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農業者が加工事業を行う場合の会計と税務の留意点
農業の6次産業化として、農産物などの生産物の元々持っている価値を農林漁業者が異業種や地域とのつながりでさらに付加価値の高いモノへと変えていくにあたり、主に自家栽培した農産物を用いた加工品の生産等が行われています。加工事業を行う農業者は、農産物の生産原価と加工品の製造原価を把握していくことが肝要です。
具体的には、生産した農産物を加工事業に使用した場合、その加工に仕向けた時価相当額を「事業消費金額」として収入金額欄に計上するとともに、同額を「仕入金額」として計上します。これは家事消費に該当せず、いずれも消費税の不課税取引に該当します。
また、例えば、加工品としてジャム等の製造をする場合、一定量の在庫が生じることから、期末日において棚卸しを行い、貸借対照表に計上する必要があります。また、下記のとおり個人事業税や消費税(簡易課税制度)に留意する必要があります。
個人農業者が加工事業を行う場合
個人農業者が主として自家栽培した原材料を使用して製造・加工を行っている場合の決算書は、農産物の生産に係るものと加工事業に係るものとが合算されたものになります。すなわち、農業用の青色申告決算書に、同様に合算して記載します。なお、この場合における個人事業税は、非課税とされる"農業"に該当するため課されません。
また、消費税の簡易課税制度を選択している場合、生産した農産物の販売は第2種事業に該当し、みなし仕入率は80%となります(消費税の軽減税率導入前は第3種事業、みなし仕入率70%)。主として自家栽培した原材料を使用して製造・加工を行った加工品の販売も農産物と同様に第2種事業(みなし仕入率80%)に該当します。
主として他から購入した原材料を使用して加工事業を行う場合等
主として他から購入した原材料を使用して製造・加工を行っている場合や、自家栽培の原材料による製造・加工を行っている場合であっても同一構内(注)に工場・作業所とみられるものがありその製造活動に専従の常用従業者がいるときは、日本標準産業分類上、農業の活動とはされず、製造業に該当します。
このため、加工事業については、農業用と区別し、一般用の青色申告決算書に記載します。この場合、営業等にかかる事業所得金額(青色申告特別控除前の金額)から事業主控除290万円を控除した金額について、個人事業税(税率5%)が課されます。
(注)同一構内に工場・作業所とみられるものがなく、別の場所等での製造活動を行っている場合は、製造業に該当します。
また、上記の場合における消費税の簡易課税制度の判定は、日本標準産業分類(総務省)の大分類を基礎とした判定により第3種事業に該当し、みなし仕入率は70%となります。
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