個人衛生は一般衛生管理に入るが、これは教育訓練を組み合わす必要がある。
最も基本的なのは手洗いだが、これをいつも家でやっているからと適当にしてしまう傾向がある。食品工場での手洗いは、僅かな食中毒菌やノロウイルスでも製品に付着して広がってしまうので、徹底することが必要だ。この31項目の教育内容は、食品産業センターから無料で入手できる紙芝居形式の教材だ。こういったものを使って、従事者の教育訓練を定期的に行うことが安全につながる。
https://haccp.shokusan.or.jp/basis/report/protect/
教育訓練は一度にまとめてやっても身につかない。
良い方法は、一度に(例えば毎週月曜日の昼休みのあと5分間)一つだけ教え、それを強化週間にして定着させることだ。例えば手洗いの方法を、手順だけでなく、手洗い場所に時計を置き「一分間洗うこと」という具体的なルールまで決めて、一週間継続すると、定着する。そして、翌週は別の内容を教え、また一週間強化する。このように毎週一つだけ行うのが効果的だ。2つ以上教えても出来ない。
小売やレストランの場合、工場での製造のように連続して同じ製品を造るのではないので、工場と同じHACCPは出来ない、非現実的だ。
加熱するアイテム、例えばフライ製品などは、最初の調理のときに中心温度を測定するだけでかなり安全確保できるし、そのあと1〜2回測定すればなお良い。もう一つの方法は、アイテムごとに加熱温度と時間の検証をしてみる。トンカツだったら、調理枚数を決めてフライヤーに入れ、それぞれの枚数を何秒揚げたら、中心温度が規定通りになるかをやってみる。そしてそれを表にする。こうすれば、枚数と時間が明確になり、油の温度を一定にすれば安定して出来る。これをやっておけば、あとは表の通りの調理をするだけだ。年に一度程度再検証する。
店での衛生管理は、まずは従事者が着替えてから厨房に入る入口辺りに、粘着ローラーと手洗いを置く。
調理の下処理工程では、サラダなどの非加熱メニューになる場所を決めて、そこを重要清浄箇所にする。その後の組み立て調理場所もサラダの場所を決める。加熱調理メニューはすべて中心温度で管理する。ここが簡易CCPだ。料理の上に乗せるトッピング(ラーメンの具など)具材が温度上昇などで細菌増殖の危険があるため、出しっぱなしにしないで、冷蔵庫から出すようにする。ホール(客席)から戻ってきた食器が料理場所と交差汚染しないように、洗浄ラインを明確にしておく。そして、顧客が店に入るときに汚染を持ち込まないように、殺菌液を置くようにする。
一般衛生管理とHACCPの構築は、費用は殆どかからない。
専門のスタッフが居なくても、誰でも出来る。製造動線やゾーニングの整備、安定して失敗が無い調理の実現などで、ロスややり直しが少なくなり、結果的に安全とコストダウンが実現する。科学的な管理と監視によって、調理が安定するので、いつもの美味しさが出来る。そして、一般衛生管理とHACCPは既に取引基準になってきており、これからのビジネスにとって必須だ。義務化を待つまでもなく、直ちに構築できるものだ。
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