7農相会合のテーマは食料安全保障
今月、新潟市で開かれるG7農業大臣会合では、温暖化などに対する食料安全保障の議論が行われる。このところの世界的な豊作もあって、国際的な穀物価格は落ち着いてはいるものの、人口増加など食料を巡る状況は変わってはいない。では、日本の食料供給力はどの程度なのか。
去年発表された農林業センサスによると、5ヘクタール以上の耕作面積をもつ大規模農家は5年前に比べ94%増加するなど、経営の大型化が進む一方で、農業就業人口は50万人減少して209万人。そのうち若い50才未満の農家の数は32万人と、5年前に比べ7万人減少した。減少のスピードは急激で、これで1億2000万人の人口が養えるか不安になるほどだ。
低い日本の農業生産性
もちろん農家数が減っても、大規模化した農業法人が生産性を上げて、生産量を維持できれば問題はない。ところが日本の農業生産性は、80年代を境に停滞したままだ。
例えば、コメ。食糧不足だった1950年以降、生産性を伸ばしてきたが、70年代からは10アール当たり530キログラムと、生産性は韓国以下だ。また、小麦や大豆も、この30年間生産性は止まったままだ。
ところが海外ではこの間に30から200%近い収量の増加を達成している。例えば小麦では、同じ工業国のドイツでさえ1980年からの30年間で収量を1.5倍に伸ばし、日本とは差を大きく広げている。穀物だけでなくトマトなどの園芸作物も、ヨーロッパの生産性は日本の5倍以上だ。
コメに関しては、日本では量よりも質を重視してきた面はある。しかし80年代までに、田植機やコンバインなど機械化が一巡した後の技術的停滞や、品種開発の遅れ、作るだけで補助金を払ってきた農業支援のあり方が、生産性の著しい停滞を招いたと専門家は指摘する。この30年間に日本の生産技術は海外に比べ、大きく出遅れているのが実態だ。
大規模農家重視の政策でいいのか
もちろん消費者への食料供給は国内生産だけで無く、安定した輸入、そして備蓄を組み合わせて担われるべきものだ。しかし、農業大臣会合で議題に上がるように、世界の食料生産は不安定さを抱えている。
大規模で優秀な農家が増えるのは好ましい。しかし日本国内での農家人口の減少や農地面積の縮小、それに生産性の低迷を考えれば、私たちの食生活は、決して安心できる状況ではない。全体としての底上げを行わないと、消費者の不安は増すばかりである。皆さんはこれをどう考えますか?
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