今回は、突如後継者が事業承継をしなければならなくなり、準備ができていなかったがために事業が立ち行かなくなってしまった事例を紹介します。
その会社の社長は、年齢は60歳ですが、35歳で創業してから25年間いわゆるワンマン経営をしてきました。
その社長がある日突然病気にかかり倒れたことをきっかけに、従業員としてその会社で働く息子が次期社長として指名され、半年後に代表を交代することになったのです。
息子はいつか継ぐのだろうなと思っていましたが、社長が言ってくれないからと、なんとなく受け継ぐのを待っていたのでした。
そして、半年後に後継者である息子は代表取締役になったのですが、そこから苦労が始まり、結果として数年後に事業が立ち行かなくなってしまったのです。
よくある事業承継の話ですが、なぜ、こんなことになってしまったのでしょうか?
いくつもの理由が重なった結果でもありますが、事業承継を考えるときに一番初めにやらなければならなかったことをこの会社はやっていませんでした。
それは、いつ事業承継をするのか具体的な年月を決めて、そのための準備を始めていなかった、ということです。
いつ何が起こるかわからないリスクがある
60歳代の経営者であれば、事業承継は「いずれ」と悠長なことは言っていられません。それは、いつ何が起きるかわからないからです。みなさんが50歳代であるならば、まだ先のことと思ってそのままにしていたら、すぐにその「いずれ」が訪れてしまいます。
「事業承継についての考え方」
「事業承継を計画的に進めている」
※出典:「事業承継に関する企業の意識調査(2013/7/11)(株)帝国データバンク
(株)帝国データバンクの調査データによると、事業承継を経営課題として認識している会社は約9割であるのに対し、計画的に進めている会社は3割程度というデータもあり、「いずれ」と考えて先に進めていない会社が多いのが現状ということがわかります。
また、「いずれ」やろうと考えてしまうのは、事業承継に関して相続と同じと考えてしまう一般的な誤解があるからなのです。
事業承継を相続と同じように考えてしまうと、いずれ自身が引退するときに事業を渡すものと考えてしまいます。
渡す方はそれでも良いのかもしれませんが、事業を渡されて引き継ぐ後継者は、そこから何十年も事業を続けて、さらに次の世代に引き継がなければなりません。それを、いずれその時が来るのを待つ状態でいると、突然その時が来たら、準備が足りないまま事業承継をしてしまうという可能性があります。
残された後継者は
突然経営者が倒れてしまい、後継者が準備が足りない状態で経営者にならなければならなくなると、知らないことやわからないことが多く、色々な問題が顕在化してきてしまいます。
最悪の場合、以下のようなことが起こってしまう可能性があります。
知らないから、わからないから、では済まされない状態になってしまう可能性があるのです。
そして後継者は、継いだことを後悔するようになってしまうのです。
- 従業員が後継者の言うことを聞かずに好き勝手やってしまい、組織が崩壊する
- 借金が返せなくなり、連帯保証をした後継者個人の資産も売却することになってしまう
- コンプライアンスの問題が顕在化し、取引先や社会から制裁を受ける
- 事業が立ち行かなくなり、会社を倒産させることになる
いつ事業承継をするか決めて、準備を始める
事業承継は、いずれ来るのを待つものではなく、いつ事業承継をするのかを決めて、そこへ向けて課題を一つひとつクリアするように行動していくことが大切なのです。
また、経営者はその事業承継を成功させるための準備を、早くから考えておくべきです。
できれば今このコラムを見ていただいているのであれば、今から意識をしていただくと良いと思います。
自身の代で事業を終わらせるのでないのであれば、今から事業承継を考えていくことで、よりスムーズに事業承継を迎えることができるのです。
そして、数年かけて事業承継を成功させるための計画を作成し、計画的に行動していくことで思い通りの事業承継を実現することができるのです。
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
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