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農業生産における仕掛品の評価額の考え方について教えてください。
例えばアスパラやニラのように、同じ株から1度収穫しても、再び成長して収穫可能になる農産物の場合、「株の部分」「株から生えかけている部分」について、それぞれどのように評価すればよいのでしょうか?
株から成長して繰り返し収穫できる農産物には、アスパラガスのように減価償却資産(生物)になるものとニラのように減価償却資産にならないものとがあり、それぞれ株の部分の評価方法が異なります。
生物として減価償却資産になるかどうかは、法人税法施行令第13条(所得税法施行令第6条)に定める減価償却資産の範囲の第9号の生物として列挙されているかどうかにより判断します。
減価償却資産では、取得価額から減価償却累計額を控除した未償却残高が株の部分の評価額になります。
取得価額は、種苗費に成熟のために要した肥料費、労務費及び経費の額を合計した育成費用の額となります。なお、育成費用について、個人農業者では、税務上、種苗費等の取得費及び明らかに区分できる苗木の定植に要した労務費のほか、肥料費、薬剤費に限定して差し支えないとされていますが、農業法人では、明らかに区分できる苗木の定植に要した労務費だけでなく、成熟のために要したすべての材料費、労務費及び経費を含めます。
育成費用の具体的な会計処理としては、期中において種苗費や肥料費、賃金手当などの費用勘定で経理しておき、期末日に決算整理として育成にかかる原価(育成費用)を按分して「育成費振替高」として製造原価(生産原価)から除外して次のように育成仮勘定に振り替えます。
(育成仮勘定) ××× (育成費振替高)×××
アスパラガスの償却は、法定耐用年数11年で定額法によって行い、その事業年度において収穫したアスパラガスの収益が償却額を含めた費用を上回るようになった事業年度の期首において次のように育成仮勘定から生物に振り替えて減価償却を開始します。
(生 物) ××× (育成仮勘定) ×××
一方、ニラのように減価償却資産とならないものは、購入したニラの株の取得費(種苗費)を、取得した事業年度の損金とするか、収益発生期間に配分して損金に算入することになります。
取得費を収益発生期間に配分する場合、種苗費相当額を繰延資産(繰延生物)として計上したうえで収益発生期間を償却期間として償却する方法のほか、種苗費相当額を期末の仕掛品に計上して収益発生期間で残高を逓減していく方法が考えられます。
アスパラガスやニラなどの株から生えかけている部分(未収穫農産物)は、期末において評価が必要な場合、農産物として収穫する部分について期末までに要した肥料費等の材料費、労務費及び経費の額を合計した製造原価(生産原価)によって評価します。
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