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事業立ち上げ時に注意すべき法律
経営者に必要な法律知識は多岐に亘ります。まず、事業を始めるにあたって、土地・建物や機械・備品などの所有関係や売買・貸借といった契約関係など私人と私人との間の権利義務を調整する基本法である民法が適用されます。さらに、農地の取得には、民法だけでなく、農地法をはじめとする農地の利用関係を調整する法律が適用されます。
事業を法人組織で行うのであれば、会社法などその法人形態の根拠法が適用され、それぞれの根拠法に従った運営をしなければなりません。たとえ自分のみが出資し自分のみが役員であったとしても、法人は自分とは異なる人格(法人格)であり、独立した社会的存在です。そのため、債権者をはじめとする利害関係者の利益を保護する必要があり、法律に則った運営が要請されます。
個人事業か法人事業かを問わず、従業員を雇うことになれば、労働基準法や最低賃金法などの労働分野の法律に則った労働条件を定めなければなりませんし、健康保険法や労働災害補償保険法などの社会保障分野の法律に従って適切な保険加入等が求められます。
労働者(従業員)は使用者(事業主・会社等の法人)から給料の支払いを受けて生活をしていくため、使用者に対して労働者が弱い立場に立たされるのが一般的な構図です。そこで、労働者を保護するため、労働基準法などには、違反すると刑事罰が科され得る(刑事裁判にかけられるおそれがある)条項も含めた厳しい規制があります。
取引にあたって注意すべき法律
事業が始まり、農産物やその加工品を生産し販売するにあたっては、消費者一般や顧客との関係において、消費者契約法、特定商取引法、景品表示法、製造物責任法などが適用されます。消費者は、事業者に比べて商品や取引について情報・知識や経験が乏しく弱い立場に置かれることが多いため、これらの消費者分野の法律では、消費者が正確な情報や知識を得られるようにすることや、自分の自由な意思で契約をできるようにすること、製品の購入によって損害が生じた場合の保護などの仕組みが設けられています。
最近、小規模事業者でも多く利用されているインターネット通販は特定商取引法の適用を受けますし、加工品のパッケージやラベルなどは景品表示法に則って記載・表示しなければなりません。外国との取引がある場合には、外為法をはじめとする様々な法律が適用されます。
病害虫の発生や伝染病を防ぐためなど防疫的観点からの規制、日本で登録された種苗の無断使用を防ぐためなど知的財産保護の観点からの規制などがあり、輸出入に許可が必要となる場合があります。インターネットの普及等により海外との取引も以前に比べ容易になりましたが、厳しい規制がありますので事前によく調査することが必要です。
また、事業によって利益が出た場合には、所得税や法人税(利益が出ない場合にもかかるものがあります)などの税金を納める義務がありますし、消費税の課税事業者であれば消費税の納税手続きも必要になります。
近時特に注意が必要な法律
昨今、特に気を付けなければならないのは個人情報です。事業者が従業員や顧客の個人情報を取得し、データベース化して事業に使用している場合には個人情報保護法の適用を受けます。情報通信技術が発達した現代社会では個人のプライバシーなどへの配慮が、以前に増して強く要請されるため、個人情報の取扱いは非常に慎重になされなければなりません。
事業を行うにあたっては、様々な法律の規制に抵触しないか慎重な調査と検討が必要です。コンプライアンス(法令遵守)は他人事ではなく、当然に自社にも必要である現実と逃げずに向き合い、違反やトラブルの予防策を講じておくことが大切です。
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