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従業員の満足度の高い職場とは
従業員の定着率が高い農業法人は、そこで働く従業員の「会社に対する満足度が高い」という共通の傾向があります。
それでは、「ここで働いて満足している」と従業員が答える農業法人は、従業員の定着率の低い農業法人と一体何が違うのでしょうか。
次にあげるのは、先進的な人事・労務管理や研修体制をもち、従業員の定着率が高いことで全国的に知られている農業法人で働く従業員の生の声です。
- 従業員の簡単なプロフィール
現在就農3年目で23歳の既婚者
- 農業法人について
関東近県で青ネギ、ハクサイ、キャベツ、レタス等の露地野菜を中心に作っている農業法人です。法人として売上・利益共に毎年成長しており、経営状態は良好です。従業員は正社員とパート、外国人研修生合わせて約30名です。
- 当該従業員が採用に至った経緯
県農業大学校に在籍していた頃から、いずれは独立就農するつもりでいました。その前提で色々学べるしっかりとした農業法人に就職したいと考えていたところ、農大の先生が当社を紹介、推薦状も書いて下さいました。
面接では、自身の独立就農に向け、具体的に何を学ぶ必要があるか、どのような事を考え働いていくべきか等々、私自身がどのように考えているかについて聞かれました。
当社の採用基準は主に、①将来独立を希望している、②まじめでコツコツと仕事をするタイプ)、③農大や県農大等の推薦がある、の3点です。実際に当社社員にはその条件を満たした人材が多いです。
- 労働条件、待遇等
初任給は一般的な農業法人と大差ありません。他に残業手当と業績に伴う賞与があり、勤務評価は年2回、自己、上司、会社等からの評価の他に、社長等による個別面談にて決まります。
他産業と比べると、給与水準は高くはないですが、仕事の内容がかなり正確に評価されている実感があり、金額には納得しています。
厚生年金、労働保険や民間の傷害保険にも加入しています。他産業からすると当たり前かもしれませんが、周りからは当社は農業法人の中では労務管理が充実していると思われているようで、友人達からは羨ましがられています。
他にも通勤兼作業用トラックの貸与制度や、様々な研修プログラム等もあり、働く環境としては良い方だと思っています。
- 法人が従業員の定着向上に向けて取り組んでいること
従業員の定着に向けた、当社の取組みとしては主に、「充実した研修制度」と「外部との関わりの推奨」の2点が挙げられます。イベントや研修会、集まりへの参加等、上司から配慮して頂ける環境なのは大変ありがたいです。
- 社内外の研修会について
研修会等の参加については、業務扱いで参加させてもらえるので研修会参加のモチベーションにもなっています。受講後レポートを作成するので学んだ知識を社内に共有することができます。
土地柄、東京や各地で開催される宿泊型の研修会にも比較的行きやすい環境ですので、私も外部の研修等の情報は常にチェックし、必要と思われる研修は会社に情報を上げるようにしており、同僚達も同様に情報収集しているようです。
研修先には必ず役員の方とセット行くことが当社のルールです。入社当初は少し抵抗がありましたが、研修先では役員の方も気さくに声がけして下さいますので、コミュニケーションのきっかけとなり、社内の風通しを良くする上でも効果的だと思うようになりました。
- 外部との関わりの推奨について
外部との関わりを推奨して頂けるのも独立を目指す立場としては大変ありがたいです。農機や種苗、電気メーカーの展示会にも積極的に行かせて頂けますし、食のトレンドについて勉強したいとかで、食品展示会に参加している同僚もおり、その情報は多いに参考になります。
農業高校や県農大学生の研修受け入れの際、その指導を若手が担当させてもらえるのも良い点だと思います。自分より若い人に指導するのは大変勉強になりますし、将来独立した際にも研修生の受け入れ等に、役立てるかと思います。
- 経営者の特徴
社長は従業員と一緒に食事することも多いですし、現場にも頻繁に出てきて従業員に声掛けして下さいます。おそらく意識的に心がけられていると思うのですが、社長が私のことを「見てくれている」という点は率直に嬉しいです。
社長のスタンスとしては基本的に、従業員を信頼し、「見守る」という点に尽きるかと思います。当社では従業員の自主性を尊重、経営陣も若手社員の声にも積極的に耳を傾け、仕事を任せてもらえます。
失敗のリスクはあるとは思うのですが、将来的な成長を見据え、よくある放任主義とは違う、任せてくれるその姿勢はありがたいです。社員を単なる労働力としてではなく、その人生まで考え、成長を促し、指導して頂いているのだと思います。
入社して3年が経過し、面接当初の計画では今年中に独立したいと思っていましが、今はもう少しここで働き、色々な経験を積みたいと考えています。
農業法人として、今の環境以上の場所は日本で他にそうは無いと思いますので、折角の機会、一生懸命働いて社長の期待に報いつつ、共に成長していきたいという気持ちでいっぱいです。
従業員は成長している自覚が欲しい
「事業は人なり」「モノづくりはひとづくりから」等々人材育成こそ企業発展の要であることは、経営者であれば重々承知しているとはいえ、従業員の育成を従業員が満足できるレベルにまで実行できている企業はけっして多くはないでしょう。たとえば、高い給料をもらっている従業員が仕事や職場に必ずしも満足しているとは限らないものです。
私は、従業員が企業に満足できるかどうかは、従業員が仕事を通じて自己が成長している実感がもてるかどうかが大きなポイントだと考えています。
Aさんの言葉で「(会社に)社員を単なる労働力としてではなく、その人生まで考え、成長を促し、指導して頂いている」という言葉は非常に印象的でした。
Aさんの勤める農業法人は、従業員一人一人の日々の成長が企業の成長に繋がっている典型的なケースと言えるでしょう。
(資料提供:一般社団法人アグリフューチャージャパン)
当該コンテンツは、「キリン社会保険労務士事務所」の分析・調査に基づき作成されております。