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農事組合法人において、役員借入金を出資金へ振り替えることは可能でしょうか?その場合、税務上のリスクはありますか。
農事組合法人の定款で現物出資を認めている場合には、役員借入金を金銭債権である貸付金として現物出資することができます。また、農事組合法人の定款には、一組合員の有することのできる出資口数の最高限度を定めることとなっています。このため、定款に現物出資の規定がない場合や増資後の役員の出資口数が定款に定める最高限度を超える場合には、定款変更をしたうえで増資をする必要があります。金銭出資の場合、理事は払込みのあった組合員に対して「出資金領収書」を発行します。これに対して、現物出資の場合、現物出資する者が現物出資と同時に「財産引継書」を理事に提出します。金銭債権である貸付金の現物出資を引き受けることで役員借入金を資本金へ振り替えることができます。定款に現物出資の規定がない場合、農事組合法人に資金の余裕があるときにいったん役員借入金を返済したうえで金銭によって増資をするか、役員がいったん資金を準備して金銭によって増資をしたうえで農事組合法人がその資金で役員借入金を返済するという方法もあります。
また、一組合員の有することのできる出資口数について、農林水産省がかつて示していた定款例では50以下とすることと指導しており、一般に「出資総口数の100分の50を超えることができない」と定款に記載されています。定款を変更してこの割合を変えることはできるものの、極端に高い割合とすることは望ましくありません。このため、代表者など一組合員の出資割合が高くなる場合には、農事組合法人から株式会社へ組織変更する必要があります。
加えて、税務上の問題として、法人の代表者のみが増資をした場合(第三者割当増資)において、増資を行った結果、他の組合員の一口当たりの出資の税務上の評価が増加するときは、その増加分を増資した組合員(代表者)から増資前の他の組合員に贈与したとみられるおそれがあります。ただし、他の組合員の一人当たりの出資の評価の増加が贈与税の基礎控除(年110万円)の範囲内であれば、贈与税は課税されません。なお、農事組合法人の場合、出資1口の金額を定款で定めることとなっており、出資1口当たりの持分の税務上の評価が出資1口の金額を下回る場合、株式会社の場合と異なり、時価で払い込むこと(時価発行)は認められません。
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