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免税される輸出取引
農業者が国内で農産物の販売やサービスの提供を行った場合、国内取引に該当し、消費税が課されます。これに対し、輸出取引や国際輸送などの輸出に類似する取引として行われる農産物の輸出については消費税が免除されます。これは消費税そのものが国内での消費に課される税金のため、次のような輸出取引等を行った場合には消費税が免除されます。
① 国内からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け(典型的な輸出取引)
② 国内と国外との間の通信又は郵便若しくは信書便
③ 非居住者に対する鉱業権や著作権等の無体財産権の譲渡又は貸付け
④ 非居住者に対する役務の提供(国内において直接便益を享受するもの以外のもの)
輸出免税の適用を受けるための証明
農産物を輸出した場合は、その区分に応じて輸出許可書(税関長の証明書)等を保存する必要があります。実際の貨物がない無体財産権や役務の提供に関しては、帳簿や契約書等の書類を整備・保存しておきます。
輸出取引に係る消費税還付
輸出取引を行う消費税の課税事業者においては、本則課税の適用により、消費税の還付が見込まれます。消費税の本則課税の計算は、原則として"預かった消費税"から"支払った消費税"を控除してその納税額を求めますが、農産物の販売が輸出取引に該当する場合は、預かった消費税は0円(輸出免税)であるのに対し、国内での生産に伴って支払った消費税は必ず生ずることから、恒常的に消費税の支払い額が多くなります。このため、帳簿及び一定の請求書等の保存を要件として、消費税還付を受けることができます。
ただし、この消費税還付は、免税事業者や簡易課税制度による申告を行う者においては認められない点に留意する必要があります。免税事業者の場合は事前に「消費税課税事業者選択届出書」を、簡易課税制度を選択している事業者においては、事前に「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出しなければ還付を受けられないため、その提出漏れがないよう留意する必要があります。
また、消費税還付を早く受けるため、消費税の課税期間を、3か月ごと又は1か月ごとに短縮する特例が認められています。この課税期間の短縮特例を選択するためには、事前に「消費税課税期間特例選択・変更届出書」を提出することが必要です。
商社等を通じて農産物の輸出を行う場合
農業者が輸出事業へ進出するといっても、その多くは国内に所在する商社等の輸出業者が間に入るケースが多く、その場合は、国内の輸出業者への販売となります。このため国内取引に該当し、通常の消費税(飲食料品であれば軽減税率8%)が課されます。
輸出事業用資産の割増償却制度の創設
青色申告書を提出する法人及び個人事業者で一定の認定を受けた輸出事業者であるものが、令和4年10月1日から令和6年3月31日までの間に、輸出事業用資産の取得等をして、輸出事業の用に供した場合には、その輸出事業用資産をその輸出事業の用に供している期間(最長5年)に限り、下記の割増償却ができる制度が創設されました。
・機械装置・・・普通償却限度額の30%相当額
・建物等及び構築物・・・普通償却限度額の35%相当額
本制度の適用においては、供用期間につき毎年判定となりますが、認定輸出事業者の資金繰りを助ける制度です。確定申告書等に一定の明細書の添付が必要です。
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