1.塩類の集積と除塩方法
施設栽培では長期にわたって多肥栽培されることが多いうえに、雨により肥料成分が溶脱されることもないので、土壌中に溶けていた肥料由来の塩類(アンモニア、カルシウム、カリウムなど)は表層が乾くことによる土壌水分の上昇によりしだいに表層に集積していきます。土壌溶液中の塩類濃度が限界を超えると、作物は葉色が濃くなったり、日中にしおれたり、ひどいときには枯死しますが、これを塩類濃度障害といいます。
塩類の集積を回避するには、土壌のEC(電気伝導度)や土壌に残存している陽イオン類を測定しながら合理的な施肥を行う(土壌診断)、または連作をやめて適切な作付体系に変える、さらにひどい場合には田畑輪換を実施するなど手段があります。そのほかに、塩類濃度を高めにくい肥料を選択することや、深耕して影響を緩和することも重要です。高糖度トマトなど品質向上を目的とした水分ストレス栽培は過度になると障害の発生を助長します。
塩類濃度を高めない肥料とは、必要な肥料成分以外の成分をできるだけ含まない肥料のことです。例えば、硫安(硫酸アンモニウム)は、硫酸イオン+アンモニアイオンであり、アンモニアイオンには窒素が含まれており肥料として有効ですが、硫酸イオンは使われずに土中に残ります。対して、硝安(硝酸アンモニウム)は、硝酸イオン+アンモニアイオンであり、いずれも窒素を含むため土中に残ることがありません。
このように、ストレスの少ない肥料は一般的な肥料ではないですが、意識してこのような肥料を選択することで連作の影響を緩和することができます(ちなみに、水耕肥料では必ず残存成分のない肥料を使います)。
また施肥量を計算するときは、目標収量を上げるのに必要な養分量から、土壌からの供給量(地力由来)や土壌に残った施肥余剰量を差し引いた量を目安とし、肥料は肥効調節型肥料や液肥など作物の生育に応じた肥料成分が供給できる肥料を使い施肥効率を高めることを意識することが重要です。しかし、いったん障害が発生してしまった場合には、表層にたまっている塩類を除去するか薄める対策が必要となります。
正しく管理するためには、塩類濃度を測定する必要があります。塩類はEC値を測定して評価しますが、これはECメーターで簡単に測定できます。その値を参考に基肥の施肥量を増減させますが、そのためには土壌診断により圃場の状態を把握しておく必要があります。ただEC値は総合的な塩類の評価ですので、例えばどの成分が特に不足しているかは判別できません。各成分ごとの詳細分析結果とEC値による簡易分析をうまく組み合わせることが重要です。
また、作物によって塩類濃度に対する耐性は異なるため、とくに塩類濃度の影響を受けやすい作物では注意が必要です。障害が心配な場合は、コマツナなど塩類濃度の抵抗性が弱い作物を指標作物として栽培してみることも有効です。
集積した塩類を除去する除塩法として、まず耕種的な方法を2つ紹介します。
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