公開日
農事組合法人Aは、以下のような組合です。
1.直近決算(25/○期)
・ 税引き後当期剰余金:20.5百万円
・ 資本金:9.6百万円
・ 利益準備金:0円
2 直近決算利益処分案(26/○期)
・ 利益準備金:0.04百万円
・農業経営基盤強化準備金:2百万円
・ 従事分量配当金18.1百万円
・ 次期繰越剰余金0.36百万円
当組合は,定款において,利益準備金について下記のように定めています。
【定款】
第40条(利益準備金)
この組合は,出資総額と同額に達するまで,毎事業年度の剰余金の10分の1に相当する金額以上の金額を利益準備金として積み立てるものとする。
【ご相談事項】
第40条における「毎事業年度の剰余金」とは、利益処分案における次期繰越利益であるとし、利益準備金0.04百万円を積み立てました。
<算出根拠>
税後利益20.5-(基盤強化準備金2+従事分量配当金18.1)=0.4百万円
0.4百万円×1/10=0.04百万円
上記手続きについては、地元行政と相談をし、行った処理ということですが、計上は正しい処理でしょうか。
仮に、正しい処理ではなかった場合、定款第40条を変更することで、上記手続きを正しい処理として、今後も行うことは可能でしょうか。
例:定款第40条における「毎事業年度の剰余金」を「次期繰越剰余金」に変更する。
農事組合法人は、定款で定める額に達するまで毎事業年度の剰余金の10分の1以上を利益準備金として積み立てなければならないと農業協同組合法(以下「農協法」という。)で定めています。「毎事業年度の剰余金」とは、当期剰余金(会社における当期利益)を指し、繰越損失金のある場合はこれを填補した後の残額であると農事組合法人定款例において解釈されています。
ご質問のケースの場合、税引後の当期剰余金が20.5百万円であれば、その10分の1の2.05百万円が利益準備金の要積立額となります。したがって、利益準備金として0.04百万円を積み立てても、要積立額の2.05百万円に達しないため、農協法に違反し、正しい処理とは言えません。また、定款における配当の規定(農事組合法人定款例第40条)の「毎事業年度の剰余金」を「次期繰越剰余金」に変更しても、農協法の規定に合致しませんので、その部分は無効となります。
農協法で定める要積立額まで利益準備金を積み立てたうえで従事分量配当を行ったとした場合に繰越利益剰余金がマイナスになるときは、剰余金の額を超えて配当をしたものとして農協法上は違法配当になり、税務上も従事分量配当の損金算入が認められないおそれがあります。これは、剰余金処分案において剰余金処分が次の算式による順序で行われることから、従事分量配当などの配当金は任意積立金である農業経営基盤強化準備金を積み立てた後の剰余金からが支出されると解されるためです。
剰余金(注)-①利益準備金-②任意積立金-③配当金=次期繰越剰余金
(注)当期未処分剰余金(当期剰余金+前期繰越剰余金)+任意積立金取崩額
この場合、前期繰越剰余金が不明ですが、かりに前期繰越剰余金をゼロとした場合、次期繰越剰余金は、次のとおり計算されます。
剰余金20.5-利益準備金2.05-農業経営基盤強化準備金2-従事分量配当金18.1
=次期繰越剰余金△1.65(百万円)
したがって、前期繰越剰余金がゼロであれば、従事分量配当の金額のうち1.65百万円の損金算入が認められなくなるおそれがあります。
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されております。