農業の現場は、「儲かり」のネタが埋まっている宝の山である。農業では「あたりまえ」になっている現状のやり方を、少し違った見方・考え方でアプローチしてみると、解決すべき問題点が浮き彫りになってくる。
現状の「あたりまえ」(例:作業工程・方法、品質基準)は、本当に正しいのか?という問いに、明確に答えられるだろうか?正しいかどうかを評価するためには以下の視点で、「あたりまえ」を確認することを推奨する。
①「目的は何か?」「誰が喜ぶのか?」を確認する
「その作業の目的は?基準の目的は?」を問いかけてみる。現場では、過去の慣例を踏襲し、現状に適合しないことを一生懸命していることも散見される。例えば、「農作物包装工程での品質基準は誰のためか?後工程?販売事業者?エンドユーザー(消費者、食品メーカー)?」の視点で考えて、「本当に必要なのだろうか?」と問いかけ見直してみることで、問題点が見えてくることもある。
②「方法・基準は適正か?」「ベストか?」を確認する
目的が適正と確認できたら、「では、現状の作業方法・基準は、ベストなのだろうか?」を検証してみる。「機械化できないか?」という投資を伴う改善だけでなく、作業・動作レベルの改善も有効である。例えば、工程の流れを見直すだけで、ムダな歩行や運搬、取り置きが削減でき、作業を効率化することが可能になる。小さな改善の積み上げが大きな効果創出につながることを認識し、一度、すべての作業や基準を「本当にベストか?」と見直してみることが有効である。
③「方法・基準は正しく運用されているか?」マネジメントを確認する
正しい方法・基準は、適正に運用されてこそ効果を発揮するが、実際の現場では、様々な阻害要因で正しく運用されていないことが多い。結果や事実を診断し、診断結果をもとに「問題解決する仕組み(管理指標、管理サイクル)があるか?機能しているか?」を確認すると、日々発生している問題点が見えてくる。
④「管理者、作業者は役割を果たしているか?」を確認する
適正な方法・基準、マネジメントの仕組みを設計しても、実際に運用するのは現場である。現場の管理者、作業者がきちんと役割を果たすことが、「儲かり」のポイントとなるが、ここが最大の弱点となっているケースが多い。人材育成は一番難しい課題であるが、近道がないからこそ、この課題解決が競争優位の源泉となる。言ってもできないとあきらめるのではなく、経営者が、管理者、作業者とともに改善に取り組み、小さな取組みでも成果を確認して評価し、自信をつけさせ、少しづつレベルアップを図ることで、改善意識、成長意欲を醸成し、自律的な人材を育成することが重要となる。
⑤「事業構造は適正か?」を確認する
現場が適正に機能しても、事業構造自体が儲からないシステムになっているケースがある。頑張っても利益がでない構造では、次第に現場のやる気を喪失していくリスクがある。経営者は、フードチェーン全体における自社の位置づけ、価値を再確認し、必要に応じて、取引先、取引形態、商品形態を見直す必要がある。
以上のようなアプローチで、現状の「あたりまえ」の問題点を明確化し、チャンスと捉え、「あたりまえ」を変える意識をもって、「儲かるカイゼン」を実践してみてはいかがでしょうか。
本コラムでは、『「あたりまえ」を変えて儲かるカイゼン』を実践して成果を創出している事例など、具体的な内容を12回シリーズで連載していきます。
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
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