前回コラムで、農業の現場は「儲かり」のネタが埋まっている宝の山である、と述べたが、宝の山を探さないと宝は掘りだせない。宝の山を発見するために、まず取り組むべきは、作業の【価値を変える】ことである。
『価値を決めるのはお客様』という視点で現場を見てみると、商品に付加価値を加えない・生み出さない作業やお客様が要求していない過剰な包装仕様などを削減しコストダウンできないか?と改善ポイントを検討することができる。
例えば、洗浄・調整・包装作業を、価値視点で工程を分析してみると、商品に直接価値を付加しない「運搬」「野菜の取り置き」を問題として把握できる。
収穫後の野菜の加工プロセス(モノの流れ)を分析すると、圃場からトラックで運搬された野菜は⇒洗浄作業場前にトラックから降ろされ⇒一度仮置きし保管される。洗浄工程では、洗浄作業場に運搬されてから⇒洗浄されて⇒仮置き後⇒もみ洗い・水切りされて⇒冷蔵庫保管前に再度仮置きされる。⇒その後冷蔵庫に運搬し貯蔵され⇒調整工程へ運搬され⇒束バラシして仮置きし⇒選別して青箱に仮置きする。青箱は、袋詰め工程へ運搬され⇒再度選別しながら袋詰めし⇒袋詰めされた野菜は再度仮置きされ⇒袋とじ工程へ運搬される。袋とじ工程では、仮置きされた袋詰め野菜を溶着機で袋とじして⇒出荷用発砲スチロール箱に入れられ⇒冷蔵庫に運搬されて貯蔵し⇒出荷される。
モノの流れをチャート(流れ図)にすると、仮置きに関連して、「運搬」が、仮置きの前後で「野菜の取り置き」が、発生していることが明確になり、仮置きすると、付加価値を生み出さない作業がいかに多いか、という問題点を見える化できる。
問題点が見えても価値観が変わらないと、カイゼンは進まないケースもある。現場では、各工程間の運搬や野菜の取り置きは、作業するためには絶対に必要、仕方がない作業、と決めつけて考えているケースが多い。しかしながら、その作業はお客様が要求していることか? お客様は「運搬」や「取り置き」にお金を支払いたいか?とお客様の価値視点で考えると、重点的な改善の対象であることに気づく。
事例では、一人の作業者が一連の工程を統合し一貫して作業する方法に改善して、価値を生み出さない「運搬」「取り置き」を最小化した。さらに作業者への野菜供給と完成商品運搬は、コロコン(ローラーの上に搬送物を載せて、重力で自動的に移動させるローラーコンベア)を設置し、人の移動を削減して生産性向上率170%の成果を実現できた。
カイゼンのポイントは、過去からの慣習でしみついた既存の考え方やあたりまえの作業方法を、お客様の視点で、0ベースで見直すことである。問題の見方・考え方を変えると、コストダウンや品質向上につながる、多くの改善点が見えてくる。一度、価値視点を変えて、現場を見ることを理解した作業者や管理者は、自発的にどんどん問題点を見つけ、課題解決に取り組むようになる。【価値を変える】ことをトリガーに、現場が自主改善集団に生まれ変わり出すのである。
お客様視点で【価値を変える】ことからスタートし、「儲かるカイゼン」の宝を探し出してみてはいかがだろうか?
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