5.土壌断面調査のポイント
さらに詳しく見るために、土壌を掘って断面を調査します。圃場の断面の様子は、その農家の営農・肥培管理を反映しやすいといわれています。
土壌断面調査は場所の選定から始めます。通常は管理ムラが小さい圃場の中央部とし、スコップで縦・横50〜100cm、深さ40〜50cm程度まで掘り、垂直の土壌面(断面)を造ります。圃場造成による切り土・盛り土、また暗渠の位置、深耕の有無などがあらかじめわかる場合は、そうした条件をおさえた上で調査場所を決めます。

図1 土壌断面のつくり方
農業現場で実施できる調査を前提としますので、用具は必要最小限とします。
・断面の調査:剣先スコップ、移植ゴテ、スケール(物差し)、硬度計(山中式)
・土壌の採取:ビニール袋、油性マジック、輪ゴム
・観察記録用品:筆記用具、調査ノート、カメラ
土壌断面の調査項目(5項目)
- まず作物の根張りを調べます
作物の生育の良し悪しを知るために、どのくらいの深さまで、どのくらいの量の根が入っているかを観察します。根張りの制限要因としては、①土壌が硬い、②土壌が過湿である、ことがあげられます。
- 深さ別の土壌の硬さを確かめます
山中式硬度計で深さ10、20、30cm・・・というように、10cmごとに測定していきます。明らかに硬いと判断できる部位は、深さに関係なく測定します。測定部位を替えて3回程度実施して確認します。
もし道具がない場合は掘った土壌の面(土壌断面)に指を押し当てて土壌の硬さをみます。指の入り具合で、だいたいの硬さがわかります(表1、写真1)。割り箸などを使って、5〜10cmごとに断面に刺していけば、深さ別の硬さが一目瞭然です。
表1 指の入り方と硬度計の関係(現代農業,2006)


写真1 簡単な硬さの判定方法(現代農業,2006,2007)
土壌が硬ければ根は伸びていけません。土壌が硬い原因として、①粘土分が多い圃場の場合は機械の走行による圧密で深さ20〜30cm付近の土壌が締まっている、②砂の多い圃場では作土の下に鉄の集積層(鉄盤層)がある、③礫混じりの土壌が出てくる、等が考えられます。
一般に有効根群域(作物が伸長する深さ)は最低でも40cmは必要と言われています。 40cmより浅い部位が硬くなっていて、根が伸長していない場合は深耕用機械を用いて硬い層を破砕します。深耕ロータリ耕やトレンチャー耕では養分の少ない下層部が表層部に出てきますので、有機物や土づくり肥料の施用が必要になる場合があります。
土層をなるべく壊さないようにして深耕するにはパンブレーカー、サブソイラなどが適しています。最近はプラソイラも使われています。礫混じりの層が見られる場合は除礫が理想ですが、多大な労力・経費がかかるので、必要根群域を確保できる高畦栽培を勧めます。
作物と根張りと土壌の硬さの関係は図2の例のとおりです。

図2 根張りと土壌の硬さ(ナシの例)(安西,1983)
- 土壌の乾湿(水分状態)をみます
土壌の一定量を手に取り、表2にしたがい、土壌の乾湿の程度(湿り具合)を調べて、保水性・透水性(通気性)の良し悪しを判定します。また土の色からも判定が可能です(褐色系:乾いている、灰色系:湿っている)。
表2 土壌の乾湿の判定法

土壌断面を観察すると、褐色の鉄の斑紋が観察されることがあります。これは水(灌漑水や地下水)の影響で還元的環境(酸素不足)になった土壌がいったん乾いて酸素が入ったときに、根の跡や土壌の亀裂面にある鉄が酸化してできたものです。
さらに、水田では湛水状態で栽培するため、グライ層(土層が飽水条件下では土壌が還元状態になり酸素が不足して鉄が還元され、色は褐色から灰色〜青灰色に変わる)ができやすいですが、その出現する深さを確認することで良し悪しを判断できます。根に影響があるほど浅い場合は耕うんをしっかりと行い、稲わらの腐熟促進対策(石灰窒素などの施用)が必要です。逆に深さ50cm以内にみられない場合は乾田と判定できます。
- 手でこねて土性を判定します
図3に示した要領で、砂土、砂壌土、壌土、埴壌土、埴土の5種類を判定します。土性は表3の土壌の特性に関係します。

図3 現場での土性の簡易判定法
表3 土性別にみた土壌の特性

- 土色から腐植含量を想定します(簡易法)
腐植は土壌に黒い色を与えるので、土色からある程度判定できます。
その目安は以下のとおりです。
黒色:腐植に富む(5%以上)、褐色:腐植を含む(2〜5%)、褐白色:腐植なし(2%以下)
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チャンネル名:JA全農肥料農薬ミニ講座
※今回の内容は、「だれにでもできる 土の物理性診断と改良」(農文協,2016;JA 全農肥料農薬部編/安西徹郎著)をもとにしています。 |
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